第67話 ユーキ、衝撃の告白

 ついに、運命の決勝戦が始まる。

 試合が始まった直後、ユーキがフィーに質問をする。


「ねえフィー! 闘う前にちょっと聞きたいんだけど⁉︎」

「何でしょうか? エロ本の隠し場所なら教えませんよ⁉︎」

「聞いてないよ‼︎ てかエロ本持ってんのかよ⁉︎」


「シャル様の趣味です」

「あの師匠……」

「でまかせニャアア‼︎」


 客席に居た猫師匠が激しく否定していた。


「いや聞きたいのはそんな事じゃなくて!」

「ではパティお嬢様のスリーサイズですか? ですが、バストサイズをお教えするにはあまりに不憫で……」

「え、そうなの? 僕と比べてどのくらい?」


「ユーキさんと同じぐらいかと思います」

「ああ、それはかなり残念だね」

「ユーキよりは大きいわよ‼︎」


 客席でパティも激しく否定していた。


「ど、どうしたんですかパティさん⁉︎ いきなり大声出して」

「フィーの奴がでまかせばっかり言うからよ‼︎」

「ああ〜、そういえばパティさんは遠くの音でも聞き分けられるんでしたね?」


 フィーに茶化されたユーキが、再び質問をする。


「もう! だからそういう事じゃなくて! 君がパティの母親だって話は本当なの⁉︎」

「ええ、本当です」

「じ、じゃあパティが僕のお姉ちゃんって言うのは?」

「それも事実です」


「でも僕の父様は身に覚えが無いって言ってたよ? 母様と2人で散々拷問にかけても吐かなかったから、間違いないと思うけど」

「マルス様が身に覚えが無いのは当然です。何故ならパティは、通常の手順で生まれた訳ではないのですから」


「え⁉︎ 通常の手順って……」

「お子様には分かりませんか? 通常子供というのは、愛し合った男女が肉体関係を……」

「それは知ってるよ‼︎」


 顔を赤くして、フィーの説明を遮るユーキ。


「おや、知っていましたか? 純粋なユーキさんはそんな事知らないかと思ってました」

「こ、こう見えて、人生経験は豊富だからね」


 驚いた顔をするフィー。


「これは失礼しました。まさかユーキさんが既に経験済みだったとは」

「経験済み? 何の……」


 首をかしげていたユーキが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「僕は女性経験も男性経験もなああああい‼︎」


 ユーキの告白に、一瞬闘技場が静まり返る。


「え? 今ユーキちゃん、何て言ったんだ?」

「いや、よく聞こえなかったけど、何かが無いとか何とか?」

「無い? 胸の事かな?」

「胸が小さい事なんて気にしなくていいのに」

「俺はむしろ小さい方が……」


 マニアックな観客達にはちゃんと伝わっていなかった。

 更にユーキを小馬鹿にするフィー。


「そんな事を大声で叫ぶなんて、よく恥ずかしくないですね? ユーキさん」

「ぐうっ、こ、このおおお!」


 拳を握り、怒りを抑えているユーキ。


「ダメよユーキ! 完全にフィーのペースに巻き込まれてるわ。もっと冷静になって!」

「ま、まさかっ⁉︎」


 セラが何かに驚いていた。


「どうしたのよ? セラ」

「パティちゃんが冷静と言う言葉を知っていたなんて、驚きですぅ」

「なっ⁉︎ 何ですって〜! それどういう意味よ〜⁉︎」


 セラのこめかみをグリグリするパティ。


「こういう意味ですぅ〜‼︎」


 なおもやり取りを続けているユーキとフィー。


「普通と違うってどういう意味だよ⁉︎ 君って一体何者なの⁉︎ 君は僕達の何を知ってるの⁉︎」

「質問は1人1つでお願いします」

「記者会見かっ‼︎」


「あなたが私に勝てたなら、私の知ってる事は全てお教えしますよ」

「またそのパターンか……なら、全力全開でぶっとば〜す‼︎」


 胸のペンダントを引き、ロッドタイプの魔装具を具現化させて叫ぶユーキ。


「魔装‼︎」


「ようやくやる気になりましたか。では私も全力でお相手いたします」


 同じくフィーも、デスサイズ型の魔装具を具現化させて叫ぶ。


「魔装‼︎」


 ユーキはお馴染みの魔道士タイプの魔装衣が。

 フィーは死神タイプの魔装衣が装着される。



「さあ、試合開始直後は何やら話し込んでいた両選手ですが、いよいよバトルが始まるもようです‼︎」



「ファイアー‼︎」


 ユーキがロッドを構えて叫ぶと、ロッドの前にサッカーボール程の大きさの、炎の玉が現れる。


「フレイムアップ‼︎」


 ユーキがロッドを回転させて行くと、徐々に巨大になって行く炎の玉。



「ユーキ選手の作り出した炎が空中に留まったままどんどん大きくなって行きます‼︎ もう既に当初の倍の大きさだ〜‼︎」



「その戦法はシャル様から聞いています。むざむざ出来るのを待つ訳ないでしょう⁉︎」


 デスサイズをクルリと回転させると、魔装具が弓タイプに変化する。


「出来上がる前に、消させていただきます。ウォーターアロー‼︎」


 ユーキの炎の玉を狙って、水の矢を放つフィー。


「エターナルマジック‼︎」


 水の矢が炎の玉に当たるが、炎は揺らぐ事なく更に巨大になって行く。


「ああ、これは失敗しました。そういえばそんな技も使えるんでしたね? アイリス様には無かった技なので、失念していました」


 そうこうしているうちに、ユーキの作り出した炎がユーキの身長を優に超える程巨大になっていた。


「完成してしまいましたか。ならば、直接ぶった切るだけです」


 フィーが弓を回転させると、今度はアイバーンが持っているような大剣に変化する魔装具。

 


「ユーキ選手の作り出した炎が、ユーキ選手の体を覆わんばかりの巨大な火の玉になりました〜‼︎ それを見たフィー選手が今度は魔装具を大剣タイプに変化させて迎え撃つようです‼︎」



 構えたロッドを、ピッチャーが投げるように大きく振りかぶるユーキ。

 バッターのように大剣を構えるフィー。



「打ち取る事ができるでしょうかユーキ選手⁉︎ そして、見事打ち返す事ができるかフィー選手⁉︎」



「いつから野球になったのよ⁉︎」


 さり気なくツッコむパティ。


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