第60話 ただし美少女に限る

 魔装するパティとフィー。

 魔装したパティが、フィーに杖を向ける。


「ネムとロロにとっては、あんたの能力が1番の天敵だったみたいだけど、あたしには通用しないわよ⁉︎」


 パティの挑発に反論するフィー。


「ロロちゃんが元人間ではなく、純粋な召喚獣だったなら、おそらく負けていたのは私の方でしょう。だけどお嬢様。私はあなたには負けませんよ」

「へえ、言ってくれるじゃないの? 何を根拠に言ってるのか知らないけど、なら試してあげるわ‼︎ ライトニングアロー‼︎」


 巨大な光の矢が、フィー目がけて飛んで行く。


「ネクロマンサーの能力で防げるものなら防いでみなさい‼︎」

「では、防がせていただきます」


 フィーが体の前で鎌を一回転させると、パティの放った光の矢がフィーに当たる前に消滅する。



「パティ選手! 先制の一撃を放ちましたが、フィー選手が難なくそれを防ぎました〜!」



(防いだ? と言うより、いきなり消えたような? あたしも今まで色々な相手と戦って来たけど、まだネクロマンサーと戦った事は無いのよね。どういう闘い方をするのか、見極めないと)


「たった一撃で終わりですか? なら、今度はこちらから行かせていただきます」


 クルリと鎌を一回転させてから頭上に振り上げ、その場で鎌を振り下ろすフィー。


「⁉︎」


 何かイヤな予感がして、サッと体を横にズラすパティ。

 パティが体の側面に風圧を感じた次の瞬間、先程までパティが居た場所の地面に亀裂が走る。



「ああーっとお‼︎ フィー選手が鎌を振り下ろした直後、パティ選手の側の地面に亀裂が走りました〜‼︎ これはフィー選手の攻撃なんでしょうか⁉︎ しかし2人の距離は5メートルは離れています‼︎ フィー選手、一体何をしたんだ〜⁉︎」



 パティも色々と可能性を模索していた。


(何? 今のは……フィーがやったの? でもあんなに離れた位置から? 地面の亀裂を見る限り、魔法弾の類ではなさそうよね。何かを上から叩き付けたような? さっきフィーは鎌を振り下ろす動きをした。実はあの鎌って、実際にはもっと巨大なのかしら? 試してみる!)

「ウインドウォール‼︎」


 パティの周りに、風の壁が現れる。

 それを見たフィーが、残念そうな顔をする。


「ハア、いくら私の能力が分からないからって防御に回るとは……ガッカリです」

「誰が防御に徹するって⁉︎」


 杖を縮めて背中にセットしてから、フィーに向かって走って行くパティ。


「お得意の打撃戦ですか? 魔道士じゃなくて格闘家に転職したらいかがですか? あっ! ゴリラの方が向いてるかも!」

「誰がゴリラよ‼︎」

「これは失礼しました。謝らないといけませんね。ごめんなさい、ゴリラさん」

「そっち⁉︎ ふざけた事言ってるんじゃないわよ‼︎」

「そうやってすぐに熱くなる所も、あなたの悪いクセです」


 またクルリと鎌を一回転させてからパティに鎌を向けると、いきなり動けなくなるパティ。



「ああっと‼︎ フィー選手に向かって行ったパティ選手ですが、何故か急に動かなくなりました‼︎ 何も見えませんでしたが、フィー選手の攻撃によるものでしょうか⁉︎」



(何? 明らかに何かが体に絡みついている感触があるのに、何も見えない? 幻術? まさか、死霊使いだけに霊の類だって言うの? Zガ○ダムじゃあるまいし)


 動けないパティに近付いて来るフィー。


「動けませんか? なら今のうちに、何故パトリシアお嬢様が私に勝てないか、小1時間程かけて説明してあげましょう」

「長過ぎるわよ‼︎」

「そうですか……じゃあ頑張って50分ぐらいに縮めますから」

「長いって言ってるでしょ‼︎」


「では45分……」

「まだ長い!」


「40分……」

「まだまだ!」


「39分……」

「もうひと声!」


「38分30秒……」

「細かく刻むんじゃないわよ‼︎ 簡単に説明しなさいよ簡単に‼︎」


「そうですか……残念です。では簡単に、その理由を3つあげさせてもらいます。まずは1つ目」


 人差し指を立てるフィー。


「お嬢様の使う魔法は全て把握している事。シャル様にお嬢様の魔法が通用しなかったように、いつも側でお嬢様の魔法を見ていた私には通用しません」

「何言ってるのよ! あたしは新技でその師匠を倒したでしょ⁉︎」


「いいえ、その技も既に見せていただきました。確かにこの短期間で新技を編み出した事は驚嘆に値しますが、さすがにあのクラスの魔法を2つも編み出すのは不可能でしょう」

「そ、そんなの、分かんないでしょ⁉︎」

(まあ実際、新技はあれひとつしか無いんだけども)

 


「次に2つ目」


 更に中指を立てるフィー。


「その怒りやすい性格。ちょっとした事ですぐキレて、冷静な判断が出来なくなる所」

「それこそ何言ってるのよ⁉︎ あたしは常に冷静沈着よ!」

「……貧乳悪魔……」

「誰が貧乳悪魔よっ‼︎」


 あっさりキレるパティ。



「そして最期、3つ目」


 3本目の指を立てるフィー。


「お嬢様より、私の方がかわいい事」

「いや、関係無いでしょ⁉︎」

「とんでもない! 関係は大ありです! 常々私はシャル様を小馬鹿にしてストレスを発散してますが」

「小馬鹿にしてたんだ……」


「それだって私がかわいい美少女だから許されるのです。想像してください! これでもし私がブサイク女芸人のような顔だったなら、ただただ腹が立つだけでしょう?」

「あんた、何気に酷い事言うわね」



「そして4つ目」

「いや待ちなさいよ‼︎ あんた3つって言ったわよね⁉︎」

「何言ってるんですか? さっき聞いた事をもう忘れたんですか? 脳筋なんですか?」

「誰が脳筋よ‼︎」


「どうです? こんなにバカにされても、私がかわいいから許せてしまうでしょう?」

「普通に腹が立つだけよ‼︎」



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