第11話 戦いはこれからだ!!
哪吒子が八本の手に持っている刀が全て三メートル以上に伸びると、あっという間にヤマタノキングヒドラの眼前に飛び込んでいた。
「斬妖刀旋風刃!!」
哪吒子が俺たちには見えないくらいの速さで剣を振ると、ヤマタノキングヒドラの首のうち三本がミンチと化して消え去った。
そして、ヤマタノキングヒドラの怪光線を滑るように避けて再び距離を取る。
「体力はかなりあるようだが、動きはまだまだだな!!」
哪吒子はヤマタノキングヒドラをあざ笑うかのように空中を飛び回っている。
「やるわね?!でも、相手を甘く見るんじゃないわ!!」
ヤマタノキングヒドラが吠えると、斬られた首の根元から新しい首が二本ずつ生えてきている。
「ほーっほっほっほ!!私は不死身のヤマタノキングヒドラよ!!この首はいくら斬られてもどんどん再生できるのよ!!
今度はこちらからいくわ!『シャイニングストーム』!!」
ヤマタノキングヒドラはその一一本の首のそれぞれから光線をあたり一面に放出する。
天空があまりのまぶしさにしばらく俺たちは何も見えなくなった。
光が消えた後には…八本の刀をまるで盾のようにきれいに並べて哪吒子が宙に浮いていた。
「へっ!なかなかやるじゃねえか!だが、この斬妖刀は攻防一体の武器なもんでね。今みたいな攻撃を防ぐ盾にもなるのさ♪さあ、今度はこっちからいくぜ!!
氷雪槍吹雪なだれ!!」
哪吒子が瞬時に斬妖刀を青白い八本の槍に持ち替えると、槍から凄まじい吹雪がヤマタノキングヒドラに殺到した。
「く、再び『シャイニングストーム』!!」
ヤマタノキングヒドラの口から膨大な閃光が発せられると猛吹雪と閃光がぶつかり合ってあたりを大量の水蒸気が覆った。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
ゴメラの数は大きく減り、そのゴメラ達をエミリーと明日香の操る巨竜が確実に数を減らしつつあるとき、ライピョンさんは二回り大きなゴメラ、ゴメラキングと一進一退の攻防を続けていた。
ゴメラキングの攻撃をライピョンさんは紙一重で躱し続けるのだが、ライピョンさんの攻撃を受けても、ゴメラキングが大きなダメージを受けていないのだ。
「く、このままではライピョンさんが危ない!」
エミリー、そしてアリーナ王女がその様子を見て焦っている。
ゴメラキングの攻撃は他のゴメラとはけた違いに強烈で、ライピョンさんは一撃でも喰らったらおしまいなのだ。
「く、なにかの手段でライピョンさんを強化できればいいんだが…。」
「お兄ちゃん、それだよ!!」
俺のつぶやきに明日香が反応する。
「エミリーさん、私が他のゴメラ達を引きつけておくから、ライピョンさんに合わせた格闘ゴーレムみたいなの作れない?」
「わかった!やってみる!!」
エミリーと明日香は魔法で作った竜をいったん解体すると、直後、明日香が地面から蔦を生やす魔法をかけて、しばし、ゴメラ達の動きを止める。
「今だ!エレキゴーレム作成!!」
エミリーの魔法で雷を纏ったゴーレムが大地からせり上がっていく。
大きさはゴメラ達とほぼ同じくらいだが、ライピョンさんを模した非常にスマートなフォルムをしている。
「今だ!ライピョンさん、『感覚』で巨人と合体してくれ!!」
エミリーが魔法で声を飛ばすと、ライピョンさんはゴーレムに向かって飛び込んでいく。
「合身!!勇者
ライピョンさんが体内に入ると、ゴーレムは往年の某アニメのロボットのようにポーズを取って叫んだ。
「雷神ゴーガン!!」
光でできた矢はゴメラ達に突き刺さると一撃でゴメラ達を仕留めていった。
「キシャーー!!」
それを見ていたキングゴメラは吠え声と共に口から火炎を吹きだした。
「雷神バード!!」
雷の鳥はキングゴメラが吐く炎をものともせずにそのまま突っこんでいき、体当たりでキングゴメラを真っ二つに引き裂いてしまった。
(
俺はライピョンさんの活躍に往年の名作アニメを見ているかのような錯覚を覚えた。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
「斬妖刀旋風刃!!」
哪吒子とヤマタノキングヒドラの戦いは哪吒子がヤマタノキングヒドラを切り刻み、ヒドラが頭の数を増やして再生する、そして時々光線と猛吹雪をぶつけ合うという攻防がしばし続いていた。
「おーっほっほっほ!!何度やっても無駄だとわからないようね!!」
「ん?まだ気づかねえのか?お前さん自分と同格や自分より強い相手とやりあったことがねえんだろ?」
ヤマタノキングヒドラがせせら笑うが、それに対して哪吒子は涼しい顔で返した。
「?一体何が言いたい?」
「お前さん、頭を再生するたびにエネルギーをかなり消費しているのさ。もう最初の半分くらいにエネルギーが減ったんじゃないか?
