六ノ罪 《王都》


 道中ブラーズは、一つ大事な事を失念していた事を思い出した。



「...あ」


「ん?どうかしたか?」


「いや、そう言えば特徴聞くの忘れてたな~って。」


「ベルの友人の事か?それならさっき、寝かしつける時に聞いておいたぞ。」



 流石ルシフ。その辺りは抜け目がない。



「ん、ありがとなルシフ。お前の周到さに救われたよ」


「ほ、褒めるな恥ずかしい...。」



 ブラーズが素直に礼を言うと何故かルシフは頬を紅く染め、ブラーズの背中を叩いた。その力は文字通り手抜きが無く、結構痛かった。



「...さて、見えて来たぞ、ブラーズ。」


「あぁ。...久しぶりの王都だな。」



 月は既に沈み、陽が頂点を目指している頃、二人は王都に到着した。




 ※※※※※※




 王都ヘラクレス。

 人口十数万人を超え、世界の中心に建つ最大の都市である。

 都市は一帯が巨大な壁に囲まれていて、外から見れば頑丈な要塞にも見える。

 様々な商人が都市を行き交う為、昼間はとても騒がしい。

 ブラーズ達は王都の西側から入ってきた。まっすぐ奥まで伸びている大通りの端では、商人達が布を敷いてそこに座り、商売をしている。


 王都に入ってそう遠くない所に宿屋があり、二人は其処へ入って行った。


 宿は二部屋確保出来た。

 ブラーズはルシフと宿で別れを告げ、王都の中心にある城に向かった。



「やっぱ、いつ見てもでかいな...。」



 ここの王都は巨大な城を中心に、東西南北に大きな道が伸びている。

 その道の交わる中心にあるのがこの都市のシンボルとなる、巨大な城だ。

 青い屋根の城は異常に大きく、其処に住む、国を治める王の偉大さがよく伝わってきた。


 そこの入口は今、人集りが出来ていた。

 勇者選抜戦の登録は城で直接行われる。ブラーズも参加者の一人の為、その人混みに近付いて行った。

 大きな両手剣を背中に背負いながら誰かと対談をしている男、短剣の刃を手入れしている女など、沢山の人が揃っている。



「...この人数...一瞬怯むな...。」



 この集団が全員敵となる。

 油断は出来ない、と、ブラーズは頬を叩いて気合いを入れた。




 時刻は陽が頂点に達する頃、城門が開、勇者選抜戦の登録が始まった。




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