第34話 死亡フラグ? 何それ?

 ユーキがセラ達に追いかけ回されていた頃、パラス城の玉座に座っているカオスの元に、ピエロのような仮面を付けた男? が現れる。


「例の双子姉妹、戦いもせずにマナ王女達と戯れているようですが、よろしいのですか?」

「ジョーカーか……構わんさ。元々この戦いは覚醒した最強のアイリスと戦う為に始めたが、他にもお互いの駒を刺激し合ってより強い戦士を作り出す事も目的のひとつだったからな」


「そして成長した戦士とカオス様が戦う……ですか?」

「そういう事だ。だからどちらの戦士が勝とうが負けようが別に構わんのさ。敵であれ味方であれ、結果的に俺を楽しませてくれる程の戦士が生まれればそれでいい」


「ですが、このままだとあの姉妹、全く戦わないまま敵に寝返る可能性もありますよ?」

「いや、それは無い。あの女がこちらに居る限り、双子姉妹が我らを裏切る事は絶対に無い」

「例の女、ですか……だと良いんですがね。フフッ、では私は再び偵察に戻るとします。失礼いたします」


 そう言って、スゥッと闇に消えて行くジョーカー。


(フンッ。何を考えているか分からない奴だが、実力者である事は間違いない。フッ、敵となって襲い掛かって来るならば、それもまた一興)


 その後、城の廊下でジョーカーとある女性がすれ違う。


「ナンバーズの私にあいさつも無しとはいいご身分ね? ジョーカー」

「ああ、これはこれは! クイーンでしたか⁉︎ また姿が変わられていたので気付きませんでしたよ」


「白々しい。そんな事も分からない程度の実力では無いでしょうに」

「いえいえ、本当ですよ。さすがは元シェーレの王族。召喚技術に関しては……」


 次の瞬間、クイーンの横薙ぎの手刀がジョーカーに襲いかかるが、それを寸前でかわし距離を取るジョーカー。


「その事は言うなと言った筈よ⁉︎」

「これは失礼いたしました。以後気をつけます」

「フンッ」


 少しおどけたような仕草で頭を下げるジョーカー。

 そんなジョーカーをいちべつして去って行くクイーン。


(フフッ、一体どれだけの傀儡を持っているのやら)



 ユーキがセラ達に舐め回されてボロボロになった翌日、更にアイバーン達、猫師匠達もリーゼルに到着して、遂にBL隊全員がリーゼルに集結した。


「待たせたね、ユーキ君」

「ご無事ですか⁉︎ ユーキさん」

「俺様が来たからにはもう何も恐れる事は無いぞ! マナ王女!」


「みんな遥々ご苦労様! こっちは平和そのものだったから大丈夫だよ」


「さすがにずっと飛んで疲れたニャ。少し眠らせてほしいニャ」

「そのまま永遠に目覚めなければいいのに……」

「フィー⁉︎ 永遠に目覚めなければいいとはどういう事ニャ⁉︎」

「いいえ。アイ◯ンマンの映画が見たいと言ったんです」

「今頃⁉︎」


「フフ、テト達も相変わらずだね」


 再開を喜ぶユーキ達とは裏腹に、集結したBL隊を見て焦るパルとチル。


「マ、マズイのよ! BL隊が全員揃っちゃったのよ! それはつまり先行したナンバーズがパル達以外全滅したって事なのよ! パル達、とてつもなく不利な状況なのよ!」

「八宝菜なの〜」

「もしかして八方塞がりなのよ!」


 そんなパル達を見てアイバーンがユーキに質問する。


「ところでユーキ君。何やら見慣れない娘達が居るようだが、彼女達は?」

「ああ、紹介するね。この娘達は……」


 アイバーン達に状況説明をするユーキ。


「なるほど。つまりそちらのノインとリマの2人はセラ君の魔法により人畜無害の存在になったが……」

「そっちのパルミジャーノ・レッジャーノ姉妹の方はいつ敵に回るかも分からない状態って事ですね?」


「だから人をチーズみたいに言うんじゃ無いのよ!」

「それだとチルの名前が入ってなくてイヤなの〜」

「つっこむとこそこじゃ無いのよ!」


「大丈夫だよ! この娘達は悪い娘達じゃないから! 僕達の寝込みを襲うなんて事は絶対にしないから!」

「先に釘を刺されちゃったの〜」

「元よりそんな卑怯な真似はしないのよ!」


 ジロリとパティを見るユーキ。


「むしろ僕にとって危険な存在はパティの方だからねっ!」

「いやぁねぇ。あたしがユーキに危害を加える訳ないでしょ〜⁉︎ ただ2人の愛を育もうとしてるだけじゃない〜」

「その言い方がもう危険なのっ!」


 ユーキの説得により、どうにか納得したアイバーン。


「まあ確かに、ラケル君も道中特に襲って来るような事も無かったようだし、今回もユーキ君の眼力を信用するとしようか」

「うん。ありがと、アイ君」


 だが、どうにも信用しきれていないブレンが反論する。


「しかしラケルはともかく、その双子は仮にもナンバーズなんだろう? 本当に仲間にして大丈夫なのか?」

「仲間⁉︎」


 ブレンの仲間という言葉に反応するパル。


「仲間じゃ無いのよ‼︎」

「パル⁉︎」


 今まで穏やかな表情をしていたパルが、急に怒りを露わにしてまくしたてる。


「あの時は魔石も魔力もお金も無くて、仕方なく付いて来ただけなのよ‼︎ パル達の目的はあくまでBL隊を叩き潰す事なのよ‼︎ 何なら今すぐ全員を相手にしてやってもいいのよ‼︎」


