第20話 ネムたん、出したん、レヴィアたん!
レノとセラが敗れ、リーゼルに捕縛された事が沖合の船に居るパラス軍リーゼル侵攻作戦総大将のバーダに伝えられる。
「……これにより、ヴェルン兵が続々とリーゼルに投降を始めております‼︎」
「そうですか……自分達の方から作戦参加を表明しておきながら、なんと不甲斐ない……やはり我々が直接叩くしかありませんね。全軍! これよりノーヴェ本島に上陸する! 進軍を開始せよ‼︎」
「ウオオオオッ‼︎」
バーダの号令により、パラスの大船団が動き始める。
その船の数、およそ200隻。
同じ頃、パラス軍本隊に備えて準備を始めるリーゼル軍、及びパティ達。
「さあ、いよいよここからが本番ね!」
「ハイ! パティちゃん達がどれだけ持ちこたえられるかが勝負の鍵になりますぅ」
「ねえパティ……」
「ダメよっ‼︎」
「ま、まだ何も言ってないだろー!」
「どうせ、僕も行きたいとか言うつもりでしょ⁉︎」
「そ、そんな事は……ある、けど……」
「それで今回の作戦みたいに、今度はリーゼルの王女がノコノコ出て行って敵に捕まって盾にされて降伏を迫られて、なんて事になったらそれこそ全てが水の泡よ!」
「そ、それはそうなんだけどさ〜」
「どうしても出たいって言うなら、かつてリーゼル最強と言われた力を取り戻してからにしなさい!」
「ぐうっ……分かったよ……大人しくしてるよ……」
「よろしい!」
「じゃあネム! あたしは先に行くわね!」
「ハイ! お気を付けて、パティ姉様!」
「頑張るのです!」
「気を付けてね、パティ!」
「ありがと! じゃ!」
軽くウインクをして飛び立って行くパティ。
「それじゃあユーキ姉様……ネムも行って来る……ロロ、姉様の事お願いね……」
「ハ、ハイなのです」
「え⁉︎ ちょっと待ってネム‼︎」
「なあに?」
「まさか今回もロロを置いて行くつもりなの?」
「うん……」
「ダ、ダメだよ! さっきと違って今度の敵は本気で殺しに来るんだから、ネム1人じゃ危険だよ‼︎」
「でも……ユーキ姉様を守らないと……」
「僕の事なら大丈夫だから! 今回はセラも、レノだって居るし……ね?」
「ユウちゃんは私とぉ、一応レノも守りますから心配いりませんよぉ?」
「一応とは何だー‼︎」
「あらぁ⁉︎ 起きてたんですねぇ? レノ」
「分かった……それじゃあロロ! 魔装するよ!」
「ハイなのです! ドッキングなのです!」
ロロがネムの正面に立つと魔方陣が現れ、ネムとロロの体が光に包まれる。
ロロの姿がネムと重なり光が消えると、少し成長したネムが現れる。
「それじゃあ行ってくるわ! ユーキ姉様! ネムが居ない間にユーキ姉様に手を出したらダメだからね? セラ姉様!」
「出しませんよぉ! 2人きりにならない限りはぁ……」
「オイッ!」
「ネム! 気を付けてね!」
「大丈夫よ、姉様! ロロと合体したネムは無敵なんだから! 完全無欠ネムなんだから!」
「あ、その言い回しも反映するんだ⁉︎」
「いっくぞおーっ‼︎」
凄まじい身体能力で城下町を駆け抜けて行くネム。
「セラ、今のネムと本気で戦って勝てる?」
ふと興味本位で質問するユーキ。
「結界に捉える事が出来れば、とは思いますがぁ、ネムちゃんは同じレベル7な上に、無尽蔵とも言える魔力量を持っていますからぁ、結界自体効かない可能性がありますぅ」
「そうなんだ?」
「そうなるともう、私が勝てる見込みはほぼゼロですぅ。と言うより、完全状態のネムちゃんに勝てる人なんて居るんですかねぇ?」
「それほどなんだ? 凄いね」
「ああでもぉ、同じ能力を使えるユウちゃんなら勝てるかもですぅ。もっとも魔力量がもう少しあれば、の話ですけどねぇ」
「ハ、ハハ……魔力量の少なさは僕の最大の弱点だからね……」
