第21話 馬と鹿に失礼だ

「さあシャル様! バカなんですから! あいえ、バカやってないで早く城に戻りますよ⁉︎」

「オルド。今さりげなくあたしをバカって言ったニャ?」

「いいえ、気のせい……シャル様‼︎」


 何かに気付いたオルドが、ガバッと子猫師匠に覆い被さる。


「フニャアア⁉︎ オルド⁉︎ いくらあたしがかわいいからって、いきなり襲って来るのはどうかと思うニャ‼︎ 付き合いたいならちゃんと手順を踏んで……フニャ?」


 子猫師匠が、オルドの背中を触った自分の手を見ると、そこには大量の血が付いていた。


「オ、オルド⁉︎ 興奮してこんなに大量の鼻血を出すなんて、アニメファンの鏡ニャ!」

「本当にバカなんですか? 誰かに狙撃されたんです」


 素早く魔装具を具現化させたフィーが、冷たい目で子猫師匠を見下ろす。


「そ、それぐらい分かってるニャ! シリアスな空気に持って行きたくなかっただけニャ! 誰ニャ⁉︎ コソコソ隠れてないで出て来るニャ‼︎」


 子猫師匠の言葉を受け大柄な男と、見た目だけならフィーと同じぐらいの少女が現れる。


「何者ニャ⁉︎ 名を名乗るニャ!」


 子猫師匠の問いに、男が応える。


「デスデス……」


「デスデス? 変わった名前ニャ」

「デスデスじゃ無いデス。デスデス」

「ニャ? だからデスデスニャ?」

「デスデスじゃ無いデス。デスの名前はデスデス」

「いやだから、デスデスニャ⁉︎」

「だからデスデスじゃなくて……」


「いい加減にしてください! キリがないです」


 中々話が進まない2人にフィーが横槍を入れる。


「キリがないデスじゃなくて、デスは……」

「黙りなさい! 分かっています! 私をそこのバカと一緒にしないでください!」

「フィー、さすがにそうストレートに言われると、いくらあたしでも傷付くニャ……」


「あなたがデスで、そっちのあなたは?」


 デスと一緒に現れた少女に質問するフィー。


「スーはスーでスー。スースーじゃ無いでスー」

「またバカが1人……」


 呆れて頭を抱えるフィーだったが、更に質問を続ける。


「それで、あなた達はナンバーズなんですか?」


「そうデス。デスはサーティーンナンバーズのひとり、ナンバー10のデスデス」

「同じく、サーティーンナンバーズのナンバー4、スーでスー。お二人の相手をしに来たんでスー」


「こんなバカ2人が私達の相手ですか……カオス兄さん、完全にナメてますね」

「それで、どっちがあたしの相手ニャ⁉︎」


「シャルさんの相手はスーがしまスー」

「お前は確か、ナンバー4だったニャ? 上位の奴をあたしにぶつけて来るとは、カオスの奴分かってるニャ! 悪いニャ、フィー。お前はそっちの雑魚で我慢するニャ」


 子猫師匠の言葉に、首をかしげるスー。


「上位? スーは上位じゃ無いでスー」

「そりゃあトップスリーじゃ無いが、4位なら充分上位ニャ?」

「違いまスー。ナンバーズのランクは1位のエースを除いて、数字の大きい方が上位になるんでスー。だからスーのランクは下から3番目でスー」

「ニャんだとっ⁉︎」


 驚く子猫師匠を鼻で笑うフィー。


「ではシャル様、そちらの雑魚の相手、よろしくお願いしますね。プププ」

「フニャアアア‼︎ やってられないニャ‼︎ フィー! そっちの奴と交換するニャ! つまりナンバー10なら上から5番目ニャ⁉︎ まだそっちの方がマシニャ!」


「それはダメでスー! シャルさんの相手はスーがするようにってカオス様に言われてるんでスー! だからシャルさんはスーと戦ってくれないと困るんでスー!」

「カオスの指示⁉︎ あいつうう! あたしをナメくさってるニャアア!」


 子猫師匠が激怒していた頃、パラスに居るカオスが何かを感じ取っていた。


「フフフ、そろそろシャルの奴が激怒している頃か? しかしまあ、神であるシャルにいくらナンバーズの上位をぶつけたところで敵わないだろう。だが、スーはシャルと同じ風使い。上手くハマれば面白い戦いになる可能性があるからな」


 そして再び子猫師匠達。


「ま、まあいいニャ。とっととさっさと一瞬で片付けて、ユーキ達と合流するニャ!」

「シャル様に片付けられるんですか?」

「フィー⁉︎ お前まであたしをナメるのかニャ⁉︎」

「いえ、ご自分の部屋も片付けられないような方が、片付けられるのかと……」

「片付けるの意味が違うニャアア!」


「敵を前にして楽しくお喋り……デス達、ナメられてるデス」

「いくら敵でも相手を馬鹿にするのはいけないんでスー! ちゃんと敬意を払わないといけないんでスー!」


 スーの言葉に表情が険しくなる子猫師匠。


「敬意? 影からこそこそオルドを殺ったような奴に、何で敬意を払わないといけないニャ? お前達ごときは瞬殺ニャ‼︎」


「あの〜。い、一応私、まだ生きてますから……」


 弱々しい声で生存宣言をするオルド。


「フニャ⁉︎ オルド! お前まだ生きてたのかニャ⁉︎」

「生きてま〜す。で、できれば早く敵を倒して治療していただけると嬉しいで〜す」


「心配するニャ! 例え死んでも、すぐにフィーが生き返らせてくれるニャ! だから安心して逝くといいニャ!」

「い、いや、できれば死ぬ前に助けていただきたいのですが?」


「大丈夫ニャ! 苦しいのは一瞬だけニャ! 後は花園が待ってるニャ!」

「あ、もしかして、日頃の恨みを晴らす為に、一度殺そうとしてます?」




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