第72話 コメディ上の演出です

 魔装したパティがカオスに殴りかかる。


「やあああ‼︎」

「おっと!」


 上半身を反らせてパンチをかわすカオス。

 しゃがみ込んでから左の拳でボディブローを狙うパティ。

 それを右手で受け止めるカオス。

 素早くカオスの右腕を掴み、一本背負いで投げるパティ。


「でやああ‼︎」

「何の!」


 パティの投げる動きより早く飛んで、クルリと宙で体を反転させて着地するカオス。

 すぐさま接近してしゃがんだ状態のカオスの顔に膝蹴りを放つパティ。


「凶悪だなおい!」


 両腕でガードするカオスだったが、そのままカオスの頭を両足で挟み込んで、ヘッドシザーズホイップを仕掛けるパティ。


「させねえよ!」


グッと踏ん張って投げられるのを堪えたカオスが、パティの体を抱え上げ、パワーボムを仕掛ける。


「やあっ!」


 カオスの勢いを利用して大きく体を反らせて、今度は完全に投げ切るパティ。


「ぐうっ!」


 首を押さえながら、ゆっくり起き上がって来るカオス。


「お前、属性を間違えた上にジョブまで間違えたのかあ⁉︎ 女子プロレスラーにでも転職した方がいいんじゃねえのか⁉︎」

「うるさいわね! 使えそうだったからユーキに色々教えてもらったのよ!」


 

 パティがカオスとプロレスをやっている頃、いよいよ決着間近なロリエースVSジューシーエンジェルズ。

 ユーキを欠いたネムとパルの2人が、必死にウーノの猛攻に耐えていた。


「やはりユーキの存在が大きかったみたいだね⁉︎ 君達2人だけだと急にイージーになったよ!」

「うるさいなあ! 目にもの見せてあげるからまってなさい!」

「とはいえそろそろキツイのよ! セラ姉様、まだなのよ⁉︎」


「みなさんお待たせしましたぁ! これで行きましょうぉ!」


 セラよりジューシーエンジェルズの3人に、待ちに待った通信が送られる。


「詠唱文句出来たんだね? ありがと、セラ」

「セラ姉様、お疲れ様です」

「お疲れ様なのよ。危ないとこだったのよ」

「どういたたまれましてぇ。詠唱文句はその都度私が舌打ちしますねぇ」

「耳打ちでしょ!」

「似たようなもんですぅ」


 セラより大まかな流れの説明を受けるジューシーエンジェルズ。


「分かった。じゃあネム! パル! 僕から行くよ!」

「うん」

「食らわせてやるのよ!」


 ウーノを中心に、三方から囲む位置に着き魔力を高めて行くジューシーエンジェルズの3人。


「これがさっき言ってた大技かい? いいよ! 受けて立とう! そして正面から撃ち砕く!」


 あえて真っ向から技を受ける構えのウーノ。

 剣を体の正面で構えて、まず始めに詠唱を始めるユーキ。


『天より使わされし無垢な光』


 ユーキの後に続いて詠唱するパル。


『死の影振り払う癒しの天使』


 パルに続いてネムが詠唱する。


『数多の術持ちし技の天使』


 そして再びユーキが詠唱する。


『悪なる者を打ち砕く力の天使』


 ジューシーエンジェルズの3人から発せられた光がそれぞれを繋ぎ、三角すいをふたつ合わせたような形の結界がウーノを包み込む。


「3人揃っての詠唱か⁉︎ どんなにデカイのが来るか楽しみだよ」


 結界が完成した後、ウーノの周りを囲っていたジューシーエンジェルズが、ユーキの元に集まって行く。

 そして3人揃って詠唱する。

 

『3つの光集いし時』


 ゆっくりと剣を振り上げるユーキ。


『彼の者を楽園へと誘わん』


 ユーキの持つ剣に、ネムとパルの魔力が集中して行く。


「来いっ‼︎」

 


『シエル‼︎‼︎』



 ユーキが剣を振り下ろすと、3人の魔力が絡み合うように回転しながらウーノに向かって行く。

 その魔力を両腕の剣をクロスさせて、必死に堪えるウーノ。


「ぐぐぐぎぎぎぎ! ま、負けるかああああ‼︎」


「ネム‼︎ パル‼︎」

「お任せなのよ‼︎」

「行ってらっしゃいませ‼︎」


 ネムとパルの魔力を体全体で受けて、黄金色に輝くユーキ。

 剣先をウーノの方へ向けて構え、魔力の波に乗って渦の中心を飛翔して行くユーキ。


「ロリエースううう‼︎」

「ロリコンじゃなああい‼︎」


 突進して来るユーキの剣先を払おうと待ち構えるウーノ。

 しかしウーノの前でクルリと回転して剣の腹でウーノの顔面を殴りつけるユーキ。


「ぶふうっ‼︎ 殴、るんか〜い!」


 そして怯んだウーノに、ジューシーエンジェルズの全魔力が降り注ぐ。


「ぐわああああああ‼︎」


 全身の力が抜けたように墜落して行くウーノ。


「ロリエース‼︎」


 地上に激突する寸前でウーノを受け止めたユーキが、ウーノを抱き抱えながら静かに地上に降り立つ。

 だが、地上に着いたと同時に限界を迎えたユーキの魔装具が砕け散る。

 それと同時にユーキの獣魔装も解除される。


「ホント、ギリギリだったっとと! うわっ!」


 獣魔装が解けた事により力の抜けたユーキがウーノの体を支えきれず倒れてしまう。

 

「ユーキ姉様!」

「ユウちゃん!」


 ユーキの後を追って降り立つネムとパル。

 そして同じくワイバーンに乗ったセラとベールも降り立つ。


「んなあっ⁉︎」

「ね、姉様⁉︎」

「あらぁ」


 ネム達が見たそこには、まるでウーノに押し倒されたような格好で倒れているユーキの姿があった。


「ああ! ネム! パル! 助けて!」


 抜け出す事が出来ず、ネム達に助けを求めるユーキ。

 だが、そんなユーキの姿を見たネムとパルの全身から、パティ紛いの黒いオーラが溢れ出す。


「このロリコン……遂に力尽くでユーキ姉様を襲うなんて……」

「万死に値するのよ!」


「ええ⁉︎ あ、いや違うから! 急に魔装が解けちゃって変な格好になっただけだから!」

「待っててユーキ姉様! 今すぐそのロリコンの息の根を止めるから!」


 全身から激しく放電するネム。


「ちょ、ちょっと待って‼︎ この状態で電撃なんか放ったら僕まで巻き添え食うからああっ‼︎」


 

 サーティーンナンバーズ、ナンバーエース撃破。

 これにより、遂に全てのサーティーンナンバーズを撃破する事に成功したBL隊。








 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る