第38話 これもまた変態
無事愛称も決まりご機嫌なブレンが、魔装をすべく胸のペンダントに手を添える。
「さて、それじゃあ行こうか! 君と結婚する為に‼︎」
日本刀のような刀の魔装具が現れる。
「国の為じゃないのかよ⁉︎」
ユーキもロッドを具現化させる。
「俺様はトゥマールの王国騎士ではあるが、出身はグレールなんでな! 初めはグレールの為に闘おうと思っていたがやめた! 俺様が優勝した暁には、君と結婚して君を統一国の王にする‼︎」
「待て待て! 何でいきなりそんな話になるんだよ⁉︎ 君とはまだ会って間がないのに」
「君ではない‼︎ レン君だ‼︎」
「あいや、いきなりはちょっと呼び辛いというか……」
「レン君だ‼︎」
「わ、分かったよ……」
気恥ずかしさを感じながら、愛称で呼ぶユーキ。
「で⁉︎ そのレン君と僕は、まだ出会ったばかりなんだけど?」
「愛に時間など関係ない‼︎」
「名言みたいにゆ〜な! それに、何で自分が王にならないんだよ⁉︎」
「俺様は王の器ではない! それは自分が1番よく分かっている。俺様は、命を賭けるにふさわしい王に仕える事に、無上の喜びを感じるのだ!」
「浅い! 浅いよ! まだ殆ど喋った事も無いのに、僕の何が分かるのさ⁉︎」
「分かる‼︎」
ブレンの異様な迫力にビクッとなるユーキ。
「マナ王女! 君は間違いなく統一国を……いや、この世界を統べる器を持っている!」
「いや、何を根拠に……」
「根拠は無い‼︎」
「無いのかよ‼︎」
「根拠は無いが、俺様の直感がそう言っている!」
「乙女かっ⁉︎」
「君を王にする為に! そして君と結婚する為に! 君に勝つ! 魔装‼︎」
鞘から刀を抜き、目にも留まらぬ速さで空を何度か斬りつけた後刀を鞘に収めると、宙に魔法陣が現れる。
その魔法陣がブレンの体を通過すると、ブレンが光に包まれる。
その光が消えると、まるで日本の鎧武者を思わせるような、赤を基調とした色の甲冑をまとったブレンが現れる。
「無茶苦茶な理屈だな〜。でも僕だって負ける訳にはいかないんだ! 魔装‼︎」
くるりとロッドを一回転させると宙に魔法陣が現れ、その魔法陣がユーキの体を通過すると、魔道士タイプの白い魔装衣が装着される。
「ブレン、ユーキ選手共に、魔装しました! ブレン選手の魔装は鎧タイプ! ユーキ選手の魔装は魔道士タイプです!」
(火炎弾を飛ばして来たら、全部吸収してやる!)
ブレンの攻撃に備えて、ロッドを構えるユーキ。
しかし刀を抜かずに、居合の構えをとったまま動かなくなるブレン。
(居合⁉︎ まあ、あんな魔装なんだから別に不思議じゃないけど、予選の時とは随分雰囲気が違うな〜)
「う〜ん、予選でエターナルマジックを見せたのはマズかったですね〜」
「どういう事だ、メルク?」
「あ、ハイ。ブレン様は炎使いという事もあって、普段は結構派手な技を好んで使うんですが、その殆どは遠距離攻撃タイプの技なんです」
「確かに予選の時も派手にぶっ放していたな」
「でもそれだと、ユーキさんのエターナルマジックで吸収されてしまいますから……」
「直接攻撃に切り替えた、という訳か?」
「それもありますが、あの構えはブレン様が本気で戦う時にしか見せない構えなんです」
「両者武器を構えたまま動かない‼︎ 試合時間は無制限ではありますが、いい加減に動いてくれないと客席がシラけてしまうぞ〜⁉︎」
(いや、分かってるんだけど……何も仕掛けて来ないって事は、完全にカウンター狙いだよね〜? 間合いに入った途端にバッサリってか? とはいえ、確かにこのままじゃラチがあかないし、仕掛けてみるか……)
「ウォーターボール‼︎」
5個の小さな水の球を、ブレン目掛けて同時に飛ばすユーキ。
それを、目にも留まらぬ速さで一瞬で斬り捨てるブレン。
「ようやく動いてくれました〜‼︎ ユーキ選手が放った水の球を、一瞬で斬り捨てましたブレン選手! それにしてもブレン選手、予選の時のガサツな動きとは違い、洗練された実にキレのある動きです‼︎」
「なら、これはどう⁉︎ ホーミングアローズ‼︎」
ユーキの周りの宙に、3本の光の矢が現れる。
「仕掛けて来ないなら、目一杯威力を上げてやるんだからね‼︎」
そう言って、ロッドを回転させ始めるユーキ。
回転が加わる毎に、どんどんアローズの光が強くなって行く。
(あれは……予選の時に使っていた光の矢か⁉︎ あの時は落とせなかったが、来い! 今度こそ叩き落としてやるぜ!)
