第23話 それがサガというものだ

「これにて、本日の試合は全て終了となります! 明日はCグループとDグループの予選が行なわれます! その他にも色々イベントが予定されていますので、皆様のご来場をお待ちしております! それではまた明日、お会いしましょう!」


 宿に戻って来たユーキ達。

 しかし、何故かアイバーンにベッタリのユーキ。


「ええ〜、別にザウスとはなんにも無いよ〜」

「そうなのか? いや、妙に息が合っていたものでね」


「あ、あんた達、何でそんなに仲良くなってんのよ⁉︎ ユーキ、散々アイ君の口車に踊らされてたのに⁉︎」

「え⁉︎ あ、いやあ……結局僕、最後は0ポイントになっちゃったから、レトロゲーム機は諦めてたんだけど、アイ君が自分のポイントを使ってゲットしてくれたんだ!」

「アイバーン様がプレゼントしてくれたんですか? 良かったですね、ユーキさん」

「うん!」


「なるほど……アイ君、そこまで計算づくだった訳ね」

「ん? 何の事かな? 私はただユーキ君の喜ぶ顔が見たかっただけだが?」

「ふ〜ん……まあいいわ! あたしとしては、ユーキが喜んでるのが1番だし……それはそうと、明日はいよいよアイ君とメル君の直接対決ね」

「うう……胃が痛いです……」

「まあ、試合形式次第、といった所か」


「他にはどんな試合形式があるの?」

「ふむ……私も全てを把握している訳ではないので分からないが、観客を飽きさせないよう、色々趣向を凝らしている筈だ。だが、どんな試合形式であろうと、私は全力で勝ちに行く!」

「ぼ、僕だって全力で行きますからね! アイバーン様!」

「ふむ……受けて立とう!」



 そして翌日。

 前座の各種イベントや試合が終わった後、Cグループの予選試合が開始される。



「さあ皆様、お待たせしました‼︎ ただ今より、五国統一大武闘大会、Cグループの予選試合を行いたいと思います‼︎ このCグループの注目選手は何と言っても、昨日のBグループの予選試合に、同じ王国騎士団の盟友であるブレン選手のパートナーとして出場し、見事ブレン選手を勝利へと導いた、王国騎士団団長にして最強の氷使い! アイバーン・サン・クルセイドだー‼︎」



「キャー‼︎ アイバーン様ー‼︎」

「団長ー‼︎ カッコイイー‼︎」


「団長さんだけあって、やっぱりアイ君って人気あるんだね? 変態だけど」

「まあ、確かに顔はいいからね。変態だけど」

「強さも申し分無いですぅ。変態ですけどぉ」

「頭もいい……変態だけど……」

「スタイルもいいのです。でも変態なのです」


「これ程みんなから変態と言われるとは、アイバーン! 何てうらやましいんだ‼︎」


「うらやましいのかよっ!」



 レフェリーがボックスの中から引いた紙が、巨大モニターに映し出される。



「決まりました‼︎ Cグループの試合形式は、ビーチフラッグスだー‼︎」



「ビーチフラッグス? 走って旗を取るやつだよね?」

「勿論普通の形式じゃないでしょうけどね」


「ビーチフラッグスって言っても、海じゃありませんからねー‼︎」

「試合中に脱がないでくださいよー‼︎」


「む⁉︎ それは、フリ……」


「フリじゃありませんからねー‼︎」



「それでは、ルール説明をさせて頂きます! 全員うつ伏せの状態からスタートして、100メートル先にある旗を取って頂きます! 普通のビーチフラッグスならこれで決まりですが、この試合はそこから更に、最初のスタート地点に旗を持ってゴールした選手が勝利となります! 当然その間、他の選手への妨害、旗を奪う等、何でもオーケーです! 尚、このレースは順位を付けるのが困難な為、行うのは1レース限りとさせて頂きます!」



「一発勝負……最後に旗を持ってゴールした人が、そのまま決勝進出になるんだ?」

「分かりやすくていいんじゃない」

「アイ君とメル君、どっちが勝つかな?」

「ユウちゃん的にはぁ、どっちに勝ってほしいですかぁ?」

「ええ⁉︎ い、いや別に、どっちっていうのは無いよ⁉︎ 2人とも頑張ってほしいし!」

「そんな事言ってたら、案外関係無い人が勝ったりするのよね〜」

「もう! 変なフラグ立てないでよ、パティ!」



 パティがフラグを立てた頃、参加選手達が旗に背を向け、うつ伏せになってスタンバイする。

 そして、試合開始の号砲が鳴り響く。



「さあ、始まりました! ビーチフラッ……あ、いや! 始まっていない⁉︎」



 スタートの合図が鳴ったにもかかわらず、何故かみんな立ち上がろうとしなかった。



「ああいえ! 始まっています‼︎ 合図が鳴ったと同時に、すでに妨害が始まっています‼︎」



「何だこれ⁉︎ う、動けない⁉︎」

「体に氷がまとわりついて!」



「氷だー‼︎ 選手と地面が氷でくっついています‼︎ これはやはり、彼の仕業かー⁉︎」



「悪く思わないでくれ! 合図が鳴ったと同時に試合は始まっているんだからな!」



「やはり仕掛けたのは、ゼッケン18番! 王国騎士団団長、アイバーン選手だー‼︎ どうやらスタートの合図と同時に、他の選手を氷で地面に磔にした模様です!」



 独走状態のアイバーンの背後から、誰かが大声で叫ぶ。


「ああー‼︎ 客席でユーキちゃんがいきなり脱ぎ始めたー‼︎」

「何だとっ⁉︎」


 その声に釣られて、つい立ち止まって客席のユーキを見るアイバーン。

 そして他の観客、とBL隊の面々も釣られてユーキを見る。

 大勢の視線を一身に浴びるユーキ。


「な、な、何言ってんだよメル君‼︎ バカー‼︎」


「何っ⁉︎ メルクだと⁉︎」

「すみません! ユーキさん! アイバーン様!」


 いつの間にかアイバーンを抜き去っていたメルクが、謝りながら先頭を走っていた。


「おのれメルク‼︎ 何て卑劣な作戦を⁉︎」


 慌ててメルクを追いかけるアイバーン。


「釣られるかね? 普通……って、ん⁉︎」


 他の観客達、そしてBL隊は、まだじっとユーキを見つめたままだった。


「いや、脱がないからねー‼︎」



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