第4話 BLだとか百合だとか

 その夜、宿屋に戻って来たユーキ達が、アイバーンより報告を受ける。


「皆の登録は済ませておいた。ただ、ネム君ロロ君……君達2人の登録だけはまだ出来ていないんだ」

「何で? イジメ?」

「嫌がらせなのです!」


「いやいや! そうではない! ネム君が召喚士、というのが少々問題になってね……」

「またあ? 闘技場ならともかく、今回もなの⁉︎」


「いや勿論、今回の大会はネム君も国の復興をかけているからね……私も食い下がったよ! 結果、召喚獣一体だけならば参戦出来る事になったんだ」


「何よそれ⁉︎ 召喚獣を生み出すのが召喚士の能力なのに、それに制限をかけるなんて不公平じゃないの‼︎」

「でも、ネムちゃんの場合魔石さえあれば無限に召喚獣を生み出せる訳ですから、そうなると収拾つかなくなりますよ?」

「何よメル君⁉︎ 運営の肩を持つの⁉︎」

「いえ! そういう訳では……」


「一体……何でもいいの?」

「ああ、それは何だって構わない……出現させているのが一体でさえあれば、途中で別の召喚獣に変えても構わない。だから、ネム君とロロ君がそれぞれ個々として参戦するか、ロロ君と合体して1人として参戦するのかを確認したかったのだ」


「確かに召喚獣は強力ですがぁ、ネムちゃん自身は無防備になっちゃいますねぇ」

「なら、例の獣魔装ってのをやればいいんじゃないんですか?」


「ん? 獣魔装、というのは何だ?」

「ああ、レノさんは知らないんでしたっけ? ネムちゃんは自分が生み出した召喚獣を鎧としてまとう事が出来るんですよ」

「何だと⁉︎ だが俺と戦った時は、そんな事はしてなかったと思うが?」

「レノ如きに使うまでもなかったんじゃないですかぁ?」

「なにおぅ‼︎」


「でも確かネムって、ロロと合体してからじゃないと獣魔装出来ないんだよね?」

「出来なくはないけど、体が保たないの……」

「そんなの、初めからロロと合体しておけば誰も分からないわよ! その上で獣魔装をやればいいじゃないの⁉︎ ね、あなただって勝ち残りたいんでしょ? ネム⁉︎」


 ネムの耳元で、小声で囁くパティ。


「悪魔の囁きはやめないかっ! パティ君!」


「勝ち残りたいけど、ズルはしたくない……だからロロと合体して、獣魔装無しで戦う……」

「そうか……了解した! では明日、改めてネム君の登録をしておくよ」

「うん、お願い……」


「やっぱりネムちゃんはぁ、パティちゃんと違って純粋ですぅ」

「もう一度冥界に送るわよ⁉︎ セラ!」

「そんな事したらぁ、毎晩部屋の照明を高速点滅させてやりますぅ」

「ごめんなさい……うっとおしいからやめて……」


「でもまあ、ロロと合体しただけの状態でもS級のリンドブルムを圧倒してたぐらいだから、充分脅威だけどね」

「確かにね……考えてみれば、普通の魔装でその強さなのに、そこから更に獣魔装なんてものがあるんだから、ホント反則よね」

「あ⁉︎ でもそうなると、そのままの状態で獣魔装出来るユーキさんって……とても勝てる気がしないんですが……」


「いやいや、あの獣魔装ってパワーがあり過ぎて、中々コントロールが難しいからさ……ん? じゃあ僕にも召喚獣の制限かかるの?」

「召喚士状態で戦うのであれば、当然そうなるね」

「そっか……う〜ん、どうしよっかな〜?」


「でもユーキさんの場合、例え召喚獣を制限されても、いくらでも戦いようはあるんですよね? しかも、エターナルマジックなんていうとんでもない能力まであるし」


「うん、そうだよね⁉︎ やっぱりこんな能力反則だよね? だから……」


「出場辞退なんかしたらぁ、不戦敗とみなして、私達全員と結婚してもらいますからねぇ」

「んなっ⁉︎ 何だよ全員って⁉︎」


「全員っていうのはぁ、その集団に属している人全てって意味だからぁ、この場合はユーキを愛し隊のみんなの事を指しますぅ」

「いやだから! 言葉の意味を聞いてるんじゃなくて……てか、まだ愛し隊とか言ってんの⁉︎」


「愛し隊はお気に召しませんかぁ? それならばぁ、そうですねぇ……ブレイブラバーズ、なんてのはどうですかぁ?」

「お⁉︎ 何かカッコイイかも……どういう意味?」


「ブレイブはぁ、勇者とか勇敢な人って意味ですからぁ、ユウちゃんを指しますぅ」

「ま、まさか⁉︎」

「ラバーズは恋人達って意味ですからぁ、かなり苦しいですがぁ、愛し隊って事でぇ」

「やっぱりか‼︎」


「ブレイブラバーズ! 略してBL隊ですぅ」

「何か違う意味になってるー⁉︎」


「他にもぉ、ユウちゃんの栄光をたたえてグローリーラバーズ! 略してGL隊ってのもありますぅ」

「百合っ⁉︎ てか、さっきから完全にその略ありきで考えてるよねー⁉︎」

「はて? 何の事ですかぁ? 偶然そうなっただけですけどぉ?」

「セラに限って、絶対にそれはありえない!」

「本当ですってばぁ! この純粋な目を見てくださいぃ!」

「だから見えないのっ‼︎」


「じゃああとはぁ、光り輝くユウちゃんだからぁ、シャイニングラバーズ! 略してSL隊……」

「確信犯っ‼︎」


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