第5話 前前前夜祭
久々にセラのボケが炸裂した後、アイバーンが報告を続ける。
「ああ、言い忘れる所だった……」
「告白ですかぁ? ハイッ!」
「え⁉︎ 何⁉︎」
そう言って、アイバーンの前にユーキを差し出すセラ。
「告っ⁉︎ 告白などしない!」
「しないんですかぁ?」
「な、な、何故私がユーキ君に告白などしなければいけないんだ⁉︎」
「ああ〜! 何か今の言い方傷付くな〜⁉︎」
「あ、いや! 違うんだ! 決してユーキ君が嫌いだからしないのではなくてだね‼︎」
「フフッ、分かってるよ! アイ君ってば、いつもリアクションが面白いから、ついからかってみただけ……ゴメンね!」
「まったく……ま、まあそれはいいんだ! 言いたかったのは、前夜祭の事なんだ」
「前夜祭? 前にリーベンの闘技場イベントでやったみたいな?」
「そうだ! もっとも今回は規模が違うし参加人数も桁違いに多いので、前夜祭も3日間に分けて王宮にて行われる」
「いや3日前の前夜祭って……もう前夜ですらないし……」
「細かい事はいいとして」
「流した⁉︎」
「愛し隊のみんなにも参加してもらいたいのだが……」
「愛し隊言うな‼︎」
「BL隊としては、当然参加するわよ!」
「BL隊もやめぇ‼︎」
「GL隊ネム、参加しま〜す‼︎」
「GL隊もダメ!」
「SL隊ロロ、ついて行くのです!」
「SLだけにねっ⁉︎」
「では、マナに殴られ隊の俺も参加する!」
「変なの出て来た⁉︎」
「ぼ、僕もさ、参加し隊です……」
「メル君遠慮し過ぎ!」
「では、ユウちゃんとイチャイチャし隊、全員参加ですねぇ」
「もう無茶苦茶‼︎」
「了解した……ユーキ君を舐め回し隊、全員参加と伝えておくよ」
「……変隊……」
アイバーンの言葉に、全員がドン引きする。
「アイバーン様……舐め回し隊というのはちょっと……」
「アイ君、さすがにそれは引くわ〜」
「アイバーン、リアル変態……」
「ガチバーンなのです」
「見事な変態っぷり、感服したぞ!」
「最後のオチを失敗しましたねぇ」
「わ、私だって言いたくは無かったが、この流れだと言わざるを得ないだろう⁉︎」
そして、何やかんやあって前前前夜祭の日を迎える。
「ハショリ過ぎ‼︎ てか、前前前夜祭って何だ〜⁉︎」
前前前夜祭が行われる王宮に到着した、ユーキを愛し隊……いや、BL隊。
「いちいち言い直さなくていいわっ!」
「誰に突っ込んでるの? ユーキ」
「いや、こっちの話」
「ところでユーキ⁉︎」
「ん? 何?」
「あなた、そのままでいいの?」
「え⁉︎ そのままってどういう……ハッ! 最終形態に変身しなくてもいいのかって事か⁉︎」
「ああ、そういうのはいいから」
せっかくのボケを、パティに軽くあしらわれるユーキだった。
「うう〜、パティ冷たい〜」
「ユーキの姿のまま前夜祭に参加して大丈夫なのって事! 前にリーベンでの前夜祭で、大騒ぎになったんでしょ?」
「あれは……セラの嫌がらせで、大勢の前でいきなり正体バラされたから変に目立っちゃっただけで……今回は各国を代表する戦士が集まるんでしょ? ならリーゼルじゃないんだし、普通にしてれば僕なんか大して騒がれないよ!」
「ふ〜ん、ならいいけど……」
(ユーキ……あなた、自分がどれ程周りの人に注目されているか、全然分かってないのね⁉︎)
パティの心配をよそに、堂々と会場に入って行くユーキ達。
