金がないのは辛いね



「眠い」


ゴブリンとの戦いの後俺は疲労感と睡魔に襲われていた。

しかしここで一晩を過ごすのは避けたい。


もう、ゴブリンに殴られて目覚めるなんて嫌だからな。 

周囲を見渡すと500メートルくらい先に立派な外壁で囲まれた何かが見える。

きっとあれが街なんだろう。


街に入るとしたらこの深紅の大鎌は目立つな。

なんとかしたい。

せっかく全属性魔法が使えるようになったんだし、魔法でなんとかならないかな。


この世界に空間魔法とかがあればアイテムボックス的なこともできるんじゃないかなって思うんだよ。

そんなことを思いながらステータスの【全属性魔法】レベル10を見ていると、説明が出てきた。


【全属性魔法】レベル10……火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、雷魔法、闇魔法、光魔法、空間魔法の全てを使えるようになる。


と、出てきた。

さらに、空間魔法について知りたいと念じると今度は空間魔法についての詳細が出てきた。


空間魔法

転移…行ったことのある場所に一瞬で転移できる。

距離が遠い程消費MPが増える。

空間作成…新たに空間を作成することができる。

消費MPを増やすことにより広さの拡張もできる。

作成した空間内の時間を停止するなどの設定もできるが、時間停止には膨大なMPを消費する。


転移ができるのか。

なかなか便利だな。

でも転移はあまり人前では使わない方がいいだろうな。

騒ぎになりそうだし。


まぁ、それはそうとして俺があったらいいなと思っていた能力があってよかった。 

さっそく空間作成を使ってみる。


「空間作成」


そう言って空間作成を使いたいと念じると大量の情報が頭の中に入ってきた。

空間作成の使い方を無理矢理理解させられているって感じだ。

本来であれば知識を得て練習をして習得するものをスキルによって無理矢理使おうとしているのだから当然なのかもしれない。


とりあえずスキルのおかげで空間作成の使い方は理解できた。

MPを消費し、新たな空間を作っていく。

もちろん時間停止の設定もする。


一度空間を作ってしまえば開いたり閉じたりは自由にできるっぽい。

とりあえず深紅の大鎌を空間の中に放り込んでおく。

さてそろそろ街に向かうとするか。

身分証とか持ってないけど入れるかな、なんて考えながら歩いていると門らしき場所が見えてきた。


そこには腰に剣をさした兵士が二人いた。

とりあえず入れるか聞いてみるか。


「ん?街に入りたいのか?」


「はい」


「身分証を見せろ」


「あのー身分証をもってないのですが……」


やはり身分証が必要なのか。

どうしよう、もってない。

まったくあの神も不親切だな。

こっちの世界に送るときに身分証くらいくれてもいいのに。


「そうか、ならば通行料として銅貨五枚かかるがどうする?」


金か。

まったくもってないな。


「すいません。お金はもってないんです。どうすればいいでしょうか?」


「金をもっていないだと?銅貨五枚くらいもっているだろう。」


それがもってないんだよ。

まだこっちの世界にきたばっかだからね。

でもそれをこの人にいうわけにもいかないしどうしようか。

とりあえず無くしたとでも言っておくか。


「ここまでくる途中でお金の入った袋を落としてしまったみたいでして、今はまったくもっていないのです。

田舎から稼ぎにきたので売れるような物もまったく持っていないのですが、どうすればいいでしょうか?」


「そうだったのか……。

しかし、一応規則なので銅貨五枚を払うことができなければ街に入れることはできない。

でも、この魔物の出る草原を一人でここまできたんだからそれなりの実力はあるんだろう。

なら、その辺でゴブリンでも狩ってきて魔石でもとってきたらどうだ?

