第52話 真面目な話をしてると茶化したくなる

「以上をもちまして、五国統一トーナメント1回戦の試合が全て終了となります! 見事準決勝に駒を進めたのは、あらゆる魔装を使いこなす天使な魔法少女、ユーキちゃん‼︎」


「ゲーム機1台目、ゲットだぜ!」


「無名ながらも王国騎士団の団長、アイバーンを倒したトト選手‼︎」


「すぐ有名になるよ」


「見事幼女対決を制しました、黒い死神フィーちゃん‼︎」


「キティちゃん、ザマァ」


「そしてたった今、準決勝進出を決めました漆黒の悪魔、パティ様‼︎」


「だから〜!」


「準決勝は明日、同じくこの闘技場で行なわれます! 皆様のご来場をお待ち致しております! それでは、本日も多数ご来場ありがとうございました‼︎」



「んじゃあ、パティと合流して帰ろっか⁉︎」

「そうですね」


 その後、パティと合流したユーキ達は宿屋へ戻り、ささやかながら、祝勝会並びに反省会が執り行われた。


「ええ〜‼︎ キティちゃんって猫師匠だったの〜⁉︎」

「そうよ、本人が白状したんだから間違いないわ」

「そっか〜、でもそれならパティの魔法に対抗できたのも納得だな〜」

「でもパティさんはその師匠に勝ったじゃないですか⁉︎」


 だが、不機嫌そうな顔のパティ。


「師匠越えを果たしたというのに、嬉しくはないのかね? パティ君」

「どこがよ⁉︎ あんな手抜き試合で勝ったって、全然嬉しくないわよ!」

「手抜き? そうなの?」

「そうよ! そもそも魔装具が師匠本来の物じゃなくて、間に合わせで買った安物だったし、何より今日の試合、防御ばかりで1度も師匠から攻撃して来なかったんだから‼︎」

「え? そうだっけ?」

「さあ? 僕は気付きませんでしたけど」


 メルクと顔を見合わせるユーキ。


「その辺の事も含めて、試合の後に締め上げてやろうと思ってたのにぃ‼︎」

「また逃げられた訳ね」



 まんまとパティの魔の手から逃げおおせたキティ。


「ふう、何とかパティに捕まらずに上手く逃げられたニャ」

「まだ、ユーキさん達に本当の事は言わないんですか?」

「まだ時期尚早ニャ! もう少し経ってからニャ」

「ホント、性悪猫ですね」

「フィー⁉︎ 誰が性悪猫ニャ⁉︎」

「いいえ、商売繁盛を祈願していたんです」

「あたしは招き猫かニャ⁉︎」


「ところでシャル様は、いつまでそのロリっ娘の姿でいるつもりですか?」

「ん? この姿だとかわいいから、店に行ったとき色々サービスしてもらえてお得ニャ」

「はあ……一国の王ともあろうものが、みっともない」

「フィー⁉︎ 誰がみっともないって⁉︎」

「いいえ、ミットもボールも無いけど、キャッチボールをしようって言ったんです」

「無茶振り⁉︎」



 再びユーキ達の泊まっている宿屋では、今度はトトの正体についての話題になっていた。


「ええ〜⁉︎ トトの正体がカオス〜⁉︎」

「ま、まさか⁉︎ 本当なんですか? アイバーン様⁉︎」

「ああ、この身に直接彼の魔力をくらったのだ、間違い無い!」


「じゃああの姿は、シャル様みたいに幻術によるもの?」

「いや、彼の場合は幻術の類ではなかったように感じたのだが……」

「でもカオスってリーゼル城の牢獄に囚われている筈じゃ⁉︎」


「ああ〜! そうだった! その辺の事、父様に聞こうと思ってたのに、すっかり忘れてた〜!」

「ギクッ!」


 ユーキの言葉にギクッとなるマルス国王。


「ねえ、どういう事なの? 父様⁉︎」

「う、うむ……実はマナちゃんに余計な心配をかけさせたくなくて黙っていたんだが……」


 マルス国王より、カオスが牢獄の中で死んでいた事が明かされる。


「え⁉︎ 死んで、た? じ、じゃあトトがカオスっていうのは?」

