第3話 君の名字は

 パノラマカーは犬山遊園駅に着いた。犬山城へはここから歩いて行く。

 親子も一緒に降りたが、駅からは出ようとしない。

「私たちはこのまま帰りますので」

「パパー、またねー」

「この人はパパじゃないのよ。よく似てるけど……」

 親子連れと別れたあと、一旦は駅を出たがそのまま名古屋までの切符を買い、改札をくぐりなおした。

「一緒に帰りましょう」

「……はい」

 自分でも何でこんな行動に出たのか分からない。でもそうするのが自然な気がした。親子も自然と受け入れた。

 自宅へと向かう新幹線。行きは一人だったが、帰りは三人だ。

 これからは同じ名字で一緒に暮らす。

 亡くなった旦那さんの代わりは務まるだろうか?

 きっと大丈夫だ。三人は同じ風景を見ていたのだから。


(了)

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パノラマカー奇譚 楠樹 暖 @kusunokidan

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