第6話 殴打
「もう、いいぞ」
魔王はそう言ったくせに、先制攻撃を仕掛けて来た。
彼の武器は帽子のようなヘルメットのような被り物の先に付いた2本のツノ状のもの。それを、ぶん、と首ごと振り回してくる。
「これは樹脂製だが、突き刺さる方向と逆にささくれ立ってる。抜くとき痛いぞ」
こちらの戦意を削ごうというのか、黙って攻撃した方が効率いいはずなのに、いちいち自分のストロングポイントの解説をする。
シハナが応戦を試みる。
「えっ!」
いかにも女の子という感じの気合いの声を発して魔王に向かってダッシュする。
気が知れない。行くがままに任せて見ていたら、思いがけずシハナがファーストヒットを得た。
彼女は魔王の懐に易々と潜り込み、右手の筒を鳩尾の辺りにめり込ませた。
そのまま、たっ、と後方に飛び退く。
「ペロ!続けて行って!」
僕は正面から魔王に突進するのではなく、左右へのフットワークを使いながら、横かあるいは斜めの角度から対峙する。ややフェイントをかけ、袖をびゅっ、と振ると、硬質化して鋭利な刃物のように魔王の腹辺りの空気を切り裂いた。
「あっ!」
声を上げたのは魔王ではなく、僕の方だった。僕の攻撃で魔王の腹から鮮血がぶおっ、と噴き出したのに驚いた、というよりもショックを受けたのだ。
「う・・・痛いな」
独り言のようにつぶやきながら魔王は腕力を誇示しにかかる。
僕の袖の刃物で多少切られることを想定しながら、腕の筋肉らしきものを盛り上がらせながらパンチを打って来た。
よけられる、と頭では判断したが、体が動かなかった。
僕は魔王に捕まり、顔面を殴打され、鼻が激痛を覚えた後すぐに感覚がなくなった。もしかしたら出血のせいで頭が朦朧としているのかもしれない。
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