第22話 FFとは関係ございません

 空中で、バーダと対峙しているパティ。


「ネムがこちら側に居るから何? それがバレた所で、こっちには何の不都合も無いわ! 当然知ってるとは思うけど、ネムを殺した所で召喚獣は消えないわよ⁉︎ むしろ抑えが無くなって、無差別にあんた達を襲うだけよ!」


「勿論そんなバカな事はしません! 逆にそんな事をすれば、私の方がカオス様に殺されてしまいますしね。とはいえ、あの厄介な魔獣達をこのままにはしておけません」

「じゃあどうするってのよ?」


「フフ……まあ別に殺さなくても、言う事を聞かせる方法はいくらでもあります……まして相手が子供なら尚更ね……」


 そう言ってニヤリと笑うバーダ。


「それをあたしが許すと思ってるの?」

「フフ、あなたのお相手をしてあげたい所ですが、今は急ぎますので……あなた達‼︎ この娘を足止めしなさい‼︎」

「ハッ‼︎」


 周りに居たパラス兵に命令した後、地上に向けて降下して行くバーダ。


「あっ、こら! 待ちなさい‼︎」

「おっと! 行かせねーぞ⁉︎ お嬢ちゃん!」

「このおっ!」


(でもまあ、あんな奴にネムが負ける事は無いか……)


「ならあたしはこのままここで、こいつらを駆逐する‼︎」





「さて……ネム王女はどこに居ますかね? この辺りから強力な魔力を感じたんですが……」


 しばらく飛行していると、海岸線に居るネムを発見するバーダ。


「居た! どうやらあの娘のようですね⁉︎」


 ネムの前に降り立つバーダ。


「誰? あっ! あなた、あの時の……梅干し‼︎」

「う、梅干し⁉︎ はて? 何の事を仰っているのかは分かりませんが、私はパラス軍、リーゼル侵攻作戦総大将のバーダと申します。あなたがシェーレ国のネム王女、ですね?」


「⁉︎ 王女? さささっ、さ〜て何の事かしら? 私は通りすがりのただのサーファーよ!」

「……あなた方は、ホントに嘘が下手ですね……」





 ネムがバーダを警戒して集中力が乱れた為に、パラス船団を襲っていた召喚獣達の動きが鈍くなる。


「ん、何だ⁉︎ 何だか魔獣の動きが鈍くなったような? もしやバーダ様が⁉︎ 何にしてもチャンスだ……よし! 今のうちに抜けるぞー‼︎」


 魔獣の隙を見て次々にかわして進軍するパラス兵。

 上空のパティの所にも、大量に増援がやって来る。


「キリが無いわねー、てかむしろ増えてる気がするんだけど……」


 明らかに増えていた。




「あなた……どうして私の事知ってるの?」

「簡単な話ですよ! シェーレ侵攻作戦の時も、私は総大将としてパラス軍を指揮していましたからね」

「……じゃあ、あなたが私の父様や母様、シェーレのみんなを……」

「ええ、私が指示して皆殺しにしました!」


 一瞬にしてネムの顔が、怒りの形相に変わる。


「あなただけは……必ず私が倒す!」

「出来ますか? いくら成長したとはいえ、たかだか10歳前後のあなたに⁉︎」


「レヴィたん‼︎」


 すでに呼び戻していたリヴァイアサンが、背後からバーダに襲いかかる。


「おおっとぉ!」


 その攻撃を何とかかわしたバーダが、リヴァイアサンから距離を取るように海岸線から離れ、ネムとリヴァイアサンを正面に捉える位置に移動する。


「フフ! その魔獣は、やはりあなたが召喚したんですね? でもいくらS級の魔獣といえど、リヴァイアサンは水棲の魔獣……海から離れてしまえばどうという事はありません!」


「何を勘違いしてるの? レヴィたんを呼び戻したのは、あなたを攻撃する為じゃない! こうする為よ! 獣魔装‼︎ リヴァイアサン‼︎」


「え⁉︎ 何ですって? 獣魔装?」


 ネムの周りに魔方陣が現れ、光となったリヴァイアサンがネムと重なり、その光が消えると水龍をイメージさせるような鎧を装着したネムが現れる。


「バ、バカな⁉︎ 魔獣を鎧に変えてまとったというのですか⁉︎ そんな魔装聞いた事も無い……な、何て恐ろしい娘に成長したんでしょう……」





 上空で戦っていたパティが、魔方陣の放つ光に気付く。


(あれってもしかして、ネムの獣魔装の光? それ程の相手だっていうの? あたしも加勢に行った方がいいかしら?)


 ネムを助けに行こうとするパティだったが、際限なく現れるパラス兵に足止めをくらう。


「もおー! ほんっとにしつこいわねー‼︎ ミーティアストリーム‼︎」

「ぐわあっ‼︎」

「そ、空から岩が‼︎」

「う、撃ち落とし……があっ‼︎」


 無数の流星群が降り注ぎ、次々にパラス兵を撃ち落として行く。






 地上でバーダと対峙しているネム。


「こういうのは好きじゃないけど……みんなの仇を取らせてもらうわっ‼︎」

「やれるものならやってごらんな……ん⁉︎ 何です?」


 無数にバーダの周りに落ちて来るパラス兵に驚き空を見上げた瞬間、パティの放った岩が落ちて来てバーダを押し潰す。


「なっ⁉︎」


 ドゴオオオオン‼︎


「へ⁉︎」


 あっさり潰されたバーダを見て、茫然と立ち尽くすネム。

 そこへ、パラス兵を蹴散らしたパティが降りて来る。


「ネム! 大丈夫?」

「パティ、姉様……」

「ごめんなさい! ちょうど真下に居るなんて知らなくて……大丈夫? 当たらなかった?」


 未だ茫然しているネムを見て。


「どうしたの? ネム、大丈夫?」


 無言のまま岩に潰されているバーダを指差すネム。


「え⁉︎ あれってさっきの奴? あ〜! 流れ弾に当たった訳ね」


「うっ、うっ、うっ……」


 ネムの頬を伝う涙。


「ええ⁉︎ な、何? 何で泣いてるのよ⁉︎」


「パティ姉様酷いぃ! あいつはネムが倒す筈だったのにぃ〜‼︎」


 激しく泣きながらパティに抗議するネム。


「え、ええ⁉︎ べ、別に誰が倒してもいいじゃないの⁉︎」

「そういう事じゃないぃ〜‼︎ うわぁ〜ん‼︎」

「ええええっ⁉︎ ど、どういう事よ? 分かんないわよぉ⁉︎」



 ただオロオロしているパティだった。


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