第5話 輪廻更新

 魔王と思われる生物がルールを説明する。


「戦闘で勝った者が1段上がれる。負けると下がる」


 僕は質問を試みる。


「戦闘、ってどうやって」

「お前の袖はもう武器に変形しているじゃないか」


 僕は、しゅっ、と袖を振ってみる。仕組みは分かった。振る瞬間だけ硬質化するらしい。


わしはスタートはサソリからだった。ようやく牛まで辿り着き、半牛半人のここまで来るのに1,500年かかっている。今、ようやく0段のフラットな地点なのだ。お前らはこの0からのスタートだが、儂はマイナスの虫けらからのスタートだった訳だ」

「これって、輪廻なのか?」

「そうだ」

「輪廻って、善行や徳を積んだり、経を称えたりで上がっていくものじゃないのか?」

「気付いたろう。お前たちが迷い込んだこの世界は10分間1セットで物事が完結する円柱状の垂直な世界だ。なぜかこの世界においては輪廻の上下は戦闘で決まる。理由は儂ごときには分からん」


 シハナはおそらく武器であろう自分の袖の金属筒を既に構えている。


「ペロ、やるしかないみたいだよ。わたしも虫けらに堕ちるのは嫌だよ」


 簡単に言うけど、僕は生まれてからこの方、人を小突いたことすらないのだが。

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