 険しい顔のパルに比べて相変わらずのチル。


「それは幾ら何でも無茶なの〜。魔力は回復したけど、召喚しようにも魔石が無いの〜。それに圧倒的に数で負けてるの〜。今戦っても何も出来ずに袋なの〜」

「そ、そんな事は言われなくても分かってるのよ‼︎ だ、だけどこのままじゃ……居心地良すぎて本来の目的まで忘れてしまいそうになるのよ‼︎」


 パルの怒りと悲しみが入り混じった何とも言えない表情を見て、静まり返るユーキ達。


「パル……」


 何かを決意したユーキが口を開く。


「よし分かった! パル達にも何か譲れない理由があるんだね? 2人の事情も知らずに仲間に引き込もうとしてゴメン‼︎」

「ユーキ、姉様……」


「じゃあ戦おう!」

「え⁉︎」

「勿論命の取り合いは無し。ちゃんとルールを決めて正々堂々力一杯戦おう! それでどっちが勝っても負けても恨みっこ無し! 2人共、それでいいでしょ?」


「そ、それは……ちゃんと戦ってくれるなら、パルはいいのよ……」

「チルも賛成なの〜」

「よし。じゃあ2対2にしたいからこっちからは〜」


 ユーキが誰を出すか考えていると、ネムが名乗りを上げる。


「ユーキ姉様! 2人の相手はネムとロロに任せて!」

「ネム⁉︎ 確かにネムなら同じ召喚士だから良い戦いになると思うけど、大丈夫? 命の取り合いは無しだよ?」

「大丈夫。絶対に死なせないし死なない!」

「みんなロロが守るのです!」

「そっか……分かった! じゃあネムとロロに任せるね」

「うん、任せて」


 その後戦う4人プラスユーキの5人で、決戦の日時とルールが決められた。

 そのルールとは、お互いが白魔石1個、紅蓮石1個、蒼天石2個、紫雲石3個、翡翠石3個の計10個のランクの違う魔石を使い、それぞれが自由に魔獣を召喚。

 召喚した魔獣を全て倒されるか、誰か1人でも降参した側の敗北となる。

 倒された召喚獣の魔石を使って再び召喚するのは禁止。

 なお、相手を殺さない限りは、召喚士への直接攻撃も可能である。

 因みに決戦に使用される各種の魔石は公平を期す為、魔石の一大産出国でもあるリーゼルがサイズ等をキチンと揃えて提供する事になった。

 そして、その決戦の場は。


「じゃあ2日後の午前10時。シェーレ城の前で待ってるのよ!」

「分かった」

「リーゼルの美味しいご飯が名残惜しいの〜」

「すぐ料理してあげるから手を洗って待っているのです」

「洗うのは首だけど、何か文章が繋がってる〜⁉︎」


 決戦の準備の為、提供された魔石を抱え一足先にシェーレ城に向かうパルとチル。

 だが急に立ち止まり、マルス国王とレナ王妃の元に駆け寄るパルとチル。


「み、短い間だったけど、お世話になったのよ! な、何と言うか……まあ、た、楽しかったのよ……」

「ご飯とても美味しかったの〜。余は満足なの〜」


 頬を染めながら、律儀に礼を言うパルとチル。


「うおおっ‼︎ 行かないでおくれええ‼︎ パルちゃん、チルちゃん! このまま私達の娘にいい‼︎」

「あなた、無茶言わないの! この娘達にだって事情はあるんですから〜」

「うおお〜‼︎ 嫌だあああ〜‼︎」


 スッとしゃがんでパル達と目線を合わせ、優しい表情で話しかけるレナ王妃。


「やらなきゃいけない事をやってスッキリしたら、またいつでも遊びにいらっしゃいね〜。それと〜、2人に娘になってほしいっていうのは、私も同意見ですからね〜」


 そう言って優しく2人を抱きしめるレナ王妃。


「こ、この戦いが終わって生き残れたなら……ま、また来てあげてもいい、のよ……」

「必ずまたご飯食べに来るの〜」


 そんな光景を見ているユーキ達。


「ほらあ! 律儀にちゃんとお礼まで言って〜! やっぱり良い娘達じゃないか〜!」

「まあね。でも何だかあの娘達……」

「何?」

「思いっきり死亡フラグが立った気がするわね」

「もうパティ! やな事言わないでよね〜!」






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