1h:道徳

 准看護学校へ 通う様になってから、すごく 仲良くなった友達。


fちゃん。


 当時 私が、付き合っていた Nさんが 住んでいる町と

同じ町の子で、その地域では 大きい病院に 勤務していました。

クラスには、他に tちゃん・mちゃんの2人が、その病院から 

一緒に 通っている子がいて、tちゃんが 車を 持っているので

いつも 3人で、通っていました。

 更に nちゃん と uちゃん の2人と、私とで、6人で 

教室内 いつも、ガヤガヤ 楽しかった。


 中でも fちゃんは、リーダー的な 存在で、面倒見も良いし

クラスの中でも ちょっと風貌からも、肝っ玉母ちゃん風で

皆から 頼られる人気者です。

 何だか fちゃんとは、気が合って どんなに本音で 話しても

全部 受け止めてくれる。笑って 話を聞いてくれる。


 だから 会うと、いつも ガシガシ 抱擁し合って、そこから

1日始まる って感じで、とても 伸び伸び、付き合えた。

 女の子の 友達で、そこまで 気持ちが、許せる 相手は

初めての 感覚で、大好きでした。


 お互いの 勤める病院が、離れているから 会えるのは 学校だけ。

fちゃんは 看護免許が無いけど、助手として 夜勤もあったし。

 私は 日曜に、通信制の 高校へ行かないと、イケなかったから

休みに会える事は 無くて、学校へ行くのが 本当に、楽しみでした。


 2年が過ぎ、卒業を迎えて。

初めて 学校で、催された 祝賀会とは、別に お祝いの会と称して

fちゃんの 仕切りの元で、飲み会が 行われた。

 すっごく 楽しくて、何度 fちゃんと キスしたか、わかんない程

ずっと ぴったり隣合って 座って。

 別れ際 

「また 会おうねぇ~」

と言って ガンガン、抱き合って 離れたけど。


 fちゃん達 同じ勤務だった、tちゃん・mちゃんは 3人共

「准看だけでイイ」と、正看の学校へ 進まず

勤めていた 病院で、引き続き 働く事になりました。

 私は 通信制の高校が、終わっていないので 高校にだけ

通う生活になりましたが。 

 ちゃんと 准看免許が取れてからというもの、お互いに 忙しくて 

会う話も 出来ずに、日々の 生活に追われました。


 そのまま 月日が流れて…

更に 2年が経ち、通信制の 学校を、無事 卒業する事が出来ました。


 正看護学校へ 入学。

正看の学校は 3年制なので、准看から 正看の学校へ上がった

知っている 面々もいます。

 その中に 6人メンバーのうちの2人、nちゃん と uちゃんが

居ます。「おめでとう」と 歓迎してくれました。

 でも 彼女達は、3年生で 先輩だし。クラスも 違うから

そんなに会えない。


 正看の クラスになってからも、それなりに 仲良くしてくれる

友達がいましたが。皆 同じく、勤務しているので 忙しくて

学校で会うだけの 付き合い。

 私は 彼氏さんがいたので、そちらと 付き合っていれれば

それで 良かったので、あんまり 重視してなかった。


 fちゃん程 気持ちが、解き放たれる感覚が 味わえる人は

居なかったんです。

 fちゃんに 会いたいなぁ~


 夏休み期間も 総合病院での、実習があります。

休みが 明けると、学年を 超えて、全生徒 揃っての

実習発表会があります。それに 向けて、レポートを 制作

しなければなりません。


 発表会の日。会場へ行くと 3年の、nちゃん と uちゃんが

深刻な顔で 近づいてきました。


「fちゃん 自殺したんだって」

『えっ? 何それ』


 fちゃんが 亡くなったと言うんです。

彼氏さんとの 結婚を、反対されての事だと言います。


 目の前 真っ暗になりました。あり得ない!!

もう発表会どころでは ありません!