つまり、お前さんの再生能力は無限じゃあないのさ♪
そりゃあ!いくぜ!!」
哪吒子は今度は六本の剣と二本の槍を構えて突っこんでいく。
「斬妖刀火炎旋風刃!!」
日本の槍から火炎を吹きだしつつ、その隙間を縫うように剣撃を猛スピードで打ち込んでいく。
「嘘?!!再生が追い付かない!!!」
数十本に頭が増えていたヤマタノキングヒドラだが、あっという間に頭が削り取られていく。
「く、こうなっては逃げるしかないわ!!」
最後の一本の頭を残すだけになったヤマタノキングヒドラは猛スピードで撤退しようとするが、突然、ネットのようなものにぶつかり、動きが止まった。
ゴメラ部隊が壊滅し、領都防衛の必要がなくなったので、明日香がヤマタノキングヒドラが逃げないように結界を張り直したのだ。
「うわあ、明日香ねえちゃん、とんでもない結界を張るねえ…。」
そのままヤマタノキングヒドラを切り刻もうとしていた哪吒子は強大な結界を見て、冷静さを取り戻した。
その哪吒子の眼前で地上から影のようなものが猛スピードでヤマタノキングヒドラに到達すると、『巨大な口』を開け、ヒドラを挟み込んだ。
バリバリボリボリむしゃむしゃ……。
悲鳴すら上げる暇もなく、噛み砕く音、咀嚼音が聞こえる状況を見て、哪吒子がため息をつく。
「いやあ、えぐいわ。俺よりずっとえぐいんじゃないか?
…でも、これで例の竜がもっと強くなってくれたわけだから、俺の楽しみも増えたってもんだ♪」
にやりと笑うと哪吒子は滑るように空を飛んで帰還した。
「一旦お城に戻って、状況を整理しましょう。」
全員そろうと明日香がみんなに告げる。
最後の勇者も『三分間だけは無双』できることがわかり、また、魔神旗下七柱も今回の戦いからとても侮れないことがはっきりした。
しかし、このメンバーななんとかできるだろうことを確信しつつ、俺たちは城に戻っていった。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
「ほお、マーリンが敗れたか…。」
影のような部下の報告を黒ローブ姿の魔神・ニビルは玉座に座ったまま淡々と聞いている。
「勇者どもは想像以上に手ごわいようです!いかがいたしましょうか?」
「お前たちが適当に相手をしておけ。たかが人間だ。栄えある魔神七柱が簡単に全滅することなどあり得ると思うか?」
「かしこまりました。我らの力を存分に見せつけてやりましょう。」
黒ローブはにやりと笑うとその姿を消した。
「ニビル様。七柱はそれぞれ非常に対抗心が強いと存じます。それを共同戦線も張らせずに適当に放置されたのでは、それぞれ個別にぶつかって各個撃破されてしまうのでは?」
秘書のような雰囲気の魔族の女性が恐る恐るといった感じで、ニビルに告げる。
「お前の想像通りだろうな。奴らは自意識が強すぎるから結果的に全員各個撃破されてしまうだろう。」
「えっ?!!!」
「そして、勇者どもを大いに太らせて強くしてくれるだろう。
『古代システム』の力を最大限引き出すには強い相手が来てくれた方が望ましいのだよ。やつらはそのための生贄になってもらう。」
ニビルは黒ローブの下でにやりと笑った。
「……てなことを魔神は考えてにやにやしていると思うのよ。」
明日香は懐のレインボードラゴンに告げる。
「あのう…どうしてそういうことになるんでしょうか?」
こちらも恐る恐るといった感じでドラゴンは口を開く。
「あの都市の地下にある『古代防御システム』は敵の強さに合わせて進化するという超優れものみたいだわね。もちろん限度というものがあるけれど、基本は敵が強ければ強いほど防御システムは強くなり、また、それを『身に付けた存在』はさらに強くなるということ。
だから、魔神は存分にパワーアップした私たちを自分の前にわざわざ招待してくれるというわけ。
そしてら、招待してもらった後は『システムのスイッチを強制的にオフにする』とかできれば、魔神はどうなるのかしら♪」
ニコニコ笑ってとんでもないことを言っている明日香にレインボードラゴンは戦慄した。
(この人ものすごく強いだけでなく、めっちゃ狡猾なんですが?!)
「さて、魔神を確実に仕留めて、お兄ちゃんをゲットするためにもっと情報収集しなくっちゃ♪」
お城に用意された自室のベッドの上で『達則そっくりのぬいぐるみ』を抱きしめながら、明日香が笑った。
「おーい、そろそろ夕食の時間だぞ!」
「はーい、今行きまーす♪」
入口から聞こえる達則の声に慌ててぬいぐるみを枕の下にしまうと、明日香はベッドから立ち上がった。
第1部完
第2部 激闘編へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます