第21話 絶好調である!
S級魔獣のリヴァイアサンの出現により、更に混乱するパラス船団。
「くっ! 海上においてリヴァイアサンを相手にするのはリスクが高過ぎます! 飛行できる者は空から上陸しなさい! 飛べない者はなるべく戦闘を避け、魔獣の隙を見て突破しなさい‼︎」
「ハッ‼︎」
バーダの指示により、飛行できる兵達が続々と舞い上がり上陸を目指す。
「ところがギッチョン‼︎」
しばらく飛行したパラス兵に、無数の光の矢が次々に襲いかかる。
「ぐわぁっ‼︎」
「な、何だ⁉︎ どこから?」
「この矢、追いかけて来る⁉︎」
「逃げ切れない⁉︎ があっ‼︎」
「オイッ! あそこだ! あそこに誰か居るぞー‼︎」
「あたしは風の魔道士、パトリシア・ウィード! ユーキを傷付けようとする者は、何人たりとも通しはしない‼︎」
「ガキがっ‼︎ ナメんじゃねぇ‼︎」
パティに襲いかかるパラス兵だったが、風の魔法弾であっさり撃ち落とされる。
「このガキ‼︎」
「ナメてんのはどっちよ……雑魚の分際であたしに勝てると思ってるの? 身の程をわきまえよ! 俗物‼︎」
妙なスイッチが入った、パティの異様な雰囲気に圧倒されるパラス兵。
「ガキ相手に何ビビってんだ‼︎ やっちまえ‼︎」
パティの周りを取り囲み、一斉に襲いかかるパラス兵。
「ホーミングアローズ! ライトニングストライク! トルネード‼︎」
様々なタイプの魔法を放ち、次々にパラス兵を撃ち落として行くパティ。
「ハハハハーッ! 落ちろ! カトンボ‼︎」
完全にノリノリのパティ。
「何なんだこのガキ⁉︎ つ、強過ぎる‼︎」
「絶好調である‼︎」
リーゼル城の国王並びにユーキ達に、現在の戦況が伝えられる。
「ネム様の召喚獣により、パラス船団の約3割が消失! また、空からの侵入を試みたパラス兵をパティ様が迎撃! お二人の活躍により、現在一兵たりとも上陸を許しておりません‼︎」
「ウオオオオ! あの2人凄え‼︎」
「そうか……あの2人には、本当に感謝しか無いな!」
「パティちゃんが凄いのは分かってますがぁ、30体もの魔獣を操るなんて、ネムちゃんは恐ろしい娘ですねぇ」
「ああ、それなんだけど……一度に意識して操れるのはせいぜい5体ぐらいで、後はオートで動かすって言ってたよ? もっとも、ネム自身が攻撃をされたら防御に集中しないといけないから、魔獣の操作がおろそかになるらしいけど……」
「そうなんですかぁ……でも仮にネムちゃんが攻撃されたとしてもぉ、まず負ける事は無いでしょうねぇ」
「だといいけど……」
依然として魔獣達に苦戦しているパラス兵。
(くっ! かなりの数を沈められてしまいましたねー。これ以上の損失は作戦に支障が……)
「我が軍の死者はどれぐらいですか?」
「ハイッ! あ、え〜っと、その〜」
「ん⁉︎ 何ですか? 歯切れの悪い! ハッキリ言いなさい!」
「あ、ハイ! 申し訳ありません‼︎ そ、それがですね……完全に把握している訳では無いんですが、現時点で犠牲者が出たという報告は入っていないのです!」
「何ですって⁉︎ 犠牲者が居ない? これ程多数の魔獣に襲われながらですか?」
「ハ、ハイ……まだ未確認ではありますが……」
(どういう事ですか? 確かにまだ状況が混乱しているとはいえ、これだけの攻撃を受けて未だ1人の死人も出ていないなど……まさか⁉︎)
「ちょっとあなた!」
「ハ、ハイ‼︎」
「ここの指揮は任せます! もうしばらく持ちこたえなさい!」
「ハッ! え⁉︎ バ、バーダ様、どちらへ?」
「私の考えが正しければ、この状況を打破できる筈!」
そう言って飛び立って行くバーダ。
「バ、バーダ様! お待ちください! バーダ様ぁ‼︎ ……いや、どうすんのよこれぇ⁉︎ くっ! 弾幕薄いぞ! 何やってんの‼︎」
何かを探しているバーダが、パラス兵を足止めしているパティに気付く。
「ん⁉︎ あの人達、まだこんな所でウロウロと⁉︎ 何をやって……おや?」
「バ、バーダ様⁉︎」
「あなた……どこかでお会いしましたかね? 何となく見覚えがあるんですが?」
パティを見たバーダがたずねる。
「その胡散臭い格好……あんた、あの時の⁉︎ やっぱり敵だった訳ね⁉︎」
「ああ! もしかしてあの時、マナ王女と一緒に居た⁉︎ 確か、マナ王女の盾、とか仰ってましたかな?」
「そうよ! あたしが居る限り、ユーキの元には行かせないわ‼︎」
「あの時も気にはなっていたんですが……その、ユーキというのは何ですか? マナ王女のあだ名か何かですか?」
「ユ、ユーキはユーキよ! あたしが最初に会った時にユーキって名乗ったからそう呼んでるだけで、今更変えられないわよ!」
「なるほど……身元を隠す為に偽名を使ったという事ですか……」
「そ、そういうのとは違うわよ!」
「まあそれは別にいいでしょう……ところで、あなたが召喚士ですか?」
「何の事よ?」
「とぼけないでください……あれ程多数の魔獣に襲われながら、我が軍に1人の犠牲者も出ていません。もしあれらの魔獣がノラで、私達の魔力を狙って来たのだとしたら、犠牲者が出ない訳が無いんです」
「へえ、魔獣に襲われたの? それは災難だったわね」
「フフッ! となると、やはり召喚士が操っている可能性が高い……しかし、なら何故敵である私達を殺さないのか? 考えられるのは、マナ王女のように敵であっても命は奪わないという甘ちゃんか、もしくはまだ人を殺めた事の無い子供か……?」
「はあ? バカなのあんた? そんな子供がそんな大量に召喚獣を生み出せる訳無いでしょ? 召喚獣一体召喚するのに、どれだけの魔力がいると思ってんのよ?」
「普通はそう思うでしょう? ところが、私達には心当たりがあるのですよ。かつてヴェルンの隣には、シェーレという名の国がありました。その国の王族であるクラインヴァルト家は、とても優秀な召喚士一族だったのです」
(ん? クラインヴァルト? どこかで聞いたような?)
「かつて我がパラス軍がシェーレに侵攻した時も、多数の召喚獣をもって随分と抵抗されたものです。王族国民を皆殺しにし、最後に幼い王女とメイドの2人だけが残ったのですが……」
(幼女とメイド……)
「我が王カオス様がその王女の強大な魔力をいたく気に入りましてね……元々カオス様は強い者と戦う事を無上の喜びと感じるお方ですので、あえてその王女を殺さずに逃がしたのですよ……」
「ま、まさか……」
「確か……その王女の名前は……ネム‼︎」
「ネム‼︎ セラとユーキに続いて、ネムまで王女様なのー⁉︎」
「フフッ! やはりネム王女はあなた方の側にいらっしゃるのですね? そして今回の召喚獣を生み出したのは、おそらくネム王女ただお一人‼︎」
「しまっ‼︎ あいや、何の事かしら? オホホホホ‼︎」
「いえ、もうバレバレですよ……」
あっさりバラしてしまうパティだった。
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