第28話 たまにはこんなのもいいよね?
「アジ・ダハーカに弾き飛ばされましたロロちゃんですが、場外寸前で何とか踏みとどまりましたー‼︎」
「さあ、オヤツ抜きがイヤなら、早くあいつ倒して……」
ロロを急かせるネム。
「分かったのです! 全く、魔獣使いが荒いのです!」
ブツブツと文句を言いながら、再びアジ・ダハーカに向かって走るロロ。
「ああっと! 再びロロちゃんがアジ・ダハーカに向かって行くー‼︎ 先程吹っ飛ばされたばかりですが、何か策はあるのかー⁉︎」
「ただ近付いて倒すだけなのです!」
近寄らせまいと攻撃するアジ・ダハーカだったが、それをことごとくかわして接近するロロ。
「凄え! Aランク魔獣の攻撃を難なくかわしてる!」
「頑張れ、ロロちゃん‼︎」
「行けえー‼︎」
「ハイなのです!」
観客の後押しを受けながら、遂にアジ・ダハーカの尻尾まで辿り着いたロロが、両腕でガッシリと尻尾を掴む。
そして、ジャイアントスイングのように、アジ・ダハーカを振り回し始めるロロ。
「でやああ‼︎ なのですー‼︎」
「何とー‼︎ ロロちゃんがアジ・ダハーカを掴んで振り回し始めましたー‼︎ お、恐るべき怪力だー‼︎」
「このまま真上に投げて、落ちて来た所をカウンターでぶっ飛ばすのです!」
ロロが頭の中でこの先の展開をイメージしていると、勢いをつけ過ぎた為に手が滑り、アジ・ダハーカが上では無く真横に飛んで行ってしまう。
「あ……すっぽ抜けたのです……」
「ギャアアアア‼︎」
本部席に向かって飛んで行くアジ・ダハーカ。
悲鳴をあげる本部長。
しかし、本部席に当たる寸前に観客保護の為に張られた魔法障壁に当たり、消滅するアジ・ダハーカ。
「ハ、ハ……ハハ……」
恐怖の為に椅子から転げ落ちた本部長が、腰を抜かしていた。
「アジ・ダハーカをぶん投げたあああ‼︎ あの小さな体で何という怪力! 何というスピード! Aランクの魔獣すらものともしない、最強メイド様だあああ‼︎」
「ん〜、まあ結果オーライなのです」
人差し指でポリポリと頬をかくロロ。
「これで舞台に放たれた全ての魔獣が討伐された訳ですが、これはもう集計の必要は無いでしょう! Eグループの決勝進出者は、無敵の美少女召喚獣ロロちゃんを引き連れた、ネムちゃんだあああ‼︎」
「凄えぞロロちゃ〜ん‼︎」
「あんなの誰も勝てっこないよ〜!」
「このまま優勝だ〜‼︎」
「可愛くて強いなんて最強だー‼︎」
「ロロばっかり……」
「予選では魔装出来ないから仕方無いのです!」
大歓声を受けながら引き上げて行くネムとロロ。
「ロロ1人であんなに強いのに、まだ更に2段階も強くなるなんて知ったら、みんな驚くだろうね」
自分の事のように喜ぶユーキ。
「でも、この大会では獣魔装までは披露できないのよね〜、くだらない制約のせいで」
ジロッとアイバーンを見るパティ。
「そ、そうイジメないでくれ、パティ君。私だって頑張って食い下がったのだよ」
「そうですよパティさん! アイバーン様が抗議してくださらなかったら、召喚士の参加自体認められなかったんですから!」
「まあいいわ! こちらとしては、あの厄介な獣魔装を相手にしなくて済む分、助かるしね」
「パティさん……まだ予選すら闘ってないのに、もうネムちゃんと対戦する事を考えてるんですか?」
「だってあたしとネムが勝ち残って対戦する事は決まってるもの」
「あの……一応、Fグループにはレノさんも居るんですから……」
「ああ、大丈夫ですよぉ、メルちゃん。レノは確実に1回戦でネムちゃんに負けますからぁ」
「酷い……あ、でも昨日は予選突破すら怪しいみたいな事言ってたのに、やっぱり予選は通過すると思ってるんですね? セラさん」
