第81話 ユーキ無双! 終わる寸前になって⁉︎

 そしていよいよユーキ対カオスの戦いは、最終局面を迎えようとしていた。


「行くぜユーキ‼︎」

「来なさいカオス‼︎」


 同時に空へと飛翔するユーキとカオス。


「ダークネスアロー‼︎」


 無数の漆黒の矢を放ちつつユーキに接近するカオス。


「エターナルマジック‼︎」


 エターナルマジックを発動したユーキの体が淡い光を発する。

 カオスの矢は全てユーキに命中したが、ユーキを包む光のオーラにより分解吸収されてしまう。


「まったく、厄介だなその能力‼︎」


 オーラで剣を作りユーキに斬りつけるカオス。

 それをロッドで受けるユーキ。


「うらやましい? でもあげないよ‼︎」


 カオスの剣を払いのけ、左手で魔法を撃つユーキ。


「バーニングファイアー、乱れ撃ち〜‼︎」


 巨大な炎の塊を連続で撃ち出すユーキ。


「中級魔法を連射⁉︎」

「さすがに凄い魔力ね」

「アイリス姉様の魔力にマナの能力がプラスされて、よりとんでもない存在になっているニャ」

 

 ユーキの放った炎に御構い無しに突っ込んで来るカオス。


「ダークネスパーム‼︎」


 手の平に闇のオーラを集め、急所に当たりそうな炎だけをガードして行くカオス。

 そして再び接近して鍔迫り合いになるユーキとカオス。


「能力はいらねぇ! 俺が今欲しいのは、アイリスでもマナでもないユーキ! お前だ‼︎」

「へっ⁉︎」


 カオスの発言を聞いたユーキがドン引きする。


「ロリコン……もしやと思ってたけど、やっぱり君はロリコンだったんだああ‼︎」

「違うわっ‼︎ てか、思ってたってどういう事だコラ⁉︎」

「だってナンバーズって女子率高いじゃない。13人中6人が女子だよ⁉︎ しかもその殆どが10代だし、パルとチルにいたっては一桁だよ? これはもう趣味で集めたとしか思えないよね⁉︎」


「だから違うわっ‼︎ ナンバーズはレベル7である事が絶対条件って言っただろうが! それで集めた中に偶々若い女のガキが多かっただけだ!」

「ええ〜、ホントかな〜? 最初から決め撃ちで行ったんじゃないの〜?」

「ユーキ、てめぇぇ!」

「キャー! ロリコンが怒った〜!」


 おちゃらけた感じでカオスから逃げるユーキ。


「ユーキ! 待てコラ〜!」


 どこか楽しげにユーキを追いかけるカオス。

 そんな様子を冷ややかな目で見ているパティ達。


「何なの、あのバカップルは?」

「楽しそう、ですね?」


「アイリス姉様とカオスが初めて会った時もあんな感じだったニャ。姉様が敵であるカオスをああやっておちょくりながらも圧倒してたニャ。カオスも始めの頃は鬱陶しそうだったけど、段々と姉様の魅力に惹かれて行って、遂にはあたし達と一緒にこの魔法世界を創造するまでになったニャ」


「そう、だったんですね」


「待ちやがれ! ユーキ!」


 カオスが闇のオーラを伸ばしてユーキを掴みに行くが、それを背後を振り返らずに、ヒョイヒョイとかわして行くユーキ。


「待てと言われて待つバカは居ないってね! フラッシュマイン‼︎」


 飛行しながら数個の小さな光の球を空中に置いて行くユーキ。


「何だぁ⁉︎ その小さな魔法弾は⁉︎」


 余りに小さな球だった為に侮ったカオスがその球に触れた瞬間、閃光と共に物凄い爆発が起こる。


「うおおっ‼︎」


 その爆発の衝撃波が他の球に当たると次々に連鎖爆発を起こし、凄まじい爆炎に包まれるカオス。


「かかった!」


 カオスが機雷にかかったのを確認したユーキが逃げるのをやめて振り返る。


「バリアードーム‼︎」


 すぐさまカオスの周りを円形の魔法障壁で包み込むユーキ。

 ドームに包まれた事により逃げ場の無くなった爆風が、容赦なくカオスに襲いかかる。


「ぐわああっ‼︎」

「コンプレッション!」


 ユーキがドームに手をかざし、グッと拳を握ると、ドームがどんどん圧縮されて小さくなって行く。

 続いてロッドを構えるユーキ。


「大きくな〜れ!」


 ユーキがロッドを振りかぶると、元の何倍もの大きさになるロッド。


「でやあああ‼︎」


 圧縮されたドームを、巨大化したロッドで思いっきり殴りつけるユーキ。


「がはあああっ‼︎」


 ロッドがカオスの脳天にクリーンヒットすると同時に、カオスを包んでいたドームが消滅し、落下して行くカオス。


「ぐうっ! ま、まだだああ‼︎」


 落ちて行く途中で踏み止まったカオスが、闇のオーラを噴き上げながら再び上昇して来る。

 カオスの両腕全体を覆ったオーラが巨大な爪となる。

 その腕を振り上げてユーキに近付くカオス。


「ユーキいい‼︎」

「来ないでロリコン‼︎」


 再び逃げるユーキ。

 ユーキを追いかけつつ、手の平に作った闇の球をどんどん投げるカオス。

 その球をかわし、時にはロッドで打ち返しつつ逃げるユーキ。

 ユーキが無数の球に気を取られている隙に、カオスの両腕から伸びた闇のオーラがユーキを完全に包み込んでしまう。

 

「ダークネスフィールド‼︎」


 ユーキを飲み込んだ闇が完全な球体になり、宙に浮いていた。


「あれってもしかして⁉︎」

「ええ、私がユーキさんに使った闇の空間ですね。もっとも闇の濃度は、私とは比べ物にならないくらい濃いでしょうけどね」

「ユーキ……」


 ユーキを闇に閉じ込める事に成功したカオスが、ニヤリと笑う。


「フフッ。ユーキ、お前が暗闇を苦手としている事は知っている。さあ、その中で泣いて土下座して謝るまでじっくりいたぶってやろう」


 カオスがゲスな考えを巡らせていると、闇の球の一部から光が漏れる。


「何っ⁉︎」


 その光は徐々に数を増して行く。


「ま、まさかっ⁉︎」


 そして全ての闇を撃ち払い、中から眩い光を放ちながら現れるユーキ。


「悪趣味〜‼︎」

「バ、バカなっ⁉︎ ユーキ! お前は闇に包まれると極端に弱くなる筈だ‼︎」

「それはちょっと前までの話! 今の完全体の僕はこれしきの闇なんて、ちっとも怖くないよ!」

「ぐっ……くそっ!」


 たじろぐカオスを見て、残念そうな表情になるユーキ。


「カオス……もうやめよ?」

「やめる? 何をやめるってんだ⁉︎」

「君では僕に勝てないよ」

「な、何言ってやがる‼︎ せっかく楽しくなって来たとこだろうが‼︎ まだまだ勝負はこれからだぜ‼︎」


「自分でも分かってるんでしょ? だから僕の弱点を狙って来た。純粋に戦いを楽しんでた頃の君なら、例え相手の弱点がさらけ出されたとしても、そこを狙うなんて事はしなかった」

「うぐっ!」


「君は戦いを楽しむんじゃなくて、なりふり構わず僕を倒しに来た。そんな君はもう怖くないよ……」

「お、おれが……お前を恐れていた、と言うのか……」


「まあ、僕の余りの可愛さに恐怖する気持ちも分からなくはないけどね」

「今いいとこっ‼︎」





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