第44話 何故か合体すると強くなる理屈
魔法障壁を破壊したラケルが、すぐさまパルの元に駆け寄って行く。
「ラケル姉様⁉︎」
「パル‼︎ ボクのハンマーならあいつを倒せるけど、さっき魔法障壁を壊すのに溜めた魔力をほとんど使っちゃったんだ。だからパルの力を貸して!」
「そ、それはいいけど、どうするのよ⁉︎ パルだってチルからもらった魔力が少し残ってるだけなのよ!」
「合体するよ!」
「ふえっ⁉︎ な、何言ってるのよ⁉︎ 今パルは、チルと奇跡の合体を果たしたばかりなのよ! 戦隊ロボじゃあるまいし、そんなにポンポン合体出来ないのよ!」
「否定的な言葉ばかり吐かないっ‼︎ 出来ると強く思えば何でも出来る! それがこの世界の真理だよ! だからチルとも合体出来たんでしょ⁉︎」
「そ、それはそうなのよ……ああもうっ! ならやってやるぜ! なのよ!」
パルが魔方陣を描くと同時にパルとラケルが光に包まれ、光の粒子となったラケルがパルと重なりその光が消えると、更に巨体になったハンマーを持ち、また少し成長した姿のパルが現れる。
「また合体しましたぁ⁉︎」
「2段階目の合体……まるでネムの獣魔装みたい……」
「キシャアアアア‼︎」
長い尻尾を振り回して来るバジリスク。
しかしその尻尾をハンマーで打ち返すパル。
「シャアア‼︎」
打ち返された尻尾を勢いのまま大きく空に振り上げ、チルを押し潰したようにパル目がけて振り下ろすバジリスク。
「そんなくだらない技を……パル達に見せるんじゃないのよ‼︎」
今度はハンマーを上に向けて振り上げるパル。
ハンマーによって打ち上げられたバジリスクの尻尾が激しく跳ね上がり、バジリスクの体ごと倒してしまう。
「とどめ‼︎」
バジリスクの全長を遥かに超える高さまでジャンプしたパルが、空中でくるりと一回転して、ハンマーを構えたままバジリスクの頭に急降下して来る。
「ジャッジメントぉ! ハンマーあああ‼︎」
バジリスクの頭にハンマーが直撃すると、その箇所からバジリスクの体が魔力の粒子へと変わって行く。
「ギジャアアアア‼︎」
醜い声を上げながら、バジリスクが完全に消滅する。
それを見ていたジョーカーが、またしても絶句していた。
「な……何ですって……」
「パルちゃんもバジリスクを倒しましたよ!」
「倒したな!」
「倒したぞ!」
「さあどうする⁉︎ 貴様の目論見は全て外れたようだな? このまま我らBL隊全員を相手にするか? それとも大人しく降伏するか⁉︎」
アイバーンの問いに、うつむいたまま笑うジョーカー。
「フ、フフ……降伏ですって? これしきの事でこの私が降伏ですって?」
スッと顔を上げ、姿勢を正すジョーカー。
「まあいいでしょう。ナンバーズもまだ残っている事ですし、今日の所は引き上げるとしましょう」
そう言ってフワリと浮き上がり、飛び去って行くジョーカー。
「逃がしません!」
「よすんだ! メルク!」
弓を構えたメルクを制止するアイバーン。
「アイバーン様⁉︎」
「今、奴と戦ってもこちらの被害が増えるばかりだ。一度体制を立て直した方がいい」
「ハ、ハイ、分かりました」
魔装を解除してユーキ達の元に戻るアイバーン達。
ジョーカーが去った事により、ネムを囲っていた魔法障壁も消滅していた。
3体合体していたパルは、元のパル、ラケル、そして未だ思念体のチルの3人に分かれていた。
「チル! いつまでも漂ってないで、早く元の体に戻るのよ!」
「これはこれでフヨフヨしてて楽しいの〜」
「遊んでるんじゃないのよ!」
