第20話 カールと言えばチーズ味

 ナンバーズのフライング襲撃のあったその翌日、先走り組敗北の報がパラス城のカオスの元に届けられる。


「カオス様‼︎ ご報告致します‼︎ 監視兵の話によりますと、バーダ様! トレス様! ゾルーガ様の3名が、決戦の期日を待たずにトゥマールを襲撃! しかし、いずれもBL隊のメンバーにより撃破されたとの事です!」


「何だと⁉︎」

「先走った上に敗北するとは彼奴等、もうパラスに帰って来れんのう。カオス殿が恐ろしくてな」

「別に何もしやしないさ。現に俺だっていくら借り物の肉体だったとはいえ、2度もマナ王女に敗れているんだからな」

「ホッホッホ。そういえばそうじゃったのう」


「ええ〜! カオス様のお仕置きは頂けないんですの〜⁉︎ それじゃあ、わざと負けても楽しみ無いじゃありませんの⁉︎」

「わざと負けるなよ」

「じゃあ勝ったらお仕置きして頂けます⁉︎」

「いや、勝ってお仕置きとか意味が分からない」


「そういえば、先走った連中はその3人だけかの?」

「いえ、パルとチルの2人も居ませんでしたので、おそらくは」

「あの双子姉妹か。あんな子供で大丈夫かのう?」


「フッ、心配いらないさ。あの2人は歳こそ幼いが、あの召喚士一族シェーレの出身だ。2人揃えばカール、お前でも手を焼くかもしれないぞ?」

「ホッホッ。まあ、カオス殿がそう言うのならば心配無用かの?」


「しかし、双子姉妹が敗れたという報告はありませんが、勝ったという報告も無いようですが?」

「ホントねぇ。そこの所はどうなのかしら?」


「あ、ハイ! パル様とチル様のおニ人は、未だ戦闘を行ったという報告も入って来ておりません!」

「何しに出て行ったんじゃ? あの2人は」

「まあどうせ、またどこかで寝ていて襲撃の機会を逃したんでしょう」

「あの2人ならあり得ますわ」


「そもそもが期日前なんだ、別にいいさ。それよりも、他のナンバーズの動きはどうなっている?」

「ハイ! スー様とデス様のお二人は、既にグレールへ向かっておられます。リマ様はヴェルン襲撃の為に準備に入られています」


「ノイン。あなたもヴェルン組ではなかったですか?」

「あら、そういえばそうでしたわね。じゃあわたくしもそろそろ準備に入りますわ」


 そう言って、部屋を出て行くノイン。


「エース様とクイーン様は、そのぉ……我々では所在を掴むのも困難でして……」

「どうせあの2人はまたどこぞをほっつき歩いとるんじゃろう。いつもの事じゃ、気にするな」

「あ、ハイ! ありがとうございます!」


「しかし、何故ワシらは留守番なんじゃ⁉︎ ただ待っているのはヒマでしょうがないわい」

「堪えてくれ、カール。キングであるお前が行ってしまったら、一瞬で終わってしまい面白くないだろう? これはゲームなんだ。ゲームは楽しむものだからな」

「ワシは今、最高に退屈しとるわい!」


「お前達上位の4人には、中ボスらしくこの城に居てもらわないとな」

「既に2人おらんじゃないか」

「あの2人だって、決戦前にはちゃんと戻って来るさ」

「ああ、どの道しばらくは退屈じゃわい! おいヘクトル! お前もヒマじゃろう? ちょっとワシの相手になれ!」


「いいですよ。日向ぼっこですか? 肩でもおもみしましょうか?」

「年寄り扱いするんじゃない! 手合わせじゃ手合わせ!」

「ええ〜、イヤですよ〜。カールさん、全然手加減してくれないじゃないですか〜」

「あれでも目一杯手加減しとるわい! お主が本気を出さん限りはの」

「私はいつだって本気ですよ」

「よく言うわい」


 部屋を出て行くカールとヘクトル。

 そして、1人部屋に取り残されたカオス。


(1人か……みんな楽しそうでいいな……)


 パラスでカオスがぼっちになったその翌日、グレールの城下町で、人々に気付かれないように子供の姿でブラブラと街を歩いている子猫師匠。


「退屈ニャ……撮り溜めしてたアニメも全部見ちゃったし……小馬鹿にする相手も居ないし……ナンバーズもちっともやって来ないし……はあ、退屈ニャ……」


「そんなに退屈でしたら、城に戻って祭り事をやってください、シャル様」

「フニャ⁉︎ いたいけな少女であるあたしをシャルと呼ぶお前は誰ニャ⁉︎」


 子猫師匠が振り返った先に居たのは、側近のオルドであった。


「フニャアアア‼︎ オルド⁉︎ 何でここが分かったニャ⁉︎ あいや、な、何を言ってるの? あたしはただの、通りすがりの美少女戦士よ? シャルって誰の事?」

「もうとっくにバレバレです」


 そう言いながら、オルドの背後よりフィーが現れる。


「フィー⁉︎ お前まで⁉︎ ああいやいや、お、お姉ちゃん誰? あたしに何か用?」

「オルドならともかく、私はトゥマールで何度もその姿を見ているというのに、バカなのですか? あなたは」

「フィー‼︎ 誰がバカニャ⁉︎」

「失礼しました。疑問形ではなく本物のバカでしたね、あなたは」

「パターン変えて来た⁉︎」


「確定した所でシャル様! 早く城に戻ってください! 一体どれだけ仕事が溜まってると思ってるんですか⁉︎」

「フニュッ! し、しかし、どうしてあたしの居場所が分かったニャ⁉︎ 人混みに紛れていたのに?」


 子猫師匠の問いに、フィーが答える。


「魔力を辿ったんです。シャル様の魔力はどんなに大勢の中に居てもすぐ分かりますので」

「フフフッ、そうか。目一杯魔力を抑えていたけど、それでもやっぱりあたしの強大な魔力は隠しきれなかったかニャ」


「いいえ、シャル様程ひねくれた魔力の人は他には居ませんので、すぐ分かります」

「誰がひねくれてるニャ⁉︎」

「いいえ、日も暮れて来たので帰りましょうと言ったんです」

「いつものパターンも入れて来た⁉︎」




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