第59話 愛の切り札! ロリエース⁉︎

 辺りを見回すカール。


「ユーキ王が見当たらんのう。この上か?」

「あたし達の王に簡単に会える訳ないでしょ! ユーキはあんた達の王みたいに軽い娘じゃないのよ!」


「ホホッ、カオス殿が軽いのは否定せんがのう。共を付けずに単身敵地に行くようなお人じゃからな。では、邪魔したの」


 そう言い残し、影の中に沈んで行くカール。


「逃げるな‼︎」


 パティが杖を薙ぎ払うと、数本のアローズが床を移動する影目がけて飛んで行く。

 アローズが当たる寸前に影が立ち上がり、再びカールの姿に変わる。


「危ないのう。いきなり何をするんじゃ⁉︎」

「何あたしを無視して行こうとしてるのよ‼︎」

「わしの仕事はユーキ王をカオス殿の元へ連れて行く事じゃ。小娘の相手なんぞしてられんわい」

「そんな事、このあたしがやらせる訳ないでしょ! ウインドソード‼︎」


 風で作られた剣がカールに向かって飛んで行くが、カールは魔装具の具現化もせず、左の手の平から出した闇で風の剣を飲み込んでしまう。


「くっ! なら、バーニングファイアー‼︎」


 巨大な炎の塊がカールに襲いかかるが、またしてもカールの闇に飲み込まれてしまう。


「これで分かったじゃろう? 死にたくなければそこで大人しくしておれ」


 そう言って、また影の中に沈み込むカール。


「このおっ! あたしを無視すんなって言ってるでしょお‼︎ アイスフィールド‼︎」


 パティより広がった氷の輪がカールの消えた影に触れた瞬間、三度影が立ち上がりカールの姿に変わって行く。


「いい加減にせんか小娘。わしは忙しいんじゃ、構ってほしければ外に居るわしの部下達とでも遊んでおれ」

「ナメるんじゃないわよっ‼︎ サンダーボルト‼︎」


 パティより立ち昇った稲妻が弧を描き、カールへ落雷する。

 しかし、やはり全てカールから発する闇に飲み込まれて消滅してしまう。


「くっ! これもダメか!」

「雷系の魔法まで使いおるか。中々器用な娘じゃのう。じゃが解せんの。それだけ様々な属性の魔法を使いこなしながら、何故闇魔法だけ使わんのじゃ?」

「ぐっ」


 痛い所を突かれ、言い返せないパティ。


「わしが闇属性じゃから使わないだけか、それとも切り札に取ってあるのか?」

「う、うるさいわね! 闇魔法は師匠が教えてくれなかったのよ!」


「はて? 不思議な事もあるもんじゃ。お主の師匠は余程見る目が無いのか、それとも他に理由があるのか……お主、どう見ても闇属性じゃろう?」

「だ、誰が闇属性よ! あたしは風属性よ! か! ぜ!」


「何じゃ、お主風か?」

「そうよ‼︎」

「風邪をひいておるのならこんな所で遊んでおらんと、早く家に帰って安静にしとかんか! では、お大事にの」


 あくまでパティをスルーして行こうとするカールに怒り心頭のパティ。


「こ、このおお……ふっざけんなあああ‼︎」


 パティの怒りに呼応するように、パティの全身から黒いオーラが溢れ出す。

 そんなパティの黒いオーラを見て、ニヤリと笑うカール。


「ほれ見ぃ。やはり闇属性じゃろう?」



 パティがコメディの演出ではなく、リアルに闇のオーラを爆発させていた頃、気を失っていたユーキが目を覚ます。


「ん……やけに風が強……⁉︎」


 何とユーキは、パラス城の1番高い塔の屋根に付いているポールに縛り付けられていた。


「な、何じゃこりゃああああ‼︎」

「おや、目を覚ましたようだね」

「な、な、な、何で僕こんなとこ⁉︎ 君は⁉︎ みんなは⁉︎」


 状況が理解出来ず、少しパニックになっているユーキ。


「まあ落ち着きなよ。順を追って説明するからさ」


 ウーノの説明により、ようやく己が置かれた立場を理解したユーキ。


「はあ、ああそう……つまりまた僕はさらわれた訳だ」


 自分自身が情けなくなり酷く落胆するユーキ。


「そういう事。だから景品は大人しくそこで見ててよ」

「誰が景品かっ‼︎」


「もうすぐあの娘達が君を取り返しに来る筈だ。ユーキ。君が僕の物になるって約束するなら、あの娘達は無傷で逃してあげるよ?」

「ならないよ! そもそもこんな無理矢理誘拐しておいて、条件突き付けて自分のものにしようとか、そんなんで女の子が言う事聞く訳ないでしょ!」


「こういうのが好きな娘も結構居るんだけどな〜? なら……」


 宙に浮いていたウーノが、ユーキにグッと顔を近付ける。


「優しくプロポーズすれば、君は僕と結婚してくれるのかい?」

「んなっ‼︎ す、す、するかあ‼︎」


 顔を真っ赤にしながら否定するユーキ。


「ほら、やっぱり力尽くで手に入れるしかないじゃないか。まあ、場合によっては君には少々残酷な光景を見てもらう事になる。そうすれば考えも変わる筈だ」

「このぉ……ナンバーズのトップだかなんだか知らないけど、あんまりネム達をナメない方がいいよ? ベールさんもセラも居るし、パル達だって凄く強いんだから」


「ふ〜ん。じゃあもしあの娘達が僕を楽しませてくれるぐらいに強かったなら、あの娘達も嫁候補に入れてあげよう」


 ウーノの言葉にドン引きするユーキ。


「ロリコン……」

「ロリコンじゃないよ! 僕にとっては年齢なんて関係ないんだ。あくまで基準は強いかどうかなんだから」


「年齢関係ないって言った〜! やっぱりロリコンだ〜!」

「違うって言ってるだろ〜! 嫁候補って言ったんだ。今すぐどうこうするつもりは無いよ!」


「間違いなく強いベールさんには反応しないで幼女のネム達にだけ反応したじゃないか〜! ネム〜‼︎ パル〜‼︎ チル〜‼︎ 来ちゃダメええ‼︎ キ◯アエースじゃなくてロリエースがいるぞおお‼︎」

「いや、変なあだ名付けるのやめてくれるかなっ‼︎」




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