第67話 正体不明の敵は、正体が分かってしまうと怖さが無くなる説

 ドス黒いオーラを発しながら、カールに向かって行くパティ。


「ダークネスパーム‼︎」


 闇をまとった手の平で、カールを掴もうとするパティ。

 それを斧の柄で受けるが、パティの手が触れた部分が黒く侵食され崩れ落ちて行く。


「いかんっ!」


 慌ててパティから離れるカール。

 だがすぐに後を追うパティ。


「くっ! グラビティ‼︎」

「ぐっ!」


 超重力がのしかかり、動きが止まるパティ。

 しかし膝はつかず、立ったままの体勢で堪えるパティ。


「この超重力に耐えるか⁉︎ まるで魔獣じゃのう」

「だ、れ、が……魔獣、ですってえええ‼︎」


 カールの言葉で更にオーラが増すパティ。


(あ、しまった! 火に油を注いじゃったああ‼︎)


「お、も、い、わ、ねええ! どけええええ‼︎」


 怒りを込めて丸くなった体を、両手を広げながら一気に伸ばすと、パティにかかっていた超重力が全て無効化されてしまう。


「何じゃとっ⁉︎」


 身軽になったパティが、カールとの間合いを一気に詰めて、必殺の悶絶ボディブローを炸裂させる。


「ぐふぅえええ‼︎」


 腹を押さえて前かがみになった所へ、その場で回転してからの後ろ回し蹴りをカールの側頭部に食らわせるパティ。


「がっ‼︎」


 パティの重い蹴りにより吹っ飛ぶカール。

 蹴りの衝撃で、カールが常に深くかぶっていたフードがめくれ上がる。

 その下のカールの素顔を見て絶句するパティ。


「あ……あんた……」


 フードの下から現れたのは、パティの魔装によく似たゴスロリ風の黒い魔装衣をまとった、推定年齢12歳程の少女だった。


「あ、あんた! 女の子だったのおおっ⁉︎」

「え⁉︎ ああ! フードがああ‼︎」


 めくれ上がったフードを慌ててかぶり直し、すっとぼけるカール。


「ホホッ、わしが女の子じゃと? 何をたわけた事を言っておるのじゃ? この小娘が!」

「あんたの方が小娘でしょ‼︎ ていうか……ふ〜ん、そう……いかついジイさんかと思ってたら、中身はこんなガキだった訳だ。つまりあたしは、こんなガキに散々小娘だのおむすびだの言われて馬鹿にされてた訳だ〜」

