失われた銅貨


朝の日差しが窓から射し込み俺は目覚める。

地球にいた頃に使っていたベットと比べるとやはり固いなと思いながら起き上がる。


ズボンに手をつっこみ昨日受け取った銅貨を確認すると枚数が減っていた。

昨日寝る前は二十枚あった銅貨が今確認したら十二枚しかなかったのだ。

右のポケットも左のポケットもしっかりと確認してみたがやはり十二枚しかない……。


もしかして寝ている間に盗まれたのか?

いや、それはないだろう。

寝ていたとしてもズボンに手をつっこまれたらきづくし、そもそも盗るなら全額盗るだろうしな。


となると思いつくのは一つしかない。

あの神の言っていた呪いだ。


ステータスにも【マネーロスト】 って呪いがついてるし、確かあの神も一日の終わりに所持金の四割を失う呪いをつけるって言ってた気がする。

所持金の四割か。

なかなかキツイな。


もしこの呪いが毎日発動するとしたらかなりヤバイ。

例えば、百万を持っていたとして、次の日には四割が失われ六十万になる。

次の日には六十万が三十六万になり、その次の日には二十一万六千円に。


一週間たてば二万七千九百九十四円になる。

つまり一週間で九十七パーセントの所持金が失われる計算だ。

もし大金を稼いだとしても数日休んだだけで貧乏になってしまう。


てことはこの呪いがあるかぎり俺は年中金欠じゃないか……。

泣きたくなってきた。

でも今は泣いてる暇はないな。


今の所持金だともう宿には泊まれないし、また稼ぎにいかなくては。

とりあえずまずは冒険者ギルドに行くとするか。

兵士のおっさんもとりあえず稼ぎたいならおすすめだって言ってたし。


宿の受付の人にギルドの場所を聞くとこの宿から割りと近くにあることがわかった。

数分歩いていると、ギルドにたどり着くことができた。


扉を開け中に入ると巨大な剣を装備しているおっさんや、めちゃくちゃ重そうな斧を持っているおっさんなど明らかに普段から戦ってますといった感じの人たちが大勢いた。

てか、おっさんばっかだな。

もっとこう若い子とかいないのかな。


若い女性とパーティーを組んで依頼を受けたりとかちょっと期待してたんだけど現実はそんなに甘くなかった。

きょろきょろと周りを見ているとギルドの職員らしき人に声をかけられた。


「今日新しく登録される方ですか?」


「あっはい。そうです」


「では、手続きをいたしますのでついてきて下さい」


そう言われ奥のカウンターに案内された。


「まず登録料として銅貨五枚をいただきます。」


えっマジかよ金とるのか。

まぁ銅貨五枚ならあるからいいけどさ。


街に入るのにも金、ギルドに登録するにも金。

金が毎日失われる呪いを持つ俺にはきついな。

仕方ないのでポケットから銅貨を取り出し職員に渡す。


「ではこちらの板に血を一滴たらして下さい」


ナイフを渡されたのでそれを使い指の先を少し切り板に血をたらした。

すると、銀色の板に文字が表示された。



名前 ブラッド

ランク F


「これがあなたのギルドカードになります。

身分証にもなりますのでなくさないように注意してください。」


「もし無くしてしまったらどうすればいいですか?」


「その場合は再発行手数料として金貨一枚支払っていただきます。

冒険者ギルドについての説明はいりますか?」


「一応お願いします」


「冒険者にはS、A、B、C、D、E、F のランクがあります。

あなたは今日登録したばかりなので、ランクはFです。

ランクは自分のランクと同ランクの依頼を一定回数達成することにより上がります。

依頼にもSからFのランクがあり、自分のランクの一つ上までのランクまでは受けることができます。

例えば、今FランクのあなたはEランク依頼のゴブリンの討伐は受けられますがDランク依頼のオークの討伐は受けることはできません。

ギルドは冒険者の怪我、死亡については一切責任を負いません。

依頼はあちらのボードに貼り出されていますので、依頼を受けたい際はあちらから剥がして受付まで持ってきて下さい。

以上で説明は終わりですが何か質問はありますか?」


「いえ、大丈夫です。なにかわからないことがあったら聞きにきますね。」


「そうですか、新しく登録された方には魔石などを入れる用の革袋を差し上げているのですがいりますか?」


「お願いします」


なかなか丈夫そうな袋だな。

昨日はゴブリンからとっていた魔石はズボンのポケットに入れていたからこれは助かる。


さて、登録も終わったしとりあえず依頼を見に行くか。

ボードに近づき見てみると今の俺のランクだと、受けられるのは薬草の採取やゴブリンの討伐くらいしかなさそうだ。

薬草の採取はそもそも薬草を知らないから無理だし、やっぱゴブリンの討伐しかないか。

  


Eランク依頼

ゴブリンの討伐

ゴブリンの右耳一つにつき、

銅貨二枚

魔石は一つにつき銅貨三枚で買い取る



ゴブリンの魔石が一つで銅貨三枚か。

昨日宿屋で売った時は銅貨二枚で買い取られたな。

あの時眠くてもギルドまでくればよかったな……。


俺はゴブリンの討伐を受けることに決定した。

防具や武器を買いに行きたいところだが、今は金がないのでそれもできない。

はぁ、今日夜になればまた所持金の四割が失われるって思うとやる気が萎えるけど今日も生きるために頑張るとするか。

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