第34話 シュールってフランス語だったのね

 レフェリーがボックスから引いた紙が、巨大モニターに映し出される。



「き、決まりました‼︎ 予選Hグループの試合形式は、ク、クイズ大会だーっ‼︎」



 試合形式を聞いて、闘技場に居る全ての人々に、不吉な予感が走る。

 喜ぶ者、落胆する者等、様々な顔を見せる参加選手達。


「マジかー⁉︎ バトルなら自信あったのによー!」

「クイズ……何とかなるかもしれない」

「妨害有りならいけるかも……」


 そして、不安を感じるBL隊。


「クイズってあのクイズ?」

「アイバーン様……何だか色々嫌な予感がするんですが?」

「ふむ……ま、まあ、少なくとも筆記試験よりはまだ盛り上がるだろう」

「セラ、俺の二の舞になるんじゃないぞ」



「では、ルール説明をさせていただきます。始めに選手全員で、マルバツクイズに挑戦していただきます。

そして、ある程度数が減ったところで早押しクイズに切り替えて、先に3問正解した方が決勝トーナメント進出となります。なお、今回の試合形式はあくまでクイズなので、他の選手への攻撃妨害等は一切禁止とさせていただきます!」



「ホントに純粋なクイズ大会なんだね? ネタ切れかな?」

「予選試合全てバトルというのも芸が無いから色々趣向を凝らしたようなのだが、さすがに8試合もあるとアイデアがね……」

「アイバーン様、裏事情をバラさないでください……」



「それでは、準備ができたようなので、始めさせていただきます! 制限時間10秒以内にマルかバツか、正解だと思う方に移動してください! それでは最初の問題! 塩と砂糖を同じ量だけ混ぜて舐めると甘い。マルかバツか⁉︎」


 選手達が、地面に大きくマルとバツのマークが描かれたエリアに、それぞれ移動を始める。


「んふふ〜、食べ物の事に関してはぁ、自信がありますぅ」


 そう言って、バツのエリアに移動するセラ。


「そこまで! 正解は……バツです‼︎ 同じ量だと、塩の辛さの方が勝つ為、舐めるとしょぱいそうです!」


 3割の選手が不正解となり、残り選手約70人。


「次の問題です! 人の体に最も多く含まれている重金属は、鉄である。マルかバツか⁉︎」


「んふふ〜、ヒーラーにとっては簡単な問題ですぅ」


 マルのエリアに移動するセラ。

 ほぼ半々に分かれる選手達。


「正解は……マルです‼︎」


 残り選手は約40人となる。


「セラ、まだ残ってるみたいだね」

「あの娘、性格は悪いけど頭は良いからね」

「ウチのノームちゃんも残ってるよ」

「あ、ホントだ⁉︎」


「それでは次の問題! 三毛猫のほとんどはメスである。マルかバツか⁉︎」


「あれぇ⁉︎ どっちでしたっけぇ? 確かメスだったような気がするんですけどねぇ」

「ふふんっ! こんなの簡単よ!」


 悩んでいるセラをよそに、自信満々でマルのエリアに入って行くキティ。


「ああ〜、あの娘が行くなら間違いないですねぇ」


 何か確信めいた感じで、マルのエリアに入って行くセラ。

 

「どっちだったかな〜? ねえパティ、猫師匠なら分かるかな?」

「多分ね。あのバカ猫は、猫とアニメの知識に関しては、かなりのものだから」

「ハクチュッ‼︎」


 キティがクシャミをした頃、正解が発表される。


「正解はマルです‼︎」


(フィーが側に居なくて良かったわ……あの娘が居たら、また何言われるやら)


 その後も何問か出題されて、遂に残り選手は3人となった。


「さあ、マルバツクイズ、先程の問題で残り3人となりましたので、ここからは残った3名による早押しクイズに移りたいと思います‼︎」


 解答用の机が準備される。


「ええ、それでは! 早押しクイズに挑戦する3名の選手を、ゼッケン番号順に紹介させていただきます! まずは、見事ここまで勝ち残りました! この大会の立案者であり、ヴェルン国の王女様でもある、ゼッケン70番、セラ選手‼︎」


「セラー‼︎ 頑張ってー‼︎」

「ここまで来たんだ、必ず勝ち残れよ‼︎」


「頑張りますよぉ、ユウちゃん。レノはうるさいですぅ」



「幼いながらも、他の大人達を抑えて勝ち残りました! ゼッケン486番、キティ選手‼︎」


「キティちゃんだって、かわいい〜‼︎」

「見た目も名前もかわいいぞー‼︎」


「ふふんっ! 当然でしょ⁉︎」



「先の2人とはまた違った雰囲気を漂わせます! ゼッケン708番、ノーム選手‼︎」


「ノーム、頑張れー‼︎ 四天王はもうお前だけだぞー‼︎」

「ノームちゃん、頑張れー‼︎」


「ええ、お任せください。四天王の為にも、必ず勝ってみせます!」



 解答席に座る3人。


「さあ、解答席の準備も整ったようですので、早速早押しクイズを始めたいと思います! 先程も言いましたが、先に3問正解した人が決勝進出となります。それでは第1問! 乾き物にも色々ありますが、乾物と干物の違いは何⁉︎」


 ピンポン!


「ハイ、セラ選手!」


「乾物は植物性食品でぇ、干物は魚介類ですぅ」


「正解‼︎ セラ選手、まずは1問正解です。では続いて第2問! アニメファンがよくやるコスプレのコスとは、何の略⁉︎」


 ピンポン!


「ハイ、キティ選手!」


「コスチュームよ!」


「正解です‼︎ キティ選手も1問正解です。では第3問! 3人で1回ジャンケンをするとき、あいこになる確率は何分の1?」


 ピンポン!


「ハイ、ノーム選手!」


「3分の1です」


「正解‼︎ ノーム選手も1問正解! これで3人共が1問正解で並びました!」



 筆記試験の時に比べれば、多少は盛り上がっている客席。

 しかし、どこか乗り切れないユーキ達。


「クイズ自体は面白いんだけど……」

「こんな広い闘技場でやる事じゃないわよね」

「スペースの無駄遣い……」

「シュールコントなのです」



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