第51話 リアル召喚シスターズ誕生!
ベールの話を聞く前に、治療しようとするセラ。
「話の前にぃ、まずはあなたの体を治療させてくださいねぇ」
だが、右手を前に出しセラを制止するベール。
「いえ、お気持ちは嬉しいのですが……」
「どうしましたぁ?」
「私も召喚士の端くれ。今まであらゆるヒーラーを生み出しては治療を試みました。しかしケガを治す事は出来ても、結局私のこの病を治す事は出来ませんでした。今回あなた方をお招きしたのは、この命が尽きる前に娘達に会いたかったのと、私亡き後、娘達の事をあなた方に直接お願いしたくて……」
目を閉じ、熱く語るベールに困惑するセラ。
ベールを指差しながら首を傾げ、無言でユーキに助けを求めるセラ。
それに応えるように、ベールに手をかざすようなジェスチャーをして頷くユーキ。
「しかし私とて、何の礼も無しにただ娘達の面倒を見てくれなどと図々しい事は申しません」
ベールの語りを無視して勝手にベールの治療を始めるセラ。
「私に残された全魔力と全生命力をかけて、ひとりでも多くのパラス兵を打ち倒してご覧にいれましょう。ですからどうか娘達の事、よろしくお願いいたします!」
そう言ってユーキ達に深々と頭を下げるベール。
「う〜ん。面倒見てあげるのはいいんだけど、やっぱり母親が側に居てあげるのが1番いいんじゃない?」
「わ、私だって出来る事ならそうした……い?」
己の体の異変に気付くベール。
「それでも出来ませんかぁ?」
「え⁉︎ え⁉︎ あっれええええ⁉︎」
腕や首など、上半身を色々動かしてみたベールが、恐る恐るベッドから降りて更に屈伸運動などのあらゆるストレッチを試した後、ようやく自分の体が全快した事を悟る。
「治って……る?」
「ハイぃ、完全にスッキリ、キレイさっぱり治ってますよぉ」
「嘘おおおおおおん‼︎」
落ち着いたベールがセラの手を握りながら、熱く礼を述べる。
「本当に……本当に……ありがとうございます! これで、娘達を悲しませずに済みます! また娘達と一緒に暮らせます! 本当にありがとうございます!」
「いいんですよぉ。あんまり言われると照れくさいからやめてくださいねぇ」
だが病が治ったものの、腑に落ちない様子のベール。
「でも、何で治せたんですか? ああいえ! セラさんが最高峰のヒーラーである事は勿論存じています。しかし、私とてナンバークイーンの名を持つ召喚士。その私がどうやっても治せなかった病をいとも簡単に……」
「んふふ〜。それはおそらくぅ、無意識的にあなたの中にぃ、自分の病気は治らないものっていう想いがどこかにあったからじゃないですかぁ?」
「そ、それは……言われてみれば、確かにそうかもしれませんね」
「魔法っていうのはぁ、思い込みによる所が大きいですからねぇ」
「でも、それでも今まで生きてこられたのは、パルとチルの事が心配で、まだ死ねないっていう強い想いがあったからじゃないの?」
「そうですねぇ、治療する前にベールさんが安心しちゃってたらぁ、危ないとこでしたぁ。まぁ死んだら死んだでフィーちゃんに無理矢理生き返らせられるんですけどねぇ」
「そだね。フフフ」
「んふふ〜」
「何て、凄い娘達なの……」
ベールの治療を終えたユーキ達はまだ時間もあるので、とりあえずそのまま朝まで眠る事にした。
そして朝を迎え、ぐっすり眠ったパルとチルが目をこすりながら起きて来た。
「いつのまにか寝ちゃってたのよ」
「出オチなの〜」
「寝オチなのよ!」
「お早う、パル、チル。よく眠れた?」
「え⁉︎ か、母、様……?」
「本物の母様が立ってるの〜」
「もうすぐ朝ごはん出来るから待っててね?」
台所に立ち、朝ごはんの支度をしているベールを見て驚くパルとチル。
その元気そうな姿を見て、泣きながらベールに飛び込んで行くパルとチル。
「母様あああ‼︎」
「うええええん‼︎」
そんなパルとチルを、優しい表情でそっと抱きしめるベール。
「長い間心配かけてごめんなさいね。いっぱい苦労かけてごめんなさいね。側に居てあげられなくてごめんなさいね……これからは、ずっと一緒だからね……」
「まったくなのよ! 今度パル達を泣かせたら許さないのよ!」
「市中引き回しの上、打ち首、獄門なの〜」
「それはやり過ぎなのよ!」
その様子を部屋の外からそっと見つめているユーキ達。
「良かった……ありがとね、セラ」
「私は私に出来る普通の事をしただけですぅ」
「パル、チル……いいな〜」
「ネムにはロロがついてるのです。ロロを母親だと思って遠慮なく甘えてくるのです」
「……いい。甘えるならユーキ姉様がいい」
「はうっ! 雰囲気に流されない頑固な娘なのです」
その後、ユーキ達の存在に気付いたベールが部屋に招き入れる。
「ああ、皆さんお早うございます。もうすぐ朝ごはんが出来ますのでご一緒にどうぞ」
「あ、うん。ありがと」
みんなで美味しく朝ごはんを食べた後、ベールが改めてユーキ達に礼を述べる。
「こうやって娘達と普通にご飯を食べるなんて事は、もう2度と出来ないと思ってました。皆さん、この度は本当にありがとうございました」
「いや、お礼はもういいからさ。それより、ベールさん達はこれからどうするの? ベールさんが元気になった以上、もうパラス軍に居る理由も無いと思うんだけど?」
「ハイ。私達3人はパラス軍から抜けるつもりです」
「そっか。良かった……うん、それがいいよ」
サーティーンナンバーズ、ナンバークイーン離脱。
これにより、残るナンバーズはあと3人となる。
「私が自由に動けるようになった今、私達も王族としてシェーレ復興の為に働きたいと思います!」
「え⁉︎」
「へ⁉︎」
ベールの言葉に、その場に居た全員が固まっていた。
「あ、あの……ベールさん? 今、王族と仰いました?」
「言いましたよ?」
「誰が?」
「私が」
「王族?」
「王族」
「どこの?」
「シェーレの」
「ええええええっ⁉︎」
「で、でもだって、パル達はそんな事ひと言も……」
「パ、パル達だって知らなかったのよ! パル達は森の中のボロ小屋で産まれ育ったのよ! そんな事、夢にも思わなかったのよ!」
「カーテンのシミ抜きなの〜」
「もしかしてだけど、青天の霹靂なのよ!」
「実は私は、姉プラムの夫……つまりはシェーレ国の国王ファルコの、いわゆる第二夫人にあたります。まあ第二夫人とは言っても立場は第一夫人の姉と何ら変わりはありませんでしたけどね」
「シェーレも一夫多妻制なんだ……」
「もっとも、私は娘を身ごもってすぐに病にかかってしまったので、療養の為に城を離れ、自然あふれる森の中に移り住みました。生活物資は城から支給されましたので何とか生きて行けましたしね」
(あ、やらかしてお城を追い出された訳じゃないんだ……)
「え⁉︎ ちょっと待って! それはつまり、パル達とネムの父親が同じって事だよね? それって……」
「3人は腹違いの実の姉妹って事ですぅ」
「ま、まさかまさかのネム姉様は本当の姉様だったのよ……」
「ネムの、妹……」
「ネム姉様お菓子買ってなの〜」
「チルは動じないにも程があるのよ!」
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