「おむすびって何よっ‼︎」


 益々強大になって行くパティの闇のオーラにビビるカール。


「大人をナメたら痛い目に合うって事を、その体に教えてあげるわ」


 ポキポキと指を鳴らしながら、ゆっくりとカールに近付いて行くパティ。


「あ、あなただって言う程大人じゃないでしょっ‼︎」



 新たなロリっ娘が出て来た頃、ウーノと本格的なバトルに突入したネムとパルだったが、ネムはウーノに吹っ飛ばされて城の屋根に埋まっていた。


「いったあ〜! 強化魔法をかけてるとはいえ、何てパワーよ⁉︎」

「ネム姉様‼︎ 大丈夫⁉︎」


 頭を押さえながら這い上がって来たネムを気遣うパル。


「パル‼︎ 前‼︎」

「えっ⁉︎」


 ネムに気を取られたパルに斬りつけるウーノ。

 それをギリギリの所でかわすパル。


「戦いの最中によそ見かい? ナメられたもんだね!」


 体勢が崩れたパルの至近距離で魔法を発動させるウーノ。


「エクスプロージョン‼︎」

「ぐっ!」


 爆風で吹き飛ばされるが、何とか空中で堪えるパル。


「同じ魔法でネムはあんなに吹っ飛ばされたのに、パルは堪えた⁉︎」


 ワイバーンの背で驚くユーキに説明するベール。


「おそらく、まとっている召喚獣の差ですね」


 ベールの答えに更に疑問を投げかけるセラ。


「召喚獣の差ですかぁ? でもぉ、ネムちゃんのフェニックスは最高のSランクですよぉ?」

「確かにランクで分ければラファエルも同じSランクですが、あのラファエルは三大天使の内のひとりで、他のSランクとは格が違います」


「ああ、同じレベル7でも私とロリちゃんでは戦闘力が違う、みたいなものですねぇ」

「もしかしてロリエースの事? ロリちゃんでは誰の事か分かんないよ!」


「ウチのパーティ、ロリっ娘だらけですからねぇ」

「私の事ですか〜?」

「いや、さすがにベールさんは無理がある」

「酷い〜! 見た目だけなら結構若いんですからね〜!」

「まあそれは置いといて」

「置いとかないで〜!」


「ベールさん、その三大天使って他の2人も今出せる?」

「あハイ、出せますよ〜」

「セラ! ネムを呼び出して!」

「どうするんですかぁ? パシリですかぁ?」

「どこにだよっ⁉︎」


 セラの通信によりユーキ達の元にやって来るネム。


「なぁに? 姉様。ネム今、もの凄〜く忙しいんだけど⁉︎」

「ユウちゃんがお腹が空いたそうなのでぇ、何か食べる物買って来てくださいぃ」

「いや言ってないでしょっ⁉︎」


「ユーキ姉様〜。戦いが終わったらネムがおごってあげるから、もう少しガマンしててね?」

「だから違〜うっ‼︎」


「じゃあ何? おトイレ?」

「そのくだり好きねっ! そうじゃなくて! ネム! 魔法少女らしくフォームチェンジだ!」

「フォームチェンジ⁉︎」


 上空では、ネムのフォームチェンジを邪魔されないよう、パルがひとりで必死にウーノを食い止めていた。


「ここから先は行かせないのよ!」

「2人がかりでも勝てないのに、君ひとりで何が出来るって言うんだい?」


「時間稼ぎぐらいは出来るのよ!」

「ああ、それ言っちゃうんだ? 何か企んでるみたいなのは分かってるけど。まあ、戦いが面白くなるのならこっちも大歓迎だからね。別に邪魔はしないよ」


「そうやって余裕ぶっこいてられるのも、今の内なのよ!」

「フフッ、じゃあそれまでは君が僕を楽しませてよ!」


 ウーノの二刀流の剣がパルに襲いかかる。

 それを何とかガードするパル。


「やるね! なら、ミーティア‼︎」

「このラファエルの機動性ならかわせるのよ!」


 天より降りそそぐ無数の流星群を必死にかわすパル。


「僕を忘れてるよ⁉︎」

「しまっ!」


 パルが流星群に気を取られている隙に、一気に懐に飛び込んで来たウーノがパルを斬り裂く。


「あうっ‼︎」

「パル‼︎」


 墜落して行くパルを心配するユーキ。

 しかしベールは、召喚の準備をしながら冷静に状況を見ていた。


「大丈夫です。あのラファエルは、あの程度の傷は物ともしません」

「え⁉︎」


 ベールの言葉通り、パルの受けた傷は見る見る塞がって行った。


「傷が……治ったのよ⁉︎」


 再び上昇し、ウーノと対峙するパル。


「へえ、召喚士なのに治癒魔法まで使えるんだ? いや、違うな……そのまとっている召喚獣の能力かな?」


 ウーノの疑問に答えるように、ベールが解説を始める。


「三大天使にはそれぞれに特性を持たせてあります。パルがまとっているラファエルは、強力な治癒能力を持っています。どんなケガでも瞬時に治って行きます」

「天使の姿で治癒魔法を使えるなんてぇ、益々商売上がったりですぅ」


「そしてこれが、同じく三大天使のひとり、ガブリエル!」


 ベールの描いた魔方陣より、また別の天使が召喚される。

 そして召喚されたガブリエルと獣魔装するネム。


「よろしくね、ガブちゃん!」

「ガブちゃんって何かのアニメであったな〜」

「獣魔装‼︎ ガブリエル‼︎」


 ガブリエルと合体して天使となったネムが、再び戦いに戻って行く。


「オートで治癒魔法が発動するんだ? 中々便利だね。じゃあどの程度の速度で治せるか、試してあげるよ!」


 再びウーノの剣がパルに振り下ろされようとした時、ネムの放った雷がウーノの剣に落ちる。


「ぐっ!」


 ウーノが怯んだ隙に、パルと合流するネム。


「お待たせ! パル!」

「ネム姉様! 助かったのよ! そしてとてもキレイなのよ!」

「ありがと! さあ行くよ、パル!」


 一瞬怯んだウーノだったが、すぐに体勢を立て直し剣を構える。


「やってくれるじゃない。しかも、また天使とはね。つまり、そっちの天使も何か特性を持ってるって事だよね?」


 またウーノの疑問に答えるかのように、いいタイミングで解説するベール。


「ラファエルは自動治癒能力。ガブリエルは攻撃魔法を特化させてるんです。あの2人、凄く強いわよ〜!」


「いいね。僕がたっぷり可愛がってあげるから来なよ、天使ちゃん達!」


「うう〜、やっぱりあいつ、何か気持ち悪い〜」

「天に代わってロリコンを成敗なのよ!」


「ああ〜もう! めんどくさいからロリコンでも何でもいいよ!」


 ツインエンジェル対、何かを諦めたウーノの、第2ラウンドが始まる。







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