第24話 微生物でも命は命

 ナンバーズの先遣隊を撃破したトゥマールのアイバーン、ブレン、メルクの3人は、捕縛したナンバーズより聞き出した情報等を元に、もうトゥマールへの襲撃は無いと判断して、ユーキの待つリーゼルに向かう事を決めるのだった。


「敵の言葉を信じて大丈夫でしょうか? アイバーン様」

「ふむ……100パーセント信用出来る訳ではないが、シャル様達も襲撃されたという報告を受けた。一応警戒してそれぞれの国の防衛にあたったが、やはり奴らはカオスの言った通り、国ではなく我々個人を狙って来ているようだ。その証拠に、奴らは軍を動かさずに単体でやって来ている」


「ならば俺様達がどこに居ようと、敵の方から来てくれるという事だな⁉︎」

「そういう事だ。もっとも、既に戦ったメルク、ブレン、フィー君、シャル様の4人の所には、おそらくもう襲撃は無いと思っていいだろう」


「何ぃっ⁉︎ 俺様の出番はもう終わりだと言うのかああ⁉︎」

「ぼ、僕はちょっと安心しましたけど……」


「現時点の情報ではまだナンバーズは8人残っている。対して我らBL隊で戦っていないのは、ロロ君を含めてもあと7人」

「カオスも入れたらこちらが不利ですね」


「なぁに! こちらは何人でもいいとカオス自身が言ったのだ。ならばお言葉に甘えて、ナンバーズ1人に対し数人がかりで行けばいいだけの話だ」

「うむ……アイバーンの言う通りだ! これはれっきとした戦争なんだ。ならば、卑怯などとは言ってられないからな!」

「そう、ですね……」


 その頃、グレールの街を半壊させてオルドにこっ酷く怒られた猫師匠とフィーの2人は、半ば街の人たちに追い出されるようにしてグレールを後にしていた。


「オルドの奴! せっかく生き返らせてやったのに、あんなに怒る事ないニャ!」

「完全に息を引き取るまで治療もせず放置してましたからね」


「街の連中だってそうニャ! あたし達がナンバーズから守ってやったって言うのに、追い出すなんてあんまりニャ!」

「私達が居なければ、街は無傷で済んだでしょうけどね」


「フィー! さっきからお前はどっちの味方ニャ⁉︎」

「無論、シャル様……」

「分かってるならいいニャ」


「……以外の全ての生命の味方です」

「フニャッ⁉︎ 以外って、じゃああたしは敵であるパラス軍以下かニャ⁉︎」

「シャル様以外の全ての生命って言ったでしょう? ゾウリムシやアメーバ以下です」

「微生物以下⁉︎」


 猫師匠とフィーがいつものやり取りをしながらリーゼルに向かって飛行していた頃、ヴェルンに居るセラとレノの前に、また新たなナンバーズが現れていた。

 目の前に現れた少年に質問するレノ。


「お前がナンバーズ、と言う奴か?」

「そう。僕はサーティーンナンバーズの1人、ナンバー5のリマだよ」

「そうか、俺は……」

「ああ、言わなくても分かってるよ! ヴェルン国王子。雷使いのレノでしょ?」


「かつてはパラスの族国だったヴェルンの事は、さすがに分かっているか」

「ヴェルンって言うより、あんた達BL隊とか言うメンバーの事はちゃんと、調べたからね。あんたはマナ王女の元婚約者でドMの変態で、亀みたいに動きが遅くて守る事しか能が無くて、妹のセラちゃんにまでレベルで大きく差を付けられた、メンバーの中で最弱でお荷物なレノさんでしょ?」


 リマの言葉にピクリとなるレノ。


「あんたみたいな最弱の相手は、こっちも最弱のバーダとかトレス辺りにやらせればいいのに、あいつら勝手にフライングして出て行っちゃうし、スーの奴はカオス様に言われてグレールに行っちゃって結局僕が属性の関係もあってあんたの相手をしろってカオス様に言われて仕方なく来たけど、どうせやるならレベル7のセラちゃんとやりたかったな〜! ヒーラーとはいえ、同じレベル7なら面白い戦いが出来たと思うんだ〜。ねえ、あんたもそう思うでしょ⁉︎」


「貴様にひとつ、いい事を教えやろう」

「ん? いい事って何?」

「貴様のように無駄によく喋る奴は、大体雑魚キャラと決まっている!」

「へえ、言うじゃない。なら、瞬殺してあげるよ! 魔装‼︎」

「魔装‼︎」


 レノとリマの2人が戦闘状態に入った頃、離れた場所に居たセラの前にも1人の女性が現れていた。


「んん〜? あなた、見かけない顔ですねぇ?」

「ウフフ、それはそうでしょう。わたくしは他所の国から来たんですから」


「他所の国ですかぁ。じゃあ観光ですかぁ?」

「いいえ。違いますわ」


「じゃあお仕事ですかぁ?」

「それも違います」


「じゃあ……ボンバーズの方ですかぁ?」

「ナンバーズですっ‼︎ 何ですかボンバーズって⁉︎ ココ◯コですかっ⁉︎」


「そのココ◯コさんが、遂に私の所にも来た訳ですかぁ」

「ココ◯コの方を取ったら何の事か分からないでしょ⁉︎ ナンバーズですナンバーズ‼︎ わたくしはサーティーンナンバーズのひとり、ナンバー9のノインですわ!」


「ナンバー9のノイン……」

「そうですわ。カオス様の約定通り、BL隊の中でも数少ないレベル7のヒーラー、セラさんに戦いを挑みに来たんですわ!」


「んふふ〜。中々来ないからぁ、私達は弱過ぎて相手にされていないのかと思ってましたぁ」

「ウフフ。あなたの兄であるレノさんはともかく、世界的にも珍しいレベル7のヒーラーであるあなたを見逃すはずありませんわ」


「買い被り過ぎですよぉ。まあそれはいいとしてぇ……」

「な、何ですの?」

「あなたぁ……凄く変な喋り方ですねぇ?」

「あなたに言われたくありませんわっ‼︎」




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