更に魔力を集中させるブレン。
「いっくぞ〜‼︎ アローズ、ひとつ‼︎」
1本目の矢がブレン目掛けて飛んで行くが、間合いに入った瞬間に斬り落とされてしまう。
「やるな〜⁉︎ ふたつ‼︎」
2本目の矢を飛ばすが、またしても斬り落とされる。
「いけない、ユーキさん‼︎ 間を空けてはダメです‼︎」
「メルク⁉︎ どういう事……」
レノがメルクに聞いた時には、既にユーキは最後の矢を放っていた。
しかし結果は変わらず、先の2本と同じように斬り落とされるアローズ。
(ぐうっ! 腕が疲れるぐらいぶん回して目一杯威力を上げたのに、アッサリと……)
信じられないといった表情のユーキ。
「ユーキ選手お得意のアローズが、全て落とされてしまいました〜‼︎ 予選ではブレン選手を貫いていたアローズですが、やはり予選と本戦は違うという事か〜⁉︎」
「メルク! さっきは聞きそびれたが、間を空けてはダメというのはどういう事だ?」
「ブレン様のあの構えです」
「構え? 居合の構えの事か?」
「ハイ。ブレン様は攻撃を繰り出した後、すぐに刀を鞘に収めますが、実はああやって刀を収める度に、どんどん技の威力と速度が上がって行くんです」
「ユウちゃんの特性と似てますねぇ」
「ユーキさんは今回、相手に直接触れてのエターナルマジックは禁止されてますが、例え禁止されてなかったとしても、そもそもブレン様に触れる事自体困難でしょう」
「遠距離攻撃を使わず触れさせる事も許さない。絵に描いたようなエターナルマジック攻略法ですねぇ。まあ、ユウちゃんの引き出しがそれだけなら倒せたかもしれませんけどぉ」
(遠距離攻撃はダメか……かと言って間合いに入れば相手の思うツボ。あの光速の斬撃を見切れないと勝機は……)
攻めあぐねているユーキが、ふとある事を思い付く。
(いや、見えないなら無理に見切らなくてもいいじゃん)
ニヤリと笑ったユーキが、ロッドにセットされていた黒いカートリッジを取り出し、黄色いカートリッジをセットし直して叫ぶ。
「魔装‼︎ ランス‼︎」
ユーキの頭上に現れた魔法陣から雷が降り注ぎ、ユーキの体が光に包まれる。
その光が消えると、重装甲の鎧をまとい、手に槍を持ったヤマトが現れる。
「見切れないなら、耐えきればいいだけの話だ」
途端に、女性客からの歓声が沸き起こる。
「待ってました〜‼︎」
「キャー‼︎ ヤマトく〜ん‼︎」
「カッコイイ〜‼︎ こっち向いて〜‼︎」
「もう、超絶美少女と超絶イケメンふたつの顔を持ってるなんて、何てお得な娘なのユーキちゃん⁉︎」
「出ました〜‼︎ ユーキ選手のもう一つの姿、超絶イケメンヤマト選手だ〜‼︎ そしてその瞬間から、今まで男性と女性半々だった声援が、女性100パーセントに変わった〜‼︎」
「いや〜ん! ユーキちゃんもかわいいけど、ヤマトちゃんもいいわ〜!」
女性客の声援の中に、オネエっぽい男性の声援も混ざっていた。
「いや、一部の男性客にはウケているようだ〜‼︎」
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