第18話 ユーキってやっぱりチョロイン?

「先頭を行くアイバーン、ブレン組に仕掛けたのは、先程のAグループの試合に引き続き登場のユーキちゃんだー‼︎ しかし、思わぬ形で実現しましたこの組み合わせ! 王国騎士団トップ2の2人を相手に、どう闘うのかユーキ選手ー‼︎」


「フッ、俺の存在は無視か……」


 ちょっぴりヘコむザウス。


「あっと、見事にユーキちゃんを誘い出す事に成功しましたゼッケン353番、座イス選手も忘れてはいけません!」


「長く座ってると腰が痛くなるから、やっぱり座イスがいいよな! 違う! ザウスだ‼︎」


「それにしても、こうも簡単に誘いに乗るとはユーキちゃん、意外とチョロい娘なのかー⁉︎」

「チョロい娘ゆ〜な〜‼︎」


「敵を前にしてよそ見とは……俺様もナメられたもんだな! バーニングファイアー‼︎」

「やばっ‼︎」

「ユーキちゃん‼︎」


 ユーキを狙って放たれた火炎弾を、身を呈して防ぐザウス。


「ザウス⁉︎ あ、いや……えと……」

「いや、思い付かないならわざわざ言い直さなくてもいいから! それに、ふざけて勝てる相手じゃないぜ?」

「確かにね……アイ君と、アイ君に匹敵する強さのブレン、か……」



「ねえセラ⁉︎」

「何ですかぁ? オヤツは分けてあげませんよぉ?」

「別にいらないわよ! ユーキってば張り切って出て行ったけど、今回だってもしユーキが誰かに負けたら結婚の権利が発生するんじゃないの?」

「これも正式な試合ですからぁ、当然そうなりますぅ」

「あの娘分かってるのかしら? 普通に闘うより負ける確率がうんと上がるってのに⁉︎」

「今頃アイちゃんに聞かされてぇ、物凄く焦ってる頃でしょうねぇ」



「ユーキ君、修行で手合わせする事はあったが、こうして正式な試合で闘うのは初めてだね?」

「うん、そだね」

「一応はこれも武闘大会の試合になる訳だが……という事はこのレースで君に勝てば、君と結婚する権利を得られる、という事でいいのかな?」


 そう言ってニヤリと笑うアイバーン。


「へ⁉︎ ま、まあそういう事になる、のかな?」

(しまったあああ! 結婚の事すっかり忘れてたあああ! え⁉︎ てか直接闘って僕に勝ったらって事じゃないの? こんなレースでも一位にならないといけないの? うわああ! 自分でリスク増やしちゃったよおおお!)


 セラの言う通りだった。


(くっ、どうしよ? こんな2人をまともに相手してたんじゃ無駄に消耗するだけだし……いや待てよ? 別に無理して闘う必要は無いんだ⁉︎ 要は先にゴールしちゃえばいいんだよな⁉︎)


「ザウス!」

「ん⁉︎」


 ザウスに耳打ちするユーキ。

 同じくしてブレンとアイコンタクトをするアイバーン。


「さあ、それじゃあどっちが強いか決めようか⁉︎ アイ君!」

「ふむ……望むところだ。かかって来なさい、ユーキ君!」


「1度あんたと闘ってみたかったぜ! ブレン副隊長さんよ!」

「同じ炎使いとして、熱い闘いをしようじゃないか! ザウス!」


「行くよ! ザウス‼︎」

「ああ‼︎」

「フラッシュボム‼︎」


 いきなり目くらましを放ち、すかさずザウスの手を取って飛び上がるユーキ。


 ガアンッ‼︎


「あ痛っ‼︎」


 アイバーン達の上を通り過ぎようとしたユーキ達が、見えない壁にぶち当たって落下する。


「いったああああ‼︎ 何かあったああ‼︎」


 頭を抑えて転げ回るユーキ。


「ユーキちゃん! あそこ‼︎」

「え⁉︎」


 ザウスに言われてユーキが前方を見ると、アイバーンとブレンがすでにゴールテープを切っていた。


「ああああ‼︎ やられたあああ‼︎」


「何と⁉︎ ゴール前で対峙していた4人ですが、ユーキ選手から強烈な光が放たれた直後、既にアイバーン、ブレン組はゴールしていましたー‼︎ あの一瞬に一体何があったのかー⁉︎」


「アイスミラージュ! アイバーン様の得意技ですね」

「ええ、自分達の残像を残すと同時に、見えない氷の壁を作り出してユーキ達の進路を塞いだ。目くらましが逆に仇になったわね」


 その後、何とか2位でゴールしたユーキ、ザウス組。


「ぶうー‼︎ アイ君ズルい! 闘わずに逃げるなんてー‼︎」

「む⁉︎ おかしな事を言うね、ユーキ君? 私達はただ君達がやろうとした事を、一足早くやったにすぎないが?」

「むぐっ! さ、さ、さあ⁉︎ 何を言っているのか分からないなあ⁉︎」

「仕方ないよユーキちゃん、あの2人の方が一枚上手だったって事だ」

「むぐぎぎぎぎ」


 悔しい気持ちを抑えられず、尚もイチャモンを付けるユーキ。


「だ、だけど、2人共王国騎士団なのに、こんな勝ち方でいいの⁉︎」

「ハハッ‼︎ 戦場では綺麗事を言ってられないからなー‼︎」

「戦いにおいて、相手の隙や弱点を突くのは常套手段なのだよ。ユーキ君達が逃げるだろうと予測したのでね、先に罠を張らせてもらったという訳だ」

「むぐぐぐぐ! ぐやじいいい!」



「全選手がゴールしましたので、ただ今より指示された条件と合っているかの確認が行なわれます!」


 ブレンの引いた紙が、レフェリーによりモニターに映し出される。


「ブレン選手が指示されたのは親友! そして連れて来たのはアイバーン選手! これはもう、先程の息の合った闘いぶりを見れば、文句の付けようがありません!」


「な⁉︎ 違っ!」

「次は2位のザウス選手!」


 アイバーンが否定する間も無く、進行されて行く。


「ぐ……ま、まあいい……」

「ザウス選手が指示されたのは美少女! そして連れて来たのはユーキちゃん! これはもう、ここに居る全員が納得でしょう! 次は3位の……」



 確認が進む中、アイバーンとユーキが対峙する。


「まあ何にせよ、このレースは我々が勝ったから、まずは私とブレンがユーキ君と結婚する権利を得た訳だが、どうするね? 私としてはこのまま逃げ切ってもいいのだが、君が権利を取り返したいと言うのなら、次の第2レースにも参加するが?」


「当然! 何とか条件こじつけて出てよね! そう簡単には結婚してあげないんだからっ‼︎ ザウスも絶対誘いに来てよ⁉︎」

「あ、ああ、それは勿論だが……」

(しかしユーキちゃん、分かってるのか? 相手はこの2人だけじゃ無いし、みんながみんなこの大会に参加してる訳でもない……次も出るという事は、ヘタすりゃ更に結婚相手が増える可能性だってあるんだぜ?)


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