第29話 ケンカするほど仲がいい、のか?

 予選3日目を終えて、宿屋に戻って来たBL隊。


「ネム、ロロ、決勝進出おめでとう!」

「ありがと、ユーキ姉様……」

「ありがとうなのです」


「でも凄いね、ロロ! Aランクの魔獣をいとも簡単に倒しちゃうんだから」

「はわっ! 照れるのです!」


「だけど、Aランクの魔獣をアッサリ倒したって事は、ロロさんって魔獣ランクにしたらSランク相当になるんでしょうか?」

「はう〜、自分ではよく分からないのです」

「ネムがレベル7だから、それぐらいはあるとおもうよ……」

「まあ、何にしても、あんた達を敵に回したら脅威よね」


「あ! そういえばパティさん。トーナメントの1回戦でネムちゃんと当たるフィーさんってどんな方なんですか? え、と……強さ的な意味で。結局予選では闘ってる所は見れませんでしたから」

「それが、あたしもあの娘がちゃんと闘ってる所は見た事無いのよ。そりゃ、軽く手合わせぐらいはした事あるけど」

「え⁉︎ そうなんですか?」

「ネクロマンサーだって事は全然知らなかったし……」

「そういえばパティさん、凄く驚いてましたもんね」

「まったく! 猫師匠だけでも始末が悪いのに、フィーまで一緒になってあたしを騙すんだから! あの2人、今度会ったらタダじゃおかないんだから!」



「ハクシュー‼︎」


 別の宿屋で豪快にクシャミをする猫師匠。


「どうしましたか? シャル様。何か芸でもやるんですか?」

「芸? 何の事ニャ?」

「だって今、拍手を要求したじゃないですか……」

「フニャ⁉︎ 誰も拍手なんて求めてないニャ! クシャミをしただけニャ!」


「まったく、紛らわしいですね。もし風邪ならうつさないでくださいね? シャル様の風邪は、本人と同じでタチが悪そうですから」

「フィー⁉︎ 誰がタチが悪いニャ⁉︎」

「いいえ、太刀魚の鮮度が悪いって言ったんです」

「目利きっ⁉︎」



 再びBL隊が泊まっている宿屋。


「明日はいよいよ、予選最終日。パティとセラの出番だね」

「まあ、あたしは予選なんて眼中に無いから、気楽に行くわ!」

「そんな事言ってると、思わぬ伏兵に足元をすくわれるよ?」

「大丈夫よ。ひとつ教えておいてあげるわ、ユーキ」

「な、何⁉︎」


「あたし達クラスの使い手は、世界中探しても中々見つかるもんじゃ無いのよ⁉︎ それがひとつのパーティーにこんなに集まってる事自体、奇跡なんだから」

「そ、そうなの? 僕、ほとんどリーゼルから出た事無いから分かんないけど……」


「確かにパティ君の言う通りだ」

「アイ君?」

「現に、五国の猛者達が集まっている筈の今回の大会でも、今日までで決勝トーナメントの6枠の内の3枠がBL隊のメンバーなのだから」

「BL隊ゆ〜な」


「それに、レノ王子だって、もし試合形式がバトル寄りだったなら、間違いなく決勝に残っていただろうしね」

「アイバーン! そう言ってくれるのか⁉︎ ありがとう!」


 部屋の隅ですっかりいじけていたレノが、明るい表情でアイバーンに礼を言う。


「ああ、そういえばレノ、居たんですねぇ⁉︎ 全然試合の印象が残らなかったからぁ、完全に忘れてましたぁ」

「兄を忘れるなーっ‼︎ だがセラよ! その言葉責め……実に良い!」

「なんだかセラって、レノを喜ばせる為にわざとキツイ事言ってるような気がしてきたわ」


「俺は残念ながら負けてしまったが、セラよ! 明日はお前の番だ。祖国ヴェルンの為にも、何としても勝ち残ってくれ!」

「言われなくても頑張りますよぉ。もっともぉ、国の為じゃなくてぇ、ユウちゃんと結婚する為ですけどねぇ」


「無駄よ! どうせトーナメントの1回戦であんたはあたしが倒すんだから!」

「ぶう〜! パティちゃんの紐無し堪忍袋〜」

「その言い回しやめなさい!」


「そういえばパティちゃんとはぁ、リーゼルでの因縁がありましたねぇ。あの時は仕方無く八百長で負けてあげましたけどぉ、今度は本気で勝ちに行きますからねぇ」

「ふうん、言うじゃないの! ならば今度はあたしも全力でぶっ飛ばしてあげるわ!」


「言いましたねぇ⁉︎ この無条件反射強襲娘〜」

「だからそれやめなさいっての‼︎」


「2人共、挑発するのはいいけど、とりあえず予選を突破してからにしようね」



 そして翌日、予選最終日の朝を迎える。

 闘技場に到着したBL隊。


「じゃあ、あたしはGグループだから先に行くわね!」

「うん、頑張ってねパティ!」

「ええ、ありがとユーキ! 待ってなさい! 必ず勝ち残ってあなたをゲットしてやるんだから!」

「う、うん……頑張って……」


「そうやって張り切ってる人に限ってぇ、思わぬ所でコロッと負けたりするんですよぉ」

「うるさいわねー! 絶対に負けないわよ!」

「でもぉ、私と対戦する前に負けられると困るのでぇ、お守りにこれをあげますぅ」

「え⁉︎ お守り? セラ……」


 セラの意外な言葉に、少し照れくさい顔をするパティ。


「ハイ、これですぅ」


 ポケットの中から細い紐を取り出し、パティに手渡すセラ。


「え⁉︎ これって何?」

「パティちゃんの堪忍袋を縛る紐ですぅ」


「わざわざこんな物仕込んで来るなああ‼︎」



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