第33話 食べると言っても変な意味ではない
パルとチルがリーゼル城で寝泊まりするようになってから数日。
すっかりユーキ達になついたパルとチル。
ゲーム以外の時間は、同じ召喚士であるネムと手合わせする事が多かった。
「チル! そっちから来たのよ!」
「迎撃するの〜! フェンリル召喚なの〜!」
「ほら! あっちからもヘルハウンドが来るのよ!」
「サイクロプス召喚なの〜!」
「空からも来たのよ! 対空防御、何やってんのよ!」
「パル、うるさいの〜! 口を動かすヒマがあったら早く召喚獣を出すの〜! 供給が追いついてないの〜!」
「し、仕方ないのよ! 描き貯めてた召喚獣は全部使っちゃったのよ! 新たに描くには時間がかかるのよ!」
「もう出来損ないでもいいの〜! よこすの〜!」
「そ、それ! まだ頭しか描けてないのよ〜‼︎」
ガーゴイルの頭が転がった後、ネムの操る召喚獣の集中攻撃を受けて吹き飛ぶパルとチル。
「スプラッター映画なのよ〜‼︎」
「良い子は見ちゃダメなの〜‼︎」
その後、敗因についてもめるパルとチル。
「まだ未完成だったのよ! 召喚するのが早いのよ!」
「パルがゲームばっかりやって、召喚獣を描くのを怠ったから悪いの〜」
「チ、チルだっていつもご飯食べてばかりじゃないのよ!」
「チルの食事は魔力の増加に繋がるの〜。ちゃんと意味のある行動なの〜。パルのゲームはただの時間の浪費なの〜」
「あんた今、全世界のゲームファンを敵に回したのよ〜!」
チルの口を掴んで横に引っ張るパル。
「はっはいへ〜ふははいはっへうひほあひょうひょうひゃひょ〜(やっぱりゲームばかりやってる人は凶暴なの〜)」
「パルが凶暴なのは生まれつきなのよ!」
そんな2人のいつものケンカを、微笑ましく見ているユーキとパティ。
「あの2人、ホント仲良いな〜。まるでパティとセラのやり取りを見てるみたい」
「ん⁉︎ ちょっと待ってよユーキ⁉︎ それってもしかして、あたしとセラの仲が良いって言いたいの⁉︎」
「実際仲良いじゃない」
「やめてよね! 誰があんな腹黒糸目ゆるキャラと仲が良いもんですか!」
「誰がゆるキャラですかぁ? 私はパティちゃんの事を親友だと思ってますよぉ」
そこへ現れたのは、いち早くリーゼルに到着したセラ、レノ、ノイン、リマの4人だった。
「セラ! レノ! と、後の2人は誰?」
「よくぞ聞いてくださいましたわ! わたくしはサーティーンナンバーズの1人、ナンバー9のノインですわ!」
「同じく、ナンバー5のリマだよ」
「な、何でナンバーズと仲良く一緒に居るの⁉︎ ってこっちも人の事は言えないか」
そう言って、パル達の方を見るユーキ。
ユーキ達に説明を始めるセラ。
「簡単に言えばぁ、私の魔法により洗の……いや、戦争を嫌う純真無垢な心に変わったんですぅ」
「今、洗脳って言いかけたわよね?」
「噛んだだけですぅ」
「言いかけたわよね?」
「噛んだだけですぅ」
「誤魔化したわよね?」
「あまりしつこいとパティちゃんを洗脳しますよぉ?」
そして掴み合いのケンカに発展するパティとセラ。
「あたしにかけれるものならかけてみなさいよおお‼︎」
「パティちゃんみたいに根っからの悪魔にはかからないんですぅ!」
「誰が悪魔ですってえ‼︎」
「比喩的表現だと思ってたら本当に魔族の血を引いてると判明したばかりですぅ!」
「うん、やっぱり仲良しだね」
パティとセラがケンカしている事など知らず、反省会をしているネム達。
「パルは普段から充分に絵のストックを持ってないとダメ」
「反省してるのよ」
「チルは召喚する時に集中し過ぎて周りが見えてないから気を付けるように」
「気を付けるの〜」
「それにしても、これだけの数の魔獣を1人で召喚して操るなんて、ネム姉様凄いのよ! パル達は2人の魔力を合わせてやっとなのよ」
「エヘン! ネムの魔力は無限だから」
「魔獣製造機なの〜。商売にしたらボロ儲けなの〜」
「それは良いアイデアなのです。戦争してる両方の国に売りつければ2倍の儲けなのです」
「死の商人みたいな発想やめなさい!」
そこへ、パティとセラの2人を引きずりながらネム達の近くにやって来たユーキ。
「ユーキ姉様⁉︎ あ! セラ姉様とレノ兄様も⁉︎」
「ネムちゃんお久しぶりですぅ」
セラ達が久々の再会を果たした時、パル達とノイン達がお互いの存在に気付いた。
「あらあっ⁉︎ パルとチルじゃありませんの? お2人もBL隊の皆様に協力するんですの⁉︎」
「ノ、ノインさんとリマなのよ⁉︎ 何で2人共敵と一緒に居るのよ⁉︎」
「お前が言うな大賞なの〜」
そしてお互いに状況説明が行われた。
「なるほどぉ、事情は分かりましたぁ。それにしてもぉ、その2人とても美味しそうな名前ですねぇ」
パルとチルを見ておかしな事を言い出すセラ。
「ど、どこがなのよ? 特に変わった名前でもないのよ」
「だってぇ、パルメザンチーズって言うんでしょぉ?」
「だ、誰がチーズなのよ! パルとチルなのよ! 名前を合体変形させるんじゃないのよ!」
「合体変形は男のロマンなの〜」
「それを小娘が言うんじゃないのよ!」
「でもパルは美味しくなかったの〜」
「それは食べた事がある者が言うセリフなのよ!」
「寝てる時に噛み付いたけど、ただ酸っぱいだけだったの〜」
「魔獣に噛まれまくる夢の原因が、今分かったのよ!」
「だったらぁ、ユウちゃんならダシが出て美味しいですよぉ」
「ち、ちょっとセラ! 何言って⁉︎」
「本当なの〜? チルも食べてみたいの〜」
「や、やめっ! く、来るなっ! セラの悪い冗談だから! 美味しくなんてないから!」
「いいえぇ、確かに噛み付いて味を確かめましたからぁ。ちょっとしゃぶるだけですからぁ」
「人をスルメみたいに、ひゃうっ‼︎」
既にユーキの腕に食らいついているチル。
「ガジガジしたいの〜」
「いやああ‼︎ やめてえ‼︎ 食べないでええ‼︎」
「ユ、ユーキ! あたしにも食べさせて!」
「パティは何か意味合いが違うから絶対やだああ‼︎」
「ちょっと舐め回すだけだから〜!」
「言い方が卑猥だからやだああ‼︎」
その後しばらく、セラ、チル、パティの3人に追いかけ回されたユーキであった。
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