ひめてん〜姫と天使と悪魔と猫〜

第73話 何故ジョーカーの事をババと言うのだろう？

　どうにか誤解を解いて助け出されたユーキがセラと交渉の末、ギリギリ死なない程度にウーノを治癒してもらうのだった。

「分かってはいたけど、ユーキ姉様は甘過ぎよ！　今ここでトドメを刺すべきだわ！」

「そうなのよ！　こんな幼女の敵は抹殺するべきなのよ！」

　過激な発言をするネムとパルに、軽くチョップを食らわせるユーキ。

「痛ぁい！　姉様がぶったああ！」

「児童虐待なのよ！」

「その児童がトドメだの抹殺だの、物騒な事言うんじゃありません！　ほら！　戦いは終わったんだから、早く元に戻って！」

「うう〜、分かったわよ」

「合体解除なのよ」

　獣魔装を解除すると同時に、それぞれ合体状態も解除するネムとパル。

　パルと分離したチルの霊体は、ベールが抱きかかえていた肉体に戻った。

「ふう〜、久々のシャバの空気は美味いの〜」

「何者なのよ⁉︎」

　ロロと分離したネムも、すっかり元の人見知りなネムに戻っていた。

「ユーキ姉様ごめんなさい。ネム、ロロと合体してると妙に気が大きくなっちゃうから……」

「うん、僕も経験したからその感覚分かるよ。だけどどんなに気が大きくなっても、むやみに人の命を奪うのだけはダメだからね」

「ハイ……」

「それで、敵である僕まで治療して一体どうするつもりなんだい？」

　いつのまにか意識を取り戻していたウーノが、ユーキに真意を問う。

「ロリエース⁉︎」

「意地でもやめないつもりだね？　まあ別にいいけどさ。それで、僕を生かしておいてどうしようって言うのさ？　言っとくけど、カオス様に人質なんてのは通用しないよ？」

「そんな事しないよ。だけど僕達は君に勝った上に命まで助けた。だったら君はもう僕達の物だと思うんだけどな〜？」

「君達の物？　よし分かった！　それなら君達全員と結婚してあげよう！」

「そういう意味じゃなああいっ‼︎」

　再びネム達から黒いオーラが溢れ出す。

「ユーキ姉様！　やっぱりこいつ殺す！」

「生かしておいてもろくな事にならないのです！」

「だからダメって言ってるでしょ⁉︎」

　立ち塞がるユーキの背後から、ウーノを威嚇するネム達。

「ガルルルル〜！」

「シャアア‼︎」

「キエエエエ‼︎」

「フーッ‼︎」

「獣かっ‼︎」

「何にせよ、僕達サーティーンナンバーズは君達に完全敗北したんだ。君達の言う事に従うよ。ああそうだ！　ユーキ、君に渡す物があったんだ」

「渡す物？　ゲームソフト⁉︎」

「いや、違うから」

　ユーキの返しを皮切りに、大喜利大会が始まってしまう。

「生暖かいサイダー⁉︎」

「クソまずいよ！」

「チョコを全部舐めとったポ◯キーなのです！」

「ただのプリ◯ツじゃん！」

「全部潰し終わったプチプチですかぁ？」

「何の楽しみも無いよ！」

「両方右側の靴なのよ！」

「慌てん坊さんっ！」

「ネタの乗ってないお寿司なの〜」

「誰かが食べちゃったのかなっ⁉︎」

「あ、ああえ〜と！　私は何にしようかしら⁉︎」

「クイーンは無理しなくていいからっ！」

　瀕死の体を推して、全員にツッコミを入れるウーノ。

「ハアッハアッ！　こ、こっちは死にかけてるんだから、いちいちツッコミさせないでよね〜！」

「いや、律儀に全員のボケを拾わなくても……ああそれはそうと、僕に渡したい物って何⁉︎」

「そ、そうだった。くだらないやり取りをしててすっかり忘れてたよ。君達が僕達ナンバーズを全員倒したら渡すようにってカオス様から預かってたんだ」

「え⁉︎　それってまさか⁉︎」

「それを渡されては困りますねえ」

「何っ⁉︎」

　ウーノが懐に手を入れ何かを取り出そうとした時、横たわったままのウーノの全身を、空から降ってきた来た無数の剣が刺し貫く。

「ぐはああっ‼︎」

「ロリエース⁉︎」

　そこに現れたのは、シェーレでネム達の戦いに横槍を入れて来たジョーカーだった。

「君は⁉︎　……誰？」

「可笑しな仮面を付けてるから色物の芸人よ、姉様」

「ガン◯ムの敵キャラなのです！　仮面を付けてる人が多いのです！」

　唯一面識のあるクイーンが正体を告げる。

「ジョーカーです」

「ジョーカー⁉︎」

「母様、ジョーカーだと当たり前過ぎて面白く無いの〜」

「もっとセンスのあるボケを考えるのよ」

「え、ええ〜⁉︎　あいや、ボケとかじゃなくてですね⁉︎　彼は一応サーティーンナンバーズのひとり、ジョーカーなんですよ。もっとも、殆ど誰も知らないから存在する意味は無いんですけどね」

「だまらっしゃい‼︎」

「確かにパルもジョーカーなんて名前、初めて聞いたのよ」

「パンの耳なの〜」

「初耳なのよ！」

「ジョーカー？　要するにババの事でしょ？」

「1番いらないカードなのです」

「仲間の居ない可哀想なカードですぅ」

「そうなんですよ。トランプのババと同じく、このジョーカーもみんなから嫌われててね〜」

「適当な事を言わないでください！　仲間が居ないんではなくて、邪魔だから作らないだけです！　そちらのエースさんと同じですよ」

「そのロリエースを何で攻撃するんだよ！　味方でしょ⁉︎」

「あなた方の代わりにトドメを刺してあげたんですよ。何か問題ありますか？」

「大アリくいだよ！　ロリエースは、貴重なツッコミ役になってくれるかもしれなかった人なんだぞ〜‼︎」

「いや、知りませんよ‼︎」

「因みに、まだ生きてるからねぇぇ」

　かろうじて息のあるウーノが、必死に訴えていた。