第51話 さあ、どこが混ざってるでしょ〜か⁉︎
真剣な表情で魔力を高め始めるパティ。
その表情を見たキティの顔も引き締まる。
「トルネード‼︎」
キティを囲うように、風の竜巻が現れる。
「パティ選手仕掛けました〜! キティ選手の周りを風の渦が取り囲んだ〜‼︎」
「何かと思えば、ただのトルネードニャ⁉︎ こんなものがあたしに通用するとでも思ってるのかニャ⁉︎」
特に防御する訳でもなく、ただ悠然と眺めているキティ。
(そう、師匠はあたしを完全にナメきってる)
「サンダーストーム‼︎」
トルネードの渦に、更に雷をまとった風を重ねる。
「パティ選手、更に魔法を放ちました! 今度は雷をまとっています!」
「魔法の重ねがけニャ⁉︎ まあ、並みの相手なら驚異だろうけども、あたしには通用しないニャ」
(もし、本気であたしを倒しに来たのなら、多分あたしに勝ち目は無い)
「ホーミングアローズ・ハンドレッド‼︎」
100本のアローズを渦の中に撃ち込むパティ。
渦に流されて、どんどん加速して行くアローズ。
「何と⁉︎ ここでパティ選手お得意のアローズだ〜! 渦に巻かれたアローズがどんどん強い光を放って行きます! こ、これは物凄い事になるぞ〜‼︎」
「なるほどニャ。渦に巻かれる事によって、勝手に加速して威力を増して行く訳かニャ⁉︎ 考えたニャ、パティ。でもまだ足りないニャ」
(しゃくだけど、あたしをナメきってる今なら、付け入る隙は充分ある!)
「エターナルレイン‼︎」
更に水魔法を重ねるパティ。
「まだまだニャ」
未だ余裕の表情のキティ。
「あれは、メル君の水魔法⁉︎ パティ、やっぱり水属性魔法も使えたんだね?」
「ふむ……しかしプライドの高いパティ君がなりふり構わず魔法を使っている……キティ君はそれ程の相手という事か?」
(んふふ〜、そりゃあ相手は猫さんですからねぇ、なりふりなんて構ってられないですよぉ。だけどぉ、それだけでは猫さんには勝てませんよぉ? それはパティちゃんだってよく分かってる筈ですぅ。何か奥の手でもあるんですかねぇ?)
魔力カートリッジを交換して、更に魔法を重ねるパティ。
「ダイヤモンドダスト‼︎」
「ま、まだまだニャ」
「ミーティアストリーム‼︎」
「ま、まだ……」
段々不安な表情に変わって行くキティ。
「バーニングファイアー‼︎」
「も、もうそろそろいいんじゃないかニャ?」
「アクセル‼︎」
「パティ?」
「アクセル‼︎」
「もしもし、パティさん?」
「アクセルバースト‼︎」
「いつまで続けるつもりニャアアア‼︎ 見てるだけで目が回りそうニャ‼︎」
「こ、これは凄まじい‼︎ 正に凄まじいの一言です‼︎ パティ選手が重ねに重ねた魔法の渦が、もう形容のしようがないぐらい、凄まじい事になっております‼︎」
渦の中心に居るキティが、目線を正面から上に向ける。
そこには澄み切った青空があった。
(うわあ〜、怪しさ爆発ニャ〜。周りはどエライ事になってるのに、上だけポッカリ空いてるニャ。200パーセント罠ニャ)
渦の外より、キティの様子をうかがっているパティ。
(今頃師匠は、真上が空いてる事に気付いてる頃。普通は間違いなく罠を疑うでしょう。でも師匠は必ず罠に飛び込むと言い切れる! 何故なら……猫は水に濡れるのをイヤがるから‼︎)
妙な確信を持っているパティ。
再び目線を正面に移すキティ。
(ふう……とはいえ、この嵐の中を突っ切って行くのはイヤニャ。仕方ないニャ。あえて罠に飛び込むとするニャ。パティが何を企んでるのかも興味あるしニャ)
「フライ‼︎」
フワリと浮き上がり、真上に空いた空間に飛行して行くキティ。
(来たっ!)