「いや、その遺体の状態というのが、何かカオスの能力に関係しているのではないか?」

「能力、ですか?」


「フィーみたいに、ネクロマンサーとかって事じゃないの?」

「ふむ、ありえるね。既に死んでいた者を遠隔操作で操っていたとしたら、死亡推定時刻が合わない事にも納得がいく」

「となると、あのトトも既に死んでいる誰かの死体って事?」

「その可能性は高いね。もっとも、彼がカオス本人である可能性も無いとは言えないが」


「どちらにせよ、用心した方がよさそうですね」

「ああ、だから皆に言っておく。明日の試合で、もしもカオスがユーキ君に対して妙な真似をするようなら、試合に関係無く全力で阻止するんだ! いいね⁉︎」

「勿論です!」

「ユーキに何かするなんて、このあたしが絶対に許さないわ‼︎」


 そう言ってアイバーンを睨むパティ。


「な、何故私を睨むのかね? パティ君⁉︎」

「あんたが1番ユーキに何かやりそうだからよ!」

「濡れ衣だよ!」


 そんなやり取りの中、ネムが思い出したように口を開く。


「あ、ネクロマンサーで思い出した……ロロの正体も聞きたかったんだった」

「ギクッ! なのです」

「え? ロロの正体って……召喚獣じゃないの?」

「ただの召喚獣だったら、今日ネムは負けてない。ロロ、正直に喋って」


「うう〜、分かったのです……実はロロは、元は普通の人間なのです」

「人間⁉︎ え、だって……じゃあ何で召喚獣?」


「ロロは元々、シェーレ国の王族であるクラインヴァルト家に仕えるメイドだったのです。ところがあの日、パラス軍の襲撃を受けた時、ロロは幼いネムを守ろうとして、瀕死の重傷を負ってしまったのです」

「ロロ……」


「治癒魔法を使える者も既になく、後は死を待つだけだったロロに、ネムの母上がある提案を持ちかけて来たのです」

「提案?」


「その提案とは、ロロの肉体を媒介にして、ロロの魂と意思を持った召喚獣として生まれ変わる事だったのです。その力でネムを守ってほしいと言われたのです」

「人の肉体を媒介にして? そんな事が出来るの?」


「成功の可能性は五分五分だったのです。でも、ロロはすぐにその提案に乗ったのです。どの道、何もしなかったら死ぬだけだったのです」

「そんな状況だったなら、僕も乗ったでしょうね」


「そして運良く召喚は成功して、無敵召喚獣ロロが誕生したのです!」

「自分で……」

「とはいえ、その頃のネムはまだ幼くて、当然魔装などできなかったので、ロロはただひたすらネムを連れて戦場から逃げたのです。そして各地を放浪しているうちに、ユーキさんと運命的な出会いを果たしたのです!」


「そっか……2人共、ホントに苦労したんだね……僕で良いなら、ずっと側に居ていいからね。僕が一生2人の面倒を見るよ」

「ユーキ姉様……うん、ずっと姉様の側に居る……」

「やっと安住の地を見つけられたのです」

「一生っ⁉︎」


 ユーキの言葉を聞いて、絶句して口をパクパクさせているパティ。


「どうしたんですかぁ、パティちゃん? 面白い顔がより面白くなってますよぉ?」


 即パティに殴られるセラ。


「痛いですぅ! すぐに手を出すから野蛮人って言われるんですぅ!」


 アイバーンの陰に隠れながら訴えるセラ。


「わ、私に隠れるのはやめてくれないか? セラ君」

「ユ、ユ、ユーキ……い、今、一生面倒見るって……」

「え? 言ったけど?」

「そ、そ、それってプロポー……ズ⁉︎」


 パティの言葉に驚くユーキ。


「ええ⁉︎ ち、違っ! 別にそういう意味じゃ! 王女としてリーゼルで面倒を見てあげるって意味で」


「姉様、浮気はダメよ……」

「浮気・即・斬なのです!」


「だから違ううっ‼︎」






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