「さすがに予選ぐらいは通過するでしょぉ。まあ、試合形式にもよるでしょうけどぉ、レノのあの防御力だけは中々の物ですからぁ」
「あのカオスの猛攻を受けて生き延びたのだ……おいそれと破れる防御壁では無いさ」
「うん、そだね……これはもう、トーナメント1回戦はネムVSレノで確定かな?」
その頃、闘技場で試合開始の合図を待つレノが、フィーの姿を発見する。
「む⁉︎ あの少女は⁉︎」
フィーに近付き声をかけるレノ。
「フィー君!」
「ん……あなたは……レノ王子?」
「うむ……先日は大変世話になった! 我が妹のセラを助けてくれた事。君には感謝しても仕切れない!」
「礼なんていい……あたしはただ偶然、あなた達を見つけただけだから」
「だとしてもだ! 君が居なかったら、セラは間違いなく死んでいた……いや、実際死んでいたんだが……」
「いえ……そもそもやったのはあたしの……」
何かを言いかけて、暗い顔でうつむくフィー。
「君と同じグループになったのは不本意だが、こちらとしても負けられない理由がある! 試合では遠慮無く行かせてもらうよ⁉︎」
「当然……遠慮なんか、いらない」
そんなやり取りを見ていたパティも、フィーの存在に気付く。
「あれは……フィー⁉︎ あの娘も大会に出てたの?」
そして、Fグループの予選試合が開始される。
「さあみなさん、お待たせしました‼︎ ただ今より、Fグループの予選試合を行ないたいと思います‼︎」
(さあ来い! 例えどんな過酷な試合形式だろうと、俺は必ず勝ち残って優勝する! そして2年前に果たせなかったマナとの結婚を、今度こそ実現させてみせる。待っていろ、マナ!)
レノが決意を新たにしていると、レフェリーが引いた紙が、巨大モニターに映し出される。
「決まりました! な、何と! Fグループの試合形式は! 筆記試験だあああ‼︎」
「へ⁉︎ 試験……?」
呆気に取られるレノ。
客席のユーキ達も驚きを隠せないでいた。
「え⁉︎ 筆記試験ってあの筆記試験?」
「まあ、他に考えられないわよね? それともまた、妨害有りなのかしら?」
実況者も戸惑いながら、淡々とルール説明をする。
「ええ〜、い、一応ルール説明をさせていただきますが……単純に学校で行なわれるような筆記試験を受けていただいて、最高得点の選手が決勝進出となります。最高得点が複数人居た場合は、1人に決まるまで更に難易度の高い問題に挑戦していただきます。なお、試験ですので、カンニング及び他の選手への攻撃は一切禁止とさせていただきます」
「何だとおおお‼︎」
絶叫するレノ。
結果。
「今、採点が終了しました‼︎ 結果は……唯一の百点満点で文句無し! ゼッケン21番、フィー選手だー‼︎ これにより、Fグループからの決勝進出者はフィー選手に決まりましたあああ‼︎」
何とか盛り上げようと、必死にテンションを上げる実況者とは裏腹に、客席はお笑い芸人の渾身の一発ギャグがダダ滑りした時の様に静まり返っていた。
「アイバーン様……今回の試合形式は、完全に失敗だと思います……」
「うむ……後でこれを考えた者を処罰しておこう……」
「いくらレノでもぉ、予選ぐらいは突破出来ると思ってましたがぁ、頭の悪いレノには最悪の試合形式でしたねぇ」
闘技場で真っ白な灰になっているレノ。
ーー レノ・フレイル ーー
後に『鋼鉄の守護神』と呼ばれるようになる。
メンバー1の防御力と耐久力を誇るが、ドMの為、あえて攻撃を受けているのではという疑惑がある。
いつもセラに小馬鹿にされているが、妹の事を何よりも大切に想っている。
「このタイミングで紹介⁉︎」
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