第17話 良く言えば言葉遊び、悪く言えばオヤジギャグ

 尚も攻撃を続けるパティを必死に止めようとするメルク。


「パティさん、ダメですってば! やるなら選手に誘われてからにしてください‼︎」

「だって誰も誘いに来ないじゃないのよー⁉︎」


 実はユーキを誘おうと近くまで大勢来ていたのだが、ブレンやパティの迫力に気圧されて、誰も声をかけられずにいた。

 しかし周りの選手が尻込みする中、1人の男がユーキに声をかける。


「俺と来てくれ‼︎ ユーキちゃん‼︎」


 その男は以前、リーベンのイベントでユーキ達と戦った四天王のあの男だった。


「君は確か、ザウ……マウス⁉︎」

「同じネズミなのにハムスターはかわいいって言われて何で俺達は嫌われ……違う! マウスじゃなくてザウスだ‼︎ てか今、ザウスって言いかけただろー⁉︎」

「テヘッ、バレた⁉︎ そう言えば君はノってくれるな〜って思ったから」


「ま、まあそれはいい……ユーキちゃん! 俺と来てくれ!」

「えと……君が指示されたのは何?」


 ザウスがユーキに紙を見せると、そこには【美少女】と書かれていた。


「うわっ、本当にあった……」

「これを見た瞬間、すぐユーキちゃんの顔が浮かんで来たんだ!」

「ちょっとー! あたしはどうなのよ⁉︎」


 早くアイバーンを追いかけたいパティが絡んで来る。


「あ、いや! パティちゃんは何というか、かわいいというよりは美しいっていうイメージだから!」


 何とか誤魔化そうとするザウス。


「ふ〜ん……まあいいわ! ユーキの方がかわいいのはあたしも認めてるし」

「美少女だと言われて行くのも何だけど、いいよ! 面白そうだから行ってあげる!」

「そうか! ありがとう!」


 そんなやり取りを見て、尻込みしていた他の選手達も次々ユーキに声をかける。


「ユ、ユーキちゃん‼︎ 俺と来てくれないか⁉︎ ほら、俺が指示されたのはとても強い女の子だ! まさにユーキちゃんの事だろ⁉︎」

「わあ、いつの間にか僕、強いって認識されてたんだ……ちょっと感激……」


「なら俺なんて、ピンク髪の女の子だ! そのまんまだろ⁉︎」

「そのまんまだね」


「私なんてイケメンな女の子よ! これこそユーキちゃんに相応しいわ!」

「イケメンて……まあ、ヤマトの事を含めれば、あながち間違ってはいないのか?」


「僕はほら! 彼女にしたい娘ナンバーワン!」

「いや何のアンケートだよ⁉︎」


「だったら俺のは!」

「いや、僕のやつこそ!」

「いいえ、私の方が!」


「ちょ、ちょ、ちょおーっと待って‼︎」


 両手を前に出し、アピールを静止させるユーキ。


「みんな誘ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり礼儀として1番初めに誘ってくれたザマスと行くよ!」

「そうザマス! 俺が1番初めに声をかけたんザマス! 後から来た奴は引っ込んでるザマス! そして俺の名はザウスザマス!」


「そっか……そりゃそうだよな……」

「くそーっ! 来てくれるって分かってたら、最初に声かけるんだったー!」


「ゴメンね! さあ、それじゃあせっかく出るなら1位を狙いたいし、飛ぶよ‼︎ ザウルス‼︎」

「ギャアオオス‼︎ ザウウウス‼︎」


 ザウスの手を握って、飛行魔法で先頭のアイバーン達の所まで一気に飛翔するユーキ。

 ユーキ達が飛び去った後、残された選手達に問い詰めるパティ。


「ねえ! 強い女の子とか彼女にしたい娘なら、別にあたしでもいいんじゃないの⁉︎」

「あ、いや……それはそうなんですが……」

「パティさんはそのー、なんて言いましょうか……」

「何よっ⁉︎ 言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ⁉︎ てか何で急に敬語なのよ⁉︎」


「あ、俺! 俺が指示された条件なら、パティさんにピッタリです!」

「あ、俺も!」


 2人の勇敢な男が名乗りを上げ、引いた紙を見せると、そこに書かれていたのは【ドSっぽい女性】と【女王様みたいな人】だった。


「誰がドS女王様よー‼︎」

「ぐはあっ‼︎」

「がはあっ‼︎」


 パティの掌底アッパーが炸裂し、吹っ飛ばされる2人の勇者。


「いや、女王様は別にいいんじゃないでしょうか?」

「ほかはっ⁉︎」


 パティがギロッと睨みつけながら問い詰めると、後ずさりして逃げ出す選手達。


「あ、こらっ! 逃げんなー‼︎」

「だから、誘われて無いのに攻撃したらダメですってば、パティさ〜ん‼︎」


 その頃、先頭集団の中でバトルしていたアイバーン、ブレン組に追い付いたユーキ、ザウス組。


「居た‼︎ よし、まだ誰もゴールしてないみたいだね⁉︎ 仕掛けるよ! アイス」

「炎使いなのにアイスなんて名前は変だよね〜⁉︎ でもザウスだから問題無いけどな‼︎」

「ニードル‼︎」


 つらら状になった無数の氷の塊が、ブレンに向かって飛んで行く。


「いや氷魔法を唱えただけか〜い⁉︎」


 つい反射的にノッてしまったザウスであった。


「むっ⁉︎ ブレイズ‼︎」


 ブレンから噴き上がった炎が、ユーキの放った氷の槍を溶かして行く。


「ゔぇ⁉︎ あっさり溶かされちゃった⁉︎ 炎属性には氷属性が効くんじゃないの⁉︎」

「確かに炎属性には氷属性や水属性が有効だが、それは相手にも言える事。あとはお互いの魔力が勝敗を分ける」

「単に魔力負けしたって事か……なら今度はもっと魔力を高めて!」


 ユーキがロッドを回そうとするが、片手の為上手く回せないでいた。


「む⁉︎ 片手での連続回しは中々難し……」

「ユーキちゃん、降ろしてくれ! 俺と一緒じゃ闘いにくいだろ⁉︎ あの2人が相手じゃ簡単には通してくれないだろうから、どの道闘うしかない!」

「ん……分かった、降りるね」


 アイバーン達の前に降り立つユーキ達。


「ユーキ君……君も来たのか⁉︎ それと貴様は……サーカス⁉︎」

「移動だらけで巡業も楽じゃないんだよな〜。違う‼︎ ザウスだ‼︎」

「ふむ……相変わらずノリの良い奴だ」


「そうか! 君が以前アイバーンの言っていた……王国騎士団は君を歓迎するぞ! カラス!」

「色が黒いってだけで嫌わないでほしいよ……だからザウスだ‼︎」

「なるほど! これは愉快な奴だ」


「遊んでないで闘うよ! サニーレタス!」

「普通のレタスより、段違いに栄養価が高いんだぜ? じゃな〜い‼︎ てかあんたら、最後にスが付けば何でもいいと思ってるだろー‼︎」



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