「さて、パラスの船はどこかなー?」
あっという間に海岸線に到着したネムが、額に手をかざして沖合の様子を見る。
「居た! よーっし! それじゃあみんな、出ておいでー‼︎」
バンザイするように、両手を振り上げるネム。
リーゼル上陸を目指し進んでいるパラス船団。
「バーダ様! 間もなくリーゼルに到着いたします‼︎」
「戦闘準備は出来ていますか?」
「ハッ‼︎ すでに完了しております‼︎」
「よろしい、では船が到着し次第……ん⁉︎ 何だ?」
「どうかされましたか? バーダ様……」
何かの気配を感じ取り、警戒するバーダ。
程なくして、海中より多数の召喚獣が現れる。
「ヒ、ヒュドラだあああ‼︎」
「海中よりヒュドラが現れましたー‼︎ その数5! い、いや、まだ増えます‼︎」
複数の首を持った巨大な蛇型の魔獣達が、パラスの船に襲いかかる。
「う、撃てー‼︎ 迎撃しろー‼︎」
船の砲撃、あるいは魔法弾で魔獣を攻撃するパラス軍。
砲撃を続ける船の船体に、巨大なタコの足が絡みつき、船を捻り切る。
「ク、クラーケンも現れましたー‼︎」
ヒュドラに続いて、巨大なタコ型の魔獣も現れる。
「撃てー‼︎ 撃ち続けろー‼︎」
必死に反撃を試みるパラス軍だったが、総数約30体の魔獣達に次々に船を沈められていく。
「何故このタイミングでいきなり魔獣が? 魔力を嗅ぎつけられたのですか? いや、それにしては動きの統率が取れています。ならば召喚士が操っている? しかしリーゼルに召喚士が居るなんて情報はありません。ましてこれ程多数の魔獣を召喚して操るとなると、10人や20人では足りない筈……仮にリーゼル侵攻の情報が漏れていたとしても、この短期間に優秀な召喚士を複数人揃えるなど不可能な筈。では、本当に偶然なのですか?」
様々な可能性を考えているバーダにクラーケンが襲いかかる。
「今、考え事をしているんです! 静かにしてください!」
杖タイプの魔装具を振り上げると、周りの海水が魔装具に集まり槍の形を作り出す。
杖を振り下ろすと、その槍がクラーケン目掛けて飛んで行き、その体を刺し貫く。
槍に貫かれたクラーケンの体が消滅して行く。
一連のやり取りを、召喚獣を通して見ていたネム。
「む⁉︎ 手強い奴が居るな〜⁉︎ じゃあとっておきの子を出しちゃうよ〜‼︎」
ネムが人差し指を立てて、下から上へ振り上げる。
「さあ、出ておいで! レヴィたん‼︎」
次々に召喚獣を倒して行くバーダの前に、レヴィたんと呼ばれた召喚獣が姿を現わす。
「リ、リヴァイアサンだああああっ‼︎」
「何と⁉︎ S級の魔獣まで⁉︎ こ、これはちょっとシャレになりませんねー」
ネムとっておきのリヴァイアサンの出現に動揺を隠せないバーダ。
「いっぱい活躍してユーキ姉様に褒めてもらうんだからー! いや、それだけじゃなくて、頭撫でてもらったりギューってしてもらったり、もう色々してもらうんだからー‼︎」
「ハクチュッ‼︎」
ヴェルン兵の傷の治療をしていたユーキのツバが、前に居た兵の顔に飛び散る。
「うわあっ‼︎ ご、ごめんね‼︎」
「ご褒美ですね⁉︎ ありがとうございます! マナ様‼︎」
「ええ⁉︎ い、いやあの……ご褒美って……」
ヴェルン兵の変態発言にユーキがドン引きしていると、向こうからレノが駆け寄って来る。
「マナのご褒美ならどうか俺にもおおお‼︎」
「来んなー! 変態の親玉ー‼︎」
走って来るレノに、カウンターのラリアットを炸裂させるユーキ。
「グハァ‼︎ ご褒美あざーっす‼︎」
「ああっ! しまったあああ‼︎」
つい反射的に手を出してしまい、後悔するユーキだった。
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