三、四個あれば銅貨五枚くらいにはなるだろう」


「ゴブリンの魔石を取ってくればここを通れるんですか?」


「本来はこんなことはしないのだが今回は特別に私にゴブリンの魔石を三つ渡したら銅貨五枚を渡してやる。

魔石に関しては私が後で街に売りにでも行ってくるとするさ。

やるか?」


この人以外と優しい人だったんだな。

見た目かなりいかつい感じで怖い人だなって思ってたけど実はめっちゃいい人だったっぽい。


「はいっ。

やらせていただきます!」


「あと、どうせゴブリンを狩りに行くならちょっと余分に狩ってきた方がいいと思うぞ。」


「なんですか?」


「だってお前無一文なんだろ。街に入れるだけの魔石を取ってきても、宿に泊まる分の金がないと困るだろ。

街に入った後に換金する用の魔石も取ってきた方がいいだろってことだ。」


「なるほど。

確かにそうですね。

親切にありがとうございます。

では、行ってきますね」


「おう、気よつけてな」


門の人に見送られながら俺はまたゴブリンを狩りに出発した。

あぁさっさのゴブリンから魔石取っておけばよかったなぁ。

魔石なんて物があるってわかってたら絶対とってたのに。


街の外壁から充分に離れた後俺は例の空間から深紅の大鎌を取り出した。

この空間にも何か名前があった方がいいな。

やっぱわかりやすくアイテムボックスにするか。


俺は先程まで深紅の大鎌を入れていた空間をアイテムボックスと名付けることにした。

この深紅の大鎌、決して壊れないとは言っていたが切れ味はどうなのかも試して見ないとな。


しばらくするとまたゴブリンの群れを見つけることができた。

数は先程よりも多く二十体程だ。

大鎌を構えゴブリン達に接近する。

こん棒で殴りかかってきたので大鎌で防ごうとすると、偶然こん棒が大鎌の刃の部分に当たった。

するとこん棒はまるで豆腐のようになんの抵抗もなくあっさりと切断された。


嘘だろ。

切れ味良すぎでしょ。

それに驚き呆然と立ち尽くしているゴブリンの首を大鎌で切り落とす。


マジかよ。

あのときは一体目のゴブリンを殺すのに三十分もかかったのに今度は数秒で殺すことができた。


他のゴブリン達もこん棒を持って襲いかかってくるが

大鎌で同じように首を切り落としていく。

二十体もいたゴブリンは数分で全て動かぬ死体となった。

二十体も殺したのでまたレベルが上がった。



名前ブラッド

レベル7

HP82

MP∞

攻撃46

防御43

魔防39

魔攻57

スキル

【格闘】レベル3

【全属性魔法】レベル10

固有スキル

【不死】

【不老】

【死神の魔眼】

【再生】

呪い

【マネーロスト】



とりあえずこの大鎌はゴブリンに使うにはオーバキルすぎるな。

さて、魔石を取るとするか。

胸の辺りを大鎌で切り裂いて探すと小さな赤色の石が出てきた。

これが魔石か。

めっちゃ小さいな。


まぁ、ゴブリンだから仕方ないのかな。

きっともっと強い魔物ならもっと大きい魔石が出てくるのだろう。

そしてひとつ気づいたことがある。


この大鎌だと切れ味はいいんだが魔石を探すのが滅茶苦茶やりにくい。

後でナイフを買ったほうがいいな。

後、この大鎌以外の普通の武器もね。


街の外だとしてもこんな派手な色の武器を使っていたら噂になりそうだからな。

殺したゴブリンから全て魔石を取り終わると、計23 個になった。

それをなんとかズボンのポケットに入れ、街の外壁まで戻る。

後で魔石を入れる用の袋も買わないとな。


「おっ戻ってきたか。

早かったな。

ちゃんと狩ってこれたか?」


「はい。

運よく数の多い群れを見つけられたので思ったより多く魔石を取ってこれました。」


そう言って兵士のおっさんにゴブリンの魔石を三つ渡す。


「そうか、それはよかったな。魔石三つ確かに受け取った。これが約束の銅貨五枚だ。」


銅貨五枚を受け取りそしてすぐその銅貨を兵士のおっさんに渡す。


「さて通行料は銅貨五枚だ街に入るか?

まぁ、もちろん入るよな」


「はい。

お願いします。」


「銅貨五枚、確かに受け取った。

ようこそ、カルマーニの街へ!」


街の中は地球でいうなら中世の外国のような風景だった。

この景色をゆっくり楽しみたいところだか、今の俺はさっさと宿をとって眠りにつきたかった。


兵士のおっさんによるとこの世界には俺の予想通り冒険者ギルドがあるらしく魔石の換金はそこでできると言っていた。

しかし宿屋でもギルドで換金するよりは多少金額は落ちるが換金はできるらしので、一刻も早く寝たいおれは兵士のおっさんに宿屋の場所を聞きすぐに宿屋に向かった。

宿屋につき木製の扉を開け中に入ると、受付のカウンターが目に入った。


「魔石の換金をお願いしたいのですが」


「ではこちらに出して下さい」


俺がズボンに入れていた魔石を全て出すと受付の人は魔石を持って奥の方へいった。

しばらくすると、数枚の硬貨を持って戻ってきた。


「ゴブリンの魔石が二十個でしたので一つで銅貨二枚、二十個で銀貨四枚になります。

宿泊は1日につき銀貨二枚になります。

本日は宿泊はなさいますか?」


「では、1日宿泊でお願いします。」


そう言って俺は銀貨を二枚渡した。

この世界は銅貨十枚で銀貨一枚らしい。

てことは、多分銀貨十枚で金貨一枚なのかな?


案内された部屋は十畳程の広さでベットが一つとテーブルが一つあった。

もう睡魔が限界だったので俺はベットにすぐに入り深い眠りに落ちていった。




【マネーロスト】発動。

所持金、銅貨二十枚のうち四割の銅貨八枚をロスト。

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