第74話 巨大な敵キャラは味方になった途端弱くなる説

 ジョーカーにやられて益々死にそうなウーノを見て、またセラに頼み込むユーキ。


「ゴメン、セラ。またロリエースの事、お願い」

「分かりましたぁ、今度こそ確実に息の根を止めておきますねぇ」

「違うからあっ‼︎」


 ユーキに叱られて、渋々ウーノを治療するセラ。

 それをまた邪魔しようとするジョーカー。


「だから、余計な事をしないでいただけますか?」


 セラに攻撃を仕掛けようとするジョーカーの前に立ち塞がったのは、ベールだった。


「ジョーカー‼︎ パル達の戦いを邪魔した事。そして何よりチルにした事。忘れたとは言わせませんよ‼︎」

「はて? 何かしましたか? 私はどうでもいい事は忘れるタチなもので」

「ジョオオオカアアアア‼︎」


 ワイバーンでジョーカーに攻撃を仕掛けるベール。

 しかしジョーカーが右腕を前に出すと、何かに阻まれているように進む事が出来ないワイバーン。


「グオオオオッ‼︎」

「うるさいですよ!」


 ジョーカーが右腕をあらゆる方向に振ると、バラバラに切り裂かれて消滅してしまうワイバーン。


「まさかっ⁉︎ こうも簡単に⁉︎」

「ロロ‼︎ 行くよ‼︎」

「ハイなのです!」

「魔装‼︎」


 瞬時にロロと合体してジョーカーに仕掛けるネム。

 だが、ジョーカーのただならぬ雰囲気を感じたユーキがネムを止めようとする。


「ネム待って‼︎ 迂闊に飛び込んじゃダメ‼︎」


 ジョーカーに殴りかかったネムだったが、ワイバーンと同じように突進を止められてしまう。


「シェーレでは仕留め損ねましたからね。私が直接引導を渡してあげますよ」


 左腕を真上に振り上げるジョーカー。


「ネム‼︎ 下がって‼︎」

「ダメ、動けない!」


 何かに絡みつかれているように、動く事が出来ないネム。

 動けないネムの頭に、ジョーカーの左腕が振り下ろされる。


「ネムうううっ‼︎」


 眼をつぶるネム。

 しかし、いつまでたってもジョーカーの腕が振り下ろされる事は無かった。


「大丈夫かい⁉︎ ネムエンジェル⁉︎」

「あなた⁉︎」


 ジョーカーの攻撃を止めたのは、セラにより完全に傷が治ったウーノだった。


「ロリビッチ⁉︎」

「もう好きに呼んで! それよりも、今の内にさっきのジューシーエンジェルズとやらになるんだ! あの姿なら!」


 しかし、それはもう不可能である事を告げるユーキ達。


「あ、ゴメン。魔装具が壊れちゃったから僕もうムリ」

「チルもエネルギーが切れてムリなの〜」

「ネムは魔力は大丈夫だけど、あの娘帰っちゃったし……」

「ごめんなさい。私ももう、あのクラスの魔獣を召喚するだけの魔力は残ってないんです」


「ええ〜! そうなの〜⁉︎ なら仕方ないなあ。僕が時間を稼ぐから、その間に脱出の準備をするんだ!」

「ロリエース、僕達を助けてくれるの⁉︎」

「僕の命はもう君達のものなんだろ? だったら君達の為に使えばいい」

「だから! 使うとかそういうんじゃなくて!」


 ユーキの制止を聞かず、ジョーカーに向かって行くウーノ。


「急げよ! クイーン!」

「感謝します! エース!」

「ちょっと〜!」


 すぐさま召喚の準備に入るクイーン。


「何のつもりです、エースさん。味方に刃を向けるんですか?」

「どの口が言ってんだああ‼︎」


 二刀流の剣でジョーカーに激しく斬りかかるウーノ。

 しかしジョーカーは魔装具を使う事も無く、素手でウーノの攻撃を全ていなしていた。

 ウーノが決死の戦いをしている頃、再びワイバーンを召喚したベールが、みんなを呼び寄せる。


「ユーキちゃん、セラちゃん! ネムちゃん! パル! チル! 早く乗ってください!」

「イェーイ!」

「そののるじゃないよ、セラ姉様」


「何でパル達だけ呼び捨てなのよ⁉︎」

「差別なの〜。イジメなの〜。格差社会なの〜」

「あなた達は私の娘でしょおっ!」


 だが、ウーノを気にして中々乗ろうとしないユーキ。


「ユーキ姉様、早く!」

「だけどロリエースが……」

「今ここでためらって私達が全滅したら、それこそロリちゃんの行為が無駄になっちゃいますよぉ⁉︎」

「ぐう……分かった……」


 セラの言葉を受け、グッと堪えてワイバーンに乗り込むユーキ。


「では、急いでシェーレに戻りますよ! ワイバーン‼︎」

「グオオオオッ‼︎」


 ワイバーンが大きく翼を広げ、正に飛び立とうとした時、猛烈な速度で飛んで来た何かがワイバーンにぶち当たり、乗っていた全員が投げ出されてしまう。

 ワイバーンは激突の衝撃により消滅してしまった。


「痛ああい! 何事⁉︎」

「みなさん、無事ですか⁉︎」


 慌ててみんなの安否を確認するベール。


「僕は大丈夫!」

「私も元気ですぅ」

「ネムも平気」

「パルも生きてるのよ! チルは⁉︎」

「また魂が抜けちゃったけど、問題無いの〜」

「問題有るのよ!」


「僕もまだ何とか生きてるよ」

「え⁉︎」


 ユーキ達が声のした方を見ると、そこにはボロボロになったウーノが居た。


「ロリエース⁉︎」

「何で残った筈のロリエースがここに居るのよ⁉︎ ジョーカーの足止めはどうしたのよ⁉︎」


「いや〜、そういえばユーキに渡さなきゃいけない物があったのを思い出してね〜、慌てて飛んで来たよ!」

「いや、明らかに人為的に吹っ飛ばされてるよね⁉︎」





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