「でもさっきから戻ろうとしてるけど戻れないの〜」
「え⁉︎ それじゃあ……」
「そりゃそうですよぉ。肉体が使用不要になったから魂が抜け出た訳ですからねぇ」
「先に肉体を治す必要があります」
全員がパル達の元に集まって来ていた。
「お願いなのよ! 方法があるならチルを助けてほしいのよ! お礼にパルが出来る事ならなんだってやるのよ!」
「そうか。それならユーキの奴隷となり一生忠誠をフニャ!」
「テトは黙ってて」
妙な事を口走る猫師匠の口を、後ろから手でふさぐユーキ。
「奴隷でも何でもなるのよ! 靴を舐めろと言われたら舐めるのよ! ずっと裸エプロンで居ろと言われたら居るのよ!」
「いや言わないからっ‼︎」
「良かったわねユーキ。夢が叶って」
「そんな夢持ってないわああっ‼︎」
しかし、パルの熱はまだ冷めなかった。
「どんな恥ずかしいコスチュームでも着るのよ!」
「別に普通の格好でいいから」
「外に出る時は首輪を付けてくれていいのよ!」
「ちょっとパル⁉︎ 段々変な方向に行ってるよ⁉︎」
「目隠しをして激しく罵ってくれていいのよ‼︎」
「いやむしろ望んでるのっ⁉︎」
とりあえず落ち着きを取り戻したパル。
「まったく! 奴隷だの首輪だの、そんなくだらない事はいいから! ちゃんとチルは助けてあげるから! その代わり、ひとつだけ条件があるからね」
「赤ちゃんプレイでも何でも……」
「それはもういいから‼︎ 話を聞いてた感じだと、パルとチルってシェーレの出身なんだよね?」
「そ、そうなのよ……」
「その2人が何で今パラスに居るのか。何で好きでもないのに戦っているのか。その辺の事、ちゃんと聞かせてくれる?」
「……わ、分かったのよ。チルを助けてくれたら全部話すのよ」
「うん、ありがと。じゃあ生き返らせてあげる……とは言っても今の僕では魔力調整がうまく出来ないから、セラ! フィー! お願い出来る⁉︎」
「はぁい! セラにお任せぇ!」
「シャル様の頼みなら断固断りますが、ユーキさんの頼みならば喜んで」
「どう言う意味ニャア‼︎」
そして、セラとフィー2人の能力により、チルは無事に生き返ったのだった。
「チルううう‼︎」
涙目でチルに抱きつくパル。
「重力とパルの熱さがうっとうしいの〜」
「生き返って早々毒づいてんじゃないのよ‼︎」
サーティーンナンバーズ、ナンバー8パル、ナンバー7チル、撃破。
残るナンバーズは、あと4人。
しかし、全て丸く収まった筈なのに、何故か不機嫌そうな顔のネム。
「どしたのネム? 何か怒ってる?」
「魔法障壁に囲まれた時ユーキ姉様、ネムよりパル達を助けに行った……」
「ええ⁉︎ い、いやあれは……」
「パル達の方が愛されてるって事なのよ」
「チル達の方が可愛いの〜」
「ムカッ!」
「いやそうじゃなくて! ネムだったら1人でも何とかなるかな〜って思ったから……」
「ネムは信頼されてるって事?」
「そ、そういう事」
「フフンッ!」
胸を張ってドヤ顔になるネム。
「ユーキ姉様はネム姉様を傷付けないように気を使ってるのよ!」
「そんな事も分からないなんて、ネム姉様お子様なの〜」
「むうっ! そんな事無いもんっ! ネム大人だもんっ! 夜中に1人でトイレにだって行けるもんっ!」
「パルだってシャンプーハット付けずに、頭洗えるのよ!」
「チルは歯を磨く時ウェッてならないの〜」
「うん。みんな子供だね」
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