第65話 ひとりの敵に複数人で戦う戦隊物のように
「よくも母様を‼︎ 許さないのよ‼︎」
怒ったパルがウーノに突撃するが、あっさりとかわされてしまう。
「君はさっきからそればっかりだね? そんな直線的な攻撃じゃ、誰でも簡単に避けられるよ?」
「だからネムがフォローするんだよ! ボルケーノ‼︎」
翼から無数の火炎弾を、ウーノ目がけて撃ち出すネム。
「数は凄いけど、威力がダメダメだね」
ネムの火炎弾を難なく剣で斬り裂いて行くウーノ。
立ち込めた爆煙の中から、また突っ込んで来るパル。
「おっと! 危ない危ない!」
「エルツィオーネ‼︎」
更に火炎弾を放つネム。
「君の攻撃も単調だよ。やはりまだ子供だね」
「あんたもそんなに変わんないのよ〜‼︎」
叫びながらまたパルが通過して行く。
だが、そんなネム達の単調な攻撃に不信感を抱き始めるウーノ。
(何だ? いくら子供とはいえ、さっきから攻撃があまりに単調過ぎる。何かを狙ってるのか?)
ウーノがネム達の行動を不審に思っていると、いつのまにかウーノの周りは爆煙だらけで殆ど何も見えない状態になっていた。
(ああなるほど、僕の視界を塞いで不意打ちしようって訳か?)
「面白い! 受けて立つよ!」
敢えて何もせずに、ネム達の出方を見るウーノ。
そんな中、呪文の詠唱に入るネム。
『火の神アグニより賜りし炎』
その魔力の高まりはウーノも感じ取っていた。
(デカイのが来る⁉︎ いいねえ、どんなのが来るか楽しみだ)
前に出した右腕に左手を添えて構えるネム。
『冥界より蘇りし火の鳥よ』
ネムが詠唱をしている間も、休む事無く突撃を繰り返すパル。
「足止めのつもりかい? そんな事しなくても逃げないよ、もったいない」
『地獄の業火をもって、我が敵を焼き尽くせ』
(来るっ!)
『インフェルノ‼︎』
パルがウーノの側を通過した直後、ネムより放たれた凄まじい炎の咆哮が、ウーノに襲いかかる。
(これはっ⁉︎ 防御しきれないっ⁉︎)
魔法障壁では防ぎきれないと感じたウーノが、紙一重の所でネムの炎をかわす。
「ふうっ、さすがに魔装無しでこれをくらったらヤバイよね」
ウーノが一瞬安心したその時、爆煙の中から再びパルが突っ込んで来る。
「ぐうっ‼︎」
防御魔法で何とかパルの突撃を防いだウーノだったがパルの勢いは止まらず、そのままウーノを未だネムが放ち続けている火炎の渦に押し込んで行く。
「くっ、そうか! そうやって僕を火炎の渦に押し込むつもりかっ⁉︎ だ、だけどねっ‼︎」
ギリギリの所でパルの勢いを上にそらすウーノ。
「うにゃああっ! 失敗したのよおおおぉぉ〜‼︎」
嘆きながらウーノの後方の煙の中に消えて行くパル。
「フフッ、どうだい? 中々際どかったけど、防ぎきって……」
ウーノが勝ち誇っていると、後ろにそらした筈のパルが、また正面から突っ込んで来る。
「何いっ‼︎」
それでもなお防御魔法を展開しようとしたウーノだったが、何故か魔法は発動せず、飛行状態すら維持出来ずに体勢を崩してしまう。
「な、何だ⁉︎」
次の瞬間、遂にパルの突撃がウーノの腹に炸裂する。
「エンジェルクラッシュ・マックススピードなのよおお‼︎」
「ぐはああっ‼︎」
更にその勢いで押し込まれたウーノは、ネムの火炎の渦に飲み込まれてしまう。
「がっ‼︎」
「やったのよ‼︎ 遂に一撃くらわせてやったのよ‼︎」
「つあっ‼︎」
火炎に飲まれたウーノだったが、数メートル先まで飛ばされた所で、何とか自力で脱出する。
だがネム達の攻撃により、かなりのダメージを負った様子だった。
そんなウーノがフラフラと飛行しながらネム達の近くまで戻って来る。
「や、やるじゃない。まさかホントにこの僕に一撃入れるなんてね、びっくりだよ。けど、腑に落ちない点がいくつかある。ひとつは、いなした筈の突貫娘が間髪入れずにすぐまた正面から現れた事。あれはどっちも幻術なんかじゃなく、確かに実体だった。そしてもうひとつはあの瞬間、僕の魔法が発動しなかった事……」
「それは私達の仕業ですぅ」
「君達は⁉︎」
先程ウーノにより撃墜された筈のセラ達が、再びワイバーンに乗り飛行して来る。
「ネムちゃんの極大魔法が発動した時ぃ、最初に突撃したのはベールさんの作ったそっくりさんですぅ」
「クイーンの召喚獣、か……」
「そしてあなたの魔法を封じたのはぁ、私の魔法無効化の結界ですぅ」
「バカなっ⁉︎ 特殊能力系の魔法は、術者の魔力が相手の魔力を上回っていないと発動しない筈。確かに君はレベル7らしいが、僕の魔力が君に負けているとは思えない!」
「何気に失礼ですねぇ。でも残念ながらその通りですぅ。だからぁ、足りない魔力はユウちゃんに提供して頂きましたぁ」
「⁉︎ なるほどね。そういう事か……だけどあんな連携、その場のノリで出来るもんじゃない。いつの間に打ち合わせしたんだい?」
「この戦いが始まる前にぃ、ネムちゃん達に通信用の羽を渡しておいたんですぅ」
「私の幻術で隠してね」
「フッ、そうか。これで全て納得がいったよ」
「パル達のチームワークの勝利なのよ!」
「ぼっちのあなたには出来ない作戦でしょ⁉︎」
パル達の言葉にピクリとなるウーノ。
「勝利? ぼっち? 何を言ってるんだい? 今のはあくまで君達がお遊びのゲームに勝っただけだ。まあ約束だからユーキは返してあげるけどね」
ウーノがパチンと指を鳴らすと、ユーキを拘束していた魔法が解除される。
「取れた! う、うわっ! 危なっ!」
拘束が解かれた事で落下しそうになったユーキが、慌ててポールを掴む。
「あと何だっけ? ぼっち、とか言った? フフッ、僕はひとりで最強なのに、何で仲間なんか作る必要があるのさ? 弱い仲間なんか居たって、今回のように人質に取られたりして足手まといになるだけじゃないか」
「足手まといでごめんなさいねっ‼︎」
「仲間なんか居なくたって、君達より強いって事を証明してあげるよ! 魔装‼︎」
鎧という感じではなく、動きやすさを重視したような白金の魔装衣をまとうウーノ。
「さあ、ここからが本番だよ。死にものぐるいでかかって来なよ!」
「だったらネム達が、仲間の大切さを教えてあげるよ! 行くよ! ロリボッチ‼︎」
「いや、エースの原型無くなっちゃってるよ‼︎」
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