第62話 魔法使いだって殴りたい
スッと立ち上がるフィー。
「バレているなら、隠しても仕方ありませんね」
すると、フィーのデスサイズ型の魔装具が、シールドタイプに変化する。
「ああっとお⁉︎ フィー選手の魔装具がデスサイズからシールドに変化しました〜‼︎ これは幻術なのでしょうか⁉︎ それとも、フィー選手もユーキちゃんのように、複数の魔装を使えるのでしょうか〜⁉︎」
「残念ながら、私が出来るのは魔装具の変身だけです。お嬢様の御察しの通り、ネクロマンサーの能力で呼び寄せた霊が、生前使用していた魔装具の能力を借りて自分の力にする。それが私の能力です」
「やっぱりね。でもあんたは、霊の能力を借りてるだけだから、あくまでその霊が持っていた能力しか使えない。つまりは、必要に応じてその都度魔装具を変えなければならない。あたしのような天才的な能力者の霊で無い限りはね!」
「最後の部分は少々引っかかりますが、概ねそんな所です。ですが、例え私の能力の秘密が分かった所で、お嬢様が私に勝てない事に違いはありませんよ」
「あんた、まだそんな事言うの⁉︎ ちょっと負け惜しみが過ぎるわよ? 確かに複数の魔装具を使えるのは脅威だけど、ユーキ程じゃない。能力の秘密が分かった今、いくらでも対処法はあるわ!」
「負け惜しみではありません。では、先程言いかけたお嬢様が私に勝てない理由、最後のひとつを教えてあげましょう。それはユーキさんです」
パティの顔がピクリとなる。
「ユーキさんこそが、お嬢様にとって最大の弱点なんです」
「フッ、何を言うかと思えば。だったら何? ユーキにでも化けるつもり? 言っとくけど、ユーキの姿になった所で、あたしが攻撃を躊躇する事は無いわよ⁉︎ 現にベルクルの闘技場で、あたしはユーキと普通に闘ったんだから!」
しばしの間が空き。
「ユーキさんの姿でデートしてあげますよ?」
「うぐっ!」
「食事の時にあ〜んとか」
「まだやってもらった事無い……」
「同じ布団で添い寝とか」
「布団に侵入したら、ユーキ怒るのよね」
「一緒にお風呂とかも」
「ユーキ、恥ずかしがって一緒に入ってくれないのよ」
「何なら、口づけなんかも」
「ぜひお願いします‼︎」
「まあ、ユーキさんに化けるなんて事、出来ないんですけども」
「出来へんのか〜いっ‼︎」
思わず関西風のツッコミを入れるパティ。
「散々期待させておいて〜! あんた! 一体何がしたいのよ⁉︎」
「お嬢様と私の関係……そして、お嬢様とユーキさんの関係を知ったら、あなたは闘う気力を失うという事です」
「あたしとユーキの関係⁉︎ 恋人同士よ‼︎」
「違うでしょう」
「あたしとユーキが何だって言うのよ⁉︎」
「お嬢様とユーキさんは……いえ、やめておきましょう。迂闊に話すとシャル様に怒られてしまいますので」
「また師匠の隠し事? いいから言いなさいよ‼︎」
「これをバラす事は、私自身とてもリスクが高いのです。どうしても知りたいと仰るのなら……」
「力尽くで、という事ね? いいわ! なら、締め上げて全部吐かせてあげるわ‼︎」
風をまといながら、フィーに向かって走って行くパティ。
「また接近戦ですか? 風の魔道士の名が泣きますね」
「そんなもの、いくらでも泣かせときなさい! 最後に泣くのはあんただけどね!」
左腕に持ったシールドに右の手の平を合わせると、シールド型の魔装具がナックルタイプに変化して、フィーの両腕に装着される。
「なら、私も格闘戦でお相手します!」
「パティ選手が再びフィー選手に向かって走って行きます‼︎ また格闘戦を仕掛けるつもりでしょうか⁉︎ フィー選手は魔装具をナックルタイプに変えて迎え撃つようです‼︎」
フィーの近くまで来たパティが飛び上がり、クルリと前方に一回転してかかと落としを放つ。
それを、両腕をクロスさせてガードするフィー。
「くっ! 重い⁉︎」
そこからクルリと後ろに回転して、地面を蹴って勢いを付けてから、ボディブローを放つパティ。
すかさずガードを下げて防御するが、勢いに押されて1メートル程飛ばされるフィー。
「リトルボム‼︎」
足の裏で小さい爆発を起こし、その勢いでフィーの顔面に膝蹴りを放つパティ。
スウェーで体を反らしてパティの蹴りをかわすと、その態勢のまま足を大きく上げて、パティの背中を蹴りに行くフィー。
「グラビティ‼︎」
パティの放った重力魔法により、仰向けの態勢のまま地面に叩き付けられるフィー。
「ぐうっ!」
更に空中で体を回転させて、重力魔法の勢いを利用してフィーにボディプレスを仕掛けるパティ。
「いつまでも調子に乗らないでください!」
地面に横たわったままの態勢で両腕の拳を体の正面で合わせると、ナックルタイプの魔装具がワンドタイプに変化する。
「エクスプロージョン‼︎」
「くっ!」
フィーの起こした爆発で、吹き飛ばされるパティ。
それと同時に、重力魔法が解けて立ち上がるフィー。
「予想通り格闘戦から始まった2人の攻防ですが、最後は至近距離からの魔法の撃ち合い! そして打ち勝ったのは、どうやらフィー選手のようだ〜‼︎」
風の防御壁をまとっていたことで、大したダメージを受けていないパティも立ち上がる。
(魔装具だけを変化させる分、ユーキの変身よりもかなり早いわね)
「いくら私にお嬢様の魔法が通用しないからといって、格闘戦ばかり。つくづく魔道士らしくないですね?」
「格闘戦の中に魔法を織り込むからこそ、効果的なのよ!」
「それにしてもお嬢様……」
「何よ?」
「さっきの蹴り。相当重かったんですが……太りました?」
「重力魔法よっ‼︎」
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