第80話 雷の発生原理は正確には分かってないんだとか
パティがユーキに詰め寄っていると、地上に降りゆっくりと近付いて来るカオス。
「何だぁ⁉︎ アイリスの奴、また引っ込んじまったのかぁ⁉︎」
「カオス!」
身構えるパティ達。
「仕方ねぇなぁ、もう一度叩き起こして……いや……」
ふと周りに居るBL隊の面々を見て、ニヤリと笑うカオス。
「雑魚を適当に何匹か殺せば、アイリスの方から出て来る、か?」
「くっ! そう簡単にやれると思うな‼︎」
カオスが右腕に具現化させた巨大な爪をアイバーン達に振り下ろした時、一瞬にして間合いに入って来たユーキが素手でその爪を受け止める。
「なっ、何ぃ⁉︎」
(こ、こいつ! いつの間に接近して⁉︎)
「僕の仲間に……」
ロッドを大きく振りかぶるユーキ。
「手を出すなあああ‼︎‼︎」
野球のスイングのように、思いっきりカオスの腹を殴り付けるユーキ。
「ぐふぅおえええええ〜‼︎」
そのままロッドを振り抜くと、その破壊力により数メートル先にまで吹っ飛ばされるカオス。
「ぐぼおおおおおおっ‼︎」
地面に落ちてなお何度も転がった後、ようやく止まるカオス。
「す、凄い‼︎」
「と、とんでもないパワーだ‼︎」
「カオスは飛びましたけどねぇ」
「生涯ホームレスなの〜」
「場外ホームランなのよ!」
腹を押さえながら起き上がって来るカオス。
「やるじゃねぇか。ならちょっと遊んでやるぜ!」
ダンッと地面を蹴り付け、ひとっ飛びでユーキに接近しながら左右の腕を振り下ろし、闇のオーラで作り出した刃を放つカオス。
それを難なくロッドで弾き飛ばすユーキ。
間合いに入り振り下ろして来たカオスの爪を、ロッドで受けるユーキ。
「て、てめぇ、何なんだそのパワーは⁉︎ アイリスは引っ込んだんじゃなかったのか⁉︎」
「そだよ。だからここからはこの僕、ユーキちゃんがお相手する、ねっ!」
ロッドを薙ぎ払いカオスを引き離すと、クルリとロッドを一回転させて弓に変化させるユーキ。
「サウザンドアロー‼︎」
無数の水の矢を放った後再びロッドを回転させて今度は槍に変化させると、その槍を構えながらカオスに向かって突進して行くユーキ。
「しゃらくせえ‼︎ ブラックホール‼︎」
闇の塊を作り出すカオス。
すると、その闇に先程放った水の矢がどんどん飲み込まれて行く。
しかしその隙に、一気に接近したユーキの槍がカオスの体に突き刺さる。
「ぐううっ‼︎ ユ、ユーキ、だと? ユーキってのはつまり、その肉体の持ち主のマナ王女の事だろうが⁉︎」
体に刺さった槍を左腕でグッと掴んだカオスが、残った右腕でユーキを斬り裂こうと腕を振り下ろす。
ロッドから手を離し、クルリと後方に回転してカオスの爪をかわすユーキ。
そのユーキの後を追うように、無数の光の羽に変化したロッドが再びユーキの手に集まりロッドの形に戻る。
「た、確かに以前リーゼルで戦った時は中々面白れぇ戦いが出来たが、あの時はここまでのパワーは無かった! いやそれどころか、今のパワーはさっきのアイリスよりも明らかに強い! 何なんだてめぇは⁉︎」
「だから言ったでしょ? 僕は超可愛くて超強い、魔法少女ユーキだって」
「可愛いとかは言ってねえっ‼︎」
ロッドを短くして腰に装着してから左手の人差し指をピンと立てるユーキ。
「魔族であり神でもあるフィーの血が混じった父様の影響で、産まれながらにして天才的な魔法の才能を持っていたリーゼルのマナ王女の肉体に……」
同じように右手の人差し指を立てるユーキ。
「この魔法世界を作った3大神のひとり、命と魔法を司る女神イースの魂が入った姿……」
両手を体の正面で合わせて、ガッシリ手を組むユーキ。
「それがこの僕、ハイブリッドな存在のユーキだ!」
手を組んだ状態から、拳を握った右腕だけを上に上げるユーキ。
「メルクーアトレーネ‼︎」
ユーキが叫ぶとカオスの頭上に、水の矢が分解して漂っていた水の粒子が一気に集まり、巨大な塊を作り出す。
「あれはっ⁉︎ 前にユーキさんがパティさんと戦った時に出した水魔法⁉︎」
「悪魔のパティちゃんをも仕留めた極大魔法を無詠唱で出しましたよぉ」
「あんたは一言多いのよおお!」
おなじみのグリグリを食らうセラ。
「痛いですぅ‼︎ でも言わずにはいられないんですぅ‼︎」
上げた手を勢いよく振り下ろすと、巨大な水の塊がカオス目がけて降下する。
「そんなノロい魔法、食らわねぇよ!」
余裕を持ってその場を離れるカオス。
「だろうねっ!」
ユーキが握った右手をパッと開くと、水の塊が四散して無数の矢になりカオスに襲いかかる。
「味な真似をっ! ネザーワールド‼︎」
カオスの周りに多数のゾンビ兵が現れ、次々にその体で水の矢を受けて行く。
「ゾンビ達を盾にした⁉︎」
「ゾンビとは言っても、あれもカオスが自分のオーラで作り出した物ニャ」
「え⁉︎ そうだったんですか⁉︎」
「まあ、ガチの死体を使う事の方が多いんだけどニャ」
ユーキが再び拳を握ると、カオスにまとわりついていた霧状になった水が凍りつき始める。
「この程度の氷っ!」
オーラで作り出したハンマーで、体にこびり付いた氷を砕いて行くカオス。
しかし砕いても砕いても、そのすぐ後から新たな氷が生まれて行く。
「しつけぇ‼︎」
「もうそろそろ溜まったかな?」
そう言って元の長さに戻したロッドの先を、地面にトンと付けるユーキ。
「スパーク‼︎」
ロッドを付いた場所から電撃が地面を走って行き、カオスに炸裂する。
「ぐああっ‼︎」
「んでもってこうだっ‼︎」
ユーキがロッドを体の正面でぐるぐると回転させると、カオスの頭上に先程四散した水の塊が再び現れる。
「でやあっ‼︎」
振りかぶったロッドを振り下ろすと、先程よりも更に巨大になった水の塊が、ダメージにより動けないカオスを押し潰す。
「うおおおお‼︎」
ユーキの魔法を立て続けにモロにくらいダウンするカオス。
「なるほど、ここまでが全て一連の動きになっていた訳か」
「しかもかなり効いてますよ‼︎」
フラつきながら立ち上がったカオスがニヤリと笑う。
「フッ、なるほど、そういう事か……今まで俺がリーゼルやトゥマールで相手にしてたのは、あくまでお前の力の一部に過ぎなかった訳か。それが、本来の魔装具を取り戻した事により、眠っていた力が全て解放された。俺はアイリスを目覚めさせる事ばかり考えていたが、真に強いのはマナとアイリスの融合した姿であるユーキ‼︎ お前だったんだな⁉︎」
「どうやらそうみたいだね。だけど僕はユーキじゃなくて、最強無敵超絶美少女魔法使いユーキちゃんだからね! ちゃんと全部言わないと勝負してあげないよ?」
「そうか。では改めて勝負だ! 最強無敵超絶美しょ……言えるかああっ‼︎」
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