 3日間に 亘っての、発表会で 初日が 1年生の、私達。

そんな事 聞いてしまっていたので、質疑応答での 私は 散々です。

 とにかく 会が終わって、どちらからともなく 3人が寄って。

「お葬式とかも 身内だけで、済んだらしいわ どうする?」

『行くだけ行ってみよ!』


 だって 信じられないんだもん。

その時は まだ、私は 車の免許を持っていなかったので

誰の 運転だったか、覚えてないけど 誰かの車に乗せてもらって

学校から 直接、そのまま

fちゃん家へ。

 本当に 葬式が終わったばかりな感じで、バタバタされていました。


 祭壇の上に fちゃんの遺影。訳が わからなくなり

皆で 倒れ込む様に、広間に 上がった。まだ しっかり誰も

お焼香の 仕方なんて 知らないし、どう振る舞ったら 良いかも

わかんない。

 多分 進められるがまま、お焼香らしき事 したかもしれない

泣き崩れてて 記憶が無い。


 ご両親も すっかり肩を落としておられて、何も 話しません。

nちゃん あたりだったかな?親族の方と 少し、何か 話してた

気がするけど よくわからない。


 私は ただただ、どうして こうなったのか、それが 知りたい。

そればっかりに 気を取られていた。

 誰かが 「そろそろ…」と 言いだして、立ち上がろうとしてた。

だけど 納得いかない、私は 思い切って


『何か 遺書みたいなモノは無いんですか?』


 場の空気が シーンと、冷たくなるのを 感じました。

それでも 私は、どうしても 知りたかったんです。

そこで お父さんが

「もしかすると 〇〇私の名前さん?」

『はぃ』

ご両親2人は 顔を見合わせて、あぁ という表情で

「fから いつも聞いてました」

『 …!っ』

〇〇私の名前さんになら・・・」

お父さんが 重い腰を上げ、何かを 取りに立たれた。


 戻ってきて 元の場所に座られて、膝の前に 紙を

広げられた。

 私は その傍まで、寄って行き そこに置かれた紙を

上から 覗き込む様にして、中を見た。


 本当は 今も、内容を 覚えていないです。

その時も 読んだはずなのに、何も 入ってこなかったの。

だけど 何かが 書かれていたのは、間違いない。

 けれど fちゃんの、イタミ と 辛さだけが 押し寄せてきて

涙ばかり 溢れて、何にも 見えない。


 尚更 項垂れる、ご両親の 心痛も、加わって 

読めもしないまま 元の場所に、戻るのが 精一杯だった。

 そこからは 放心状態で、どうやって 帰ってきたか

そういうのも 定かじゃないです。



 ただならぬ 様子で帰ってきた、娘に 母が、驚いて。

「どうしたの??」

『 … 』

「どうしたの?」

『fちゃんが … 』

「ん?」

『fちゃんが 亡くなったの』

「ン?」

わんわん 声を上げて、泣きじゃくりました。


 母は 訳がわからないまま、しばらく 私を、そのままにして

おいてくれて、落ち着いた頃に 

「そういえば 1週間位前に、学校の友達ですって子が 来たけど、あの子?」

『えっ? だって、fちゃん 家知らんよ?』

「病院行かんかったの?」

『えッっ??』

「電話かかってきたんやわ、駅の所から」

あぁ 私の家は、△△駅の すぐ傍だって、言ってはあったかも?

「あんた 当直の日やったから、居ないよって 言ったけど、家 どこって

聞くから、家教えて 来たよ」

「そしたら 「病院行ってみます」って言ってたから、てっきり行ったんやと 車やったし、それで 言わんかったんやけど…」

『えぇ~ 来て無い!』

「そうやったんや。何か 気になる感じであったんやわ」

『その時は もう家出してた頃なんかもしれん』

「あぁ そういう感じやったかも」



あーーー!何で! なんで、電話位して欲しかった!!

何で 病院に来てくれなかったの!! 何で、、、


 悔やまれて 悔やまれて!悔やまれて なりませんでした。






 あんなに 気持ちが良い、友達は 居なかったのに…

どうして・・・




  



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