すると、ユーキを見た周りの人達が早速騒ぎだす。
「オイ! あのピンクの髪の娘ってユーキちゃんじゃないか⁉︎」
「確かにユーキちゃんだ! あ! 前夜祭に参加してるって事は、やっぱり武闘大会に出るのかな?」
「それはそう……いや! 今回は各国の代表も集まるから、実はどこかの国のお姫様だったりして⁉︎」
「ああ、ありえる! ユーキちゃんってどこか気高いオーラみたいな物を感じるもんな〜」
「んふふ〜、正解ですぅ」
噂をしている男達に聞こえないぐらいの小さな声で囁くセラ。
「セラ! 色々聞かれちゃうと、また面倒な事になるから」
「聞かれちゃうと困る事ぉ? ユウちゃんを倒したら、ユウちゃんと結婚出来るって事ですかぁ?」
「だから〜!」
「え⁉︎ 今の話、マジ⁉︎」
「え⁉︎」
「へ⁉︎」
いつの間にかユーキ達の後ろに居た男に、思いっきり聞かれてしまう。
「い、今の話とは、どの話かな?」
「ユーキちゃんを倒したら、ユーキちゃんと結婚出来るって話‼︎」
「な、ななな、何言ってんのさ⁉︎ も、勿論冗談! 冗談だからね⁉︎」
しかし、慌てて取り繕うユーキの様子が、かえって話の信憑性を増す型となる。
「その焦りっぷり……本当なんだ……」
「あ、いや、だからさ! 冗談だって……ね、ねえ! 何で離れて行くのかな?」
「お〜い、みんな〜‼︎」
「待てーいっ‼︎」
何とか話の拡散を防ごうとしたユーキだったが、アッサリと周りに広められてしまう。
「何いっ‼︎ マジかー⁉︎」
「それが本当なら俺、全身全霊をかけてユーキちゃんを倒しに行くよ‼︎」
「くそーっ! せめて何とか同じ予選エリアにならないかなー⁉︎」
「あ、ああ……広まっちゃった……」
たちまち青白い顔になるユーキ。
それを見たセラが、申し訳無さそうに詫びを入れる。
「あ、あのぉ……ユウちゃん、ゴメンなさいねぇ……まさか聞かれてるなんて思ってなくてぇ」
「嘘だ! セラお姉ちゃん、絶対分かっててワザと言ったんだ!」
「ワザとじゃないですよぉ!」
「そう言えば、前のリーベンの時だってそうだ! あんな大勢の前で正体バラされたし!」
「あ、あれはヤマちゃんが私を見捨ててぇ、女の人達と楽しそうに喋ってたからぁ!」
「更に言えば、その前のベルクルでパティと戦った時も、ヒーラーが普通に使う魔装だなんて騙されて、あんな目立つ魔装使わされたし!」
「あの時はぁ、パティちゃんに勝つ最適な方法が私の魔装だっただけでぇ、別に他意は……」
「絶対嘘だー‼︎ よくよく考えたらセラお姉ちゃんって、いつも私を目立たせよう目立たせようとしてるんだー‼︎ セラお姉ちゃんの嘘つきー! うわああああん‼︎」
今までのセラへの疑惑が一度に蘇り、激しく泣きじゃくるユーキ。
「ほらぁ、やっぱり泣かせてる!」
「ち、ちょっとユウちゃん⁉︎ こんな所で泣いたら、余計に目立ちますからぁ!」
「お姉ちゃんのバカああああ‼︎ 私帰るー‼︎」
泣きながら会場を出ようとするユーキだったが。
「はぁいそこまでぇ!」
会場を出る寸前で、セラに首元を掴まれるユーキ。
「んふふ〜、中々迫真の演技でしたがぁ、そうはいきませんよぉ」
(チッ! これでもダメか〜⁉︎)
懲りもせずに逃亡を企てたユーキだったが、またしてもセラに阻止されてしまうのだった。
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