杖を構えて、すかさず呪文詠唱に入るパティ。
『深遠より来たれり、天地を貫く』
パティの詠唱に気付くキティ。
(詠唱⁉︎ いや、でも何ニャ? 聞いた事の無い文句ニャ⁉︎)
『万物を屈服させし闇、裁きの光よ』
(闇っ⁉︎ ま、まさかパティの奴、自力で闇魔法を⁉︎)
『命育む、幾億の星』
パティの闇魔法に慌てるキティ。
「や、やめるニャパティ‼︎ お前は闇魔法は使ってはいけないニャアア‼︎」
『悠久の風よ、無より生まれし命よ』
しかし、なおも詠唱を続けるパティ。
「全く、このバカ弟子、少しは師匠の言うことを聞くニャ」
『女神テトの名の下に』
「どのツラ下げて言ってるニャ!」
『風の魔道士パトリシア・ウィードが命ず』
「仕方ない! 発動前に力尽くで止めるニャ!」
急いで渦から脱出しようとしたキティだったが、空中で見えない何かに当たって再び地上に落ちる。
「イニャアッ‼︎」
『その言の葉をもって、我が刃となりて』
「何ニャ⁉︎ 空に何かあるニャ⁉︎ ならば、エクスプロージョン‼︎」
キティの放った爆裂魔法により、何も無かった空間に、巨大な十字架が現れる。
「な、何だああっ⁉︎ 渦の真上に、突如巨大な十字架が現れました〜‼︎ 先程からパティ選手が呪文詠唱を行なっているようですが、これもパティ選手の魔法なのか〜⁉︎」
「あれはっ⁉︎ グレイヴマーカー⁉︎ いやでも、グレイヴマーカーの詠唱文句とは違うニャ⁉︎」
耳をすませて、パティの詠唱文句をじっと聞いてみるキティ。
『彼の者を土へ還せ、母なる大地に還せ』
「2重詠唱⁉︎ ま、まさかグレイヴマーカーに別のオリジナル魔法の詠唱を重ねて……⁉︎」
『グレイヴマーカーグラビティ‼︎』
超重力をまとった十字架が、凄まじい速さで地上に居るキティめがけて落下して来る。
「何ニャアアア〜‼︎」
魔法を使わず、文字通り力尽くで十字架を受け止めるキティ。
以前に見たグレイヴマーカーと比べ物にならない速さに驚くユーキ達。
「は、速い⁉︎ グレイヴマーカーってもっとゆっくり降りて来るんじゃないの⁉︎」
「ええ、僕もあんな速いのは初めて見ました!」
「ふむ……グレイヴマーカーは魔法による防御や特殊効果を無効にする特性がある代わりに、動きが遅いのが弱点だったからね。おそらくはその欠点を補う為に、重力系か何かの魔法を重ねがけしたのだろう。言う程容易い事ではないがね」
だが、潰されずに何とか堪えているキティ。
(ど、独学とはいえ、やはりパティの闇魔法の威力は半端ないニャ。しかし、幸い自我は保っているようで安心したニャ。でも、余り長く発動させるのは危険ニャ。なら煽ってやるかニャ)
「フ、フフフフ! た、確かに恐ろしい重ね技ニャ。だけどこれ程の魔法、当然魔力消費量も相当な筈ニャ! 例えあたしが動けなくてもこのまま粘っていれば、先に魔力切れになるのは間違いなくお前の方ニャア‼︎」
キティの言葉を聞いてニヤリと笑うパティ。
「そんな事は百も承知よ! 誰がこのまま我慢比べをするって言った⁉︎」
「フニャ⁉︎」
パティが体の正面に広げた手の平を少しずつ閉じて行くと、キティを取り囲んでいた渦の輪が、徐々に狭まって行く。
「フニャア⁉︎ お、お前! 師匠をミンチにするつもりかニャア⁉︎」
「師匠だったらそれぐらいじゃ死なないでしょ⁉︎」
「な、何の根拠も無いニャ⁉︎ イ、イヤアアッ……グレールに栄光あれニャアアア‼︎‼︎」
涙目のキティを、ありとあらゆる魔法が襲いかかる。
「炸裂〜‼︎ パティ選手の放つ魔法を悉く打ち消して来たキティ選手でしたが、ついにパティ選手の魔法が炸裂しましたああ‼︎」
パティの放った全ての魔法が消滅して、膝をつくパティ。
(あ、あたしも魔力切れ寸前。これで決まらなかったらもう……」
「様々な魔法を一度に受けたキティ選手! はたして生きているのか⁉︎ いや、それ以前に、五体満足でいられるのか〜⁉︎」
砂埃が晴れた中から服はボロボロだったが、立ったままの姿勢でキティが現れる。
「居ました〜‼︎ キティ選手、ちゃんと人の形を保っていました〜‼︎」
「そんなっ⁉︎ あれだけの魔法を受けて、まだ立ってられるの⁉︎」
驚愕するパティ。
ゆっくりと目を開けるキティ。
「見事ニャ! しかしパティ、自分の力で勝ったのではないニャ。その魔装具の性能のおかげだという事を忘れるニャアア‼︎」
そう言い残して、仰向けに倒れるキティ。
「最後まで貫き通したガ◯ダム愛。改めてお見それしました、師匠……」
そう言って深々と頭を下げるパティ。
そしてレフェリーがキティの状態を確認して、両腕を交差させる。
「ああーっとお‼︎ レフェリーが両腕を交差させました〜‼︎ 決まったああ! これにより、トーナメント1回戦最後の試合は、パティ選手の勝利で〜す‼︎」
「凄ええ‼︎ あんな凄え魔法、俺初めて見たよ〜‼︎」
「さすがはパティ様だ〜‼︎」
「一生ついて行きます、お姉様〜‼︎」
「やった‼︎ パティさんが勝ちましたよ‼︎」
「うん、凄かったよパティ! パターン的には負けるんじゃないかな〜? とかちょっと思ってたけど、勝てて良かったよ!」
やはり失礼なユーキであった。
(んふふ〜、でもパティちゃん、ホントに猫さんに勝つなんてビックリしましたぁ。いや、血筋を考えればあながち番狂わせという程でもないですかねぇ?)
まだパティの試合の話で盛り上がっているユーキ達。
「あ! でも僕、最後の技のコンビネーション見てて思ったんだけど……」
「え? 何ですか? ユーキさん」
「高速回転してる所に棒を刺して……何だかフードプロセッサーみたいだな〜って」
(台無しですぅ……)
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