第30話 昨日の敵は、って奴?
「パティ、頑張ってね! 油断しちゃダメだよ⁉︎」
「パティ君、君ならば間違いなく勝ち残れるさ」
「頑張ってください、パティさん!」
「ええ、みんなありがと。必ず勝ち残ってみせるわ!」
みんなの応援を受け、気合いの入った表情で闘技場に向かうパティ。
パティを見送った後、セラも次の試合に備えて控え室に向かう。
「じゃあ、私も準備しますねぇ」
「セラも頑張って!」
「セラ姉様、ガンバ!」
「ファイト一発なのです!」
「ハァイ、頑張りますよぉ」
「セラ! 俺の無念も共に晴らして来てくれ!」
「まあ、レノの無念なんかどうでもいいですけどぉ……」
「うぉいっ!」
「せいぜい楽しんで来ますぅ」
パティとセラを見送った後、客席に着くBL隊。
程なくして前座の試合が終わり、Gグループの予選試合が始まる。
「さま皆様、お待たせしました‼︎ ただ今より、五国統一大武闘大会、Gグループの予選試合を始めさせていただきます‼︎ このGグループの注目選手は、ベルクルの闘技場にて唯一天使なユーキちゃんを倒したゼッケン810番! 漆黒の悪魔の異名を持つ、パティ選手です‼︎」
「悪魔ゆ〜な‼︎」
怒りながら入場して来るパティと他の選手達。
そんなパティに1人の選手が声をかける。
「まさかパティちゃんと同じグループになるなんてね……因縁、かな?」
「え⁉︎」
パティが振り返るとそこには、リーベンでパティと戦った、見た目も声も、喋り方まで全く同じの、あの三つ子が居た。
「あんた達は、ストスリー⁉︎」
「人をゲームのタイトルみたいに言わないでくれるかな〜⁉︎ 僕達にはちゃんと、ビスト、ミスト、エストって名前があるんだから〜!」
「あんた達も参加してたのね? まあ、ザウスが居た時点で予測は出来たけどね」
「これ程の一大イベントだ、参加しない手は無いさ」
「僕達四天王の名前を売るチャンスだしね」
「あんた達、まだ四天王とか言ってるの?」
「まあ、なんだかんだ言ってもすっかり馴染んじゃったしね」
「5人居るのに……」
「そっち⁉︎」
「そこはほら……僕達の戦略でもあるし……」
「そりゃ、四天王って言ってるんだから、普通4人って思うわよね」
「そういう事」
パティと三兄妹が話している間に、Gグループの試合形式が決まる。
「決まりました! Gグループの試合形式は、ゼッケン強奪サバイバルマッチです‼︎」
「ゼッケン強奪? 騎馬戦みたいなものか?」
「ルール説明をさせていただきます! 制限時間30分の間に、それぞれが着けたゼッケンを奪いあっていただきます。勿論、魔装具や魔法による攻撃は何でもオーケーです。ゼッケンを奪われた選手は即失格となり、30分経った時点で、獲得ポイントの最も多い選手が決勝進出となります!」
「ゼッケン取られたら、即失格なんだ? 厳しいね……」
説明を聞いたユーキが呟く。
「なお、ポイントの計算方法は、獲得したゼッケンの枚数では無く、ゼッケン番号の数字そのものがポイントとなります! しかしそうなると、当然番号の大きい人程狙われる事になりますので、その不利を軽減する為、獲得したゼッケン番号の合計に、自分自身のゼッケン番号もプラスしたポイントが、最終獲得ポイントとなります!」
「なるほどね。数字の大きい人は狙われやすくなる代わりに、初めから多くポイントを獲得した状態から始められる。反面、数字の小さい人は狙われにくい代わりに、ポイントを獲得する為に頑張らないといけない訳ね」
「奪った相手が他の選手のゼッケンを持っていた場合は、そのゼッケンの分も加算されます!」
「ふ〜ん、そうなるとしばらく待ってから、いっぱいゼッケン持ってる人を倒した方が楽そうだね? ビスト兄さん」
「いや待て、ミスト! 僕やミストのゼッケン番号はそれ程大きくないが、エストはおそらく狙われる!」
ビストのゼッケン番号は231番、ミストの番号は331番。しかし、エストの番号は831番と、かなり大きい数字だった。
「へえ、こんな近くにいいカモが居るじゃないの」
「え⁉︎」
エストのゼッケンを見たパティがニヤリと笑う。
「パ、パティちゃん⁉︎」
一瞬身構える三兄妹だったが、パティのゼッケンを見たビストが言い返す。
「よ、よく言うよ! パティちゃんだって810番なんだから、僕達にとってはいいカモじゃないか⁉︎」
「この前のリベンジって訳? いいわよ、返り討ちにしてあげるから、かかって来なさい!」
パティから黒いオーラが溢れ出したと同時に、試合が開始される。
「さあ! 始まりました、ゼッケン強奪サバイバルマッチ! はたして、生き残るのは一体誰だー⁉︎」
パティと三兄妹がお互い睨み合って警戒していると、パティのゼッケン番号を見た選手がパティを狙おうと近付いて来る。
「810番⁉︎ 相手は女の子だし、頂きだぜ!」
パティの背後からそっと近付く男。
「もらった‼︎」
「邪魔!」
「ぐわっ‼︎」
パティに遅いかかろうとした瞬間、パティの片腕の一振りにより巻き起こった風に、全身を斬り刻まれて倒れる男。
倒した男のゼッケンを奪うパティ。
「たったの50ポイント? 無駄な労力使ったわ」
「ああっとお‼︎ 開始早々パティ選手、自分を狙いに来た選手を瞬殺だー‼︎ 確かにパティ選手のゼッケン番号は810番と、かなり高ポイントではありますが、相手が悪過ぎたー! 悪魔にケンカを売るのは、自殺行為だー‼︎」
「だから、悪魔ゆ〜な‼︎」
パティに瞬殺された男を見て、周りの選手達が何やら相談を始める。
「よお! あんなバケモン野放しにしてたら、後々厄介だ。どうだ? ここは手を組んで、先にあのガキを倒さねえか?」
「いいな、それ。なら、あの悪魔の近くにもっと高ポイントのガキが居る。ついでにあいつもやっちまおうぜ⁉︎」
「オーケー、決まりだな!」
パティと三兄妹を取り囲む男達。
「こいつらぁ、人の事をバケモノだの悪魔だのと〜」
小声で話していたが、パティには丸聞こえだった。
「ビスト兄さん⁉︎」
「ああ、どうやらエストが狙われてるね」
「どうする? 先にあっちを片付ける?」
「そうだな〜、パティちゃん!」
「何よっ⁉︎」
「ぼ、僕に怒んないでよ〜! リベンジマッチはしたいけど、何だか周りの小蝿がうるさいからさ〜、先にあっちを片付けない?」
「一時休戦って事? まあ、確かにコソコソ狙われるのはうっとおしいわね」
「フフッ、決まりだね⁉︎ じゃあ、臨時の四天王って事で!」
「嫌よ! そんなダサい名前」
「ええ〜⁉︎ じゃあどんな名前ならいいのさ〜⁉︎」
「そうね……パティさんウィズDとか」
「何だか色々突っ込みどころはあるけど、Dは何の略だい?」
「だんご三兄妹のDよ」
「お願い、それだけはやめて……」
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