第4話 52 (fifty-second)
「シハナ、それ、何だ!?」
僕は彼女の姿を見、眼前に居る魔王の存在を瞬間忘れて、大声を上げた
「え?・・・あっ!!」
シハナは自分の服の袖を見て声を立てた。
さっきまで白いブラウス状の制服だったはずのその服の、その袖は、いつの間にか鋭利なリング状の金属筒になっている。
それだけじゃない。シハナは自分では全体を見れないだろうけれども、胸元は大きく開き、スカートも極端に短く、履いていたデッキシューズは安全靴のようなごついものにすり替わっていた。
でも、僕もYシャツだったはずの袖を見てみると触ると切れそうな薄い刃物のような材質になっているのに気付いた。
「ペロ、あの魔王、立ってるよ」
何より驚愕したのは、つい数十秒前までは四つん這いだった牛っぽい魔王のようなものが、限りなく人間に近い顔になって、2本足で立っている。立ち上がり今まさに口を開こうとしている。
「52段上まで昇って来れるか?」
魔王の言葉に何か意味はあるのだろうか。僕は質問してみる。
「52段って、何だよ」
魔王はごごっ、と笑い、後はびりびりと鼓膜に直接浴びせられるような大声で回答を示した。
「52段の頂上におわすのは、神仏だ。そこまで行けるか」
魔王の言葉を虚ろに聞いていた。
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