第16話 非論理的筋力実行者VS同性嫌悪型計算女

「ああもうっ‼︎ あんたと悪口合戦しに来たんじゃないのよ‼︎ さあ、勝負よ! セラ!」

「ああ〜、やっぱり非論理的筋力実行者ですぅ」

「うるさいわねー! それはもういいのよ!」


 魔装具を構えるパティ。


「あんたのやろうとしてる事は理解したわ……でも、この戦いは本気で行かせてもらうからね」

「ンフフ〜、勿論ですぅ……そうしてもらわないと困りますぅ……でも気を付けないと、私が勝っちゃいますよ?」

「勝てるものなら勝ってみなさいよ……魔装‼︎」

「行きます! 魔装‼︎」


 双方共に魔装する。


「ストレングス‼︎」

「私が力押しタイプが苦手だから、肉体強化魔法ですか? 甘いですね! 魔法で強化した物ならっ!」


 パティの周りの地面に、円を描くように羽を撃ち込むセラ。


「魔法無効化の結界⁉︎ フンッ! 甘いのはどっちよ! アクセル‼︎」


 加速魔法をかけて、素早く結界から脱出するパティ。

 走るのでは無く、微かに浮いて地面を滑るような感じだ。


「ああ〜、逃げちゃダメですぅ!」

「その技は結界から出てしまいさえすれば、効果が無い事は分かってるのよ! ホーミングアローズ‼︎」


 加速した勢いを利用して、アローズを発動させるパティ。


「マジックホール‼︎」


 空中に魔方陣を出してアローズを全て取り込むセラ。


「遅いっ‼︎」


 その時すでに、セラの懐に飛び込んでボディブローの体制に入っているパティ。


(悶絶ボディブロー⁉︎)


 ボゴォ‼︎ 左脇腹にパティの右拳が突き刺さり、吹っ飛ぶセラ。


「うぐぅっ‼︎ リフレクション‼︎」


 飛ばされながら、先程取り込んだアローズをパティ目掛けて撃ち返すセラ。


「くっ!」


 上空へ飛び上がりアローズをかわすが、パティを追尾するアローズ。


「追尾機能も残ってる訳ね……アローズ‼︎」


 再びアローズを発動させて、セラが反射したアローズを相殺するパティ。

 地上近くに降りて来て、宙で静止するパティ。


「あたしのボディブローをくらって、すぐに反撃してくるなんてね!」

「忘れたんですか? 私はレベル7のヒーラーですよ? あれぐらい一瞬で治癒出来ます」

「そうだったわね、さすがよ……ん? 何よ、その顔?」


 何故か不機嫌そうな顔をしているセラ。


「空を飛ぶなんてズルイです! 降りて来て戦ってください‼︎」

「え? あなたも飛べばいいじゃないの⁉︎ そんな大層な翼付けてるんだから!」


「こ、これは私の能力を最大限に発揮する為にこういう形状をしてるだけで、飛行機能は無いんですー‼︎」

「ああ、そうだったの? それは悪かったわね……でもそれならなおの事、この有利な状況を大いに利用させてもらうわ!」


「ブゥー! 非正統的悪辣思考ですー!」

「その言い回しやめなさいっての‼︎」


「油断しましたね?」

「え⁉︎」


 パティの背後からそっと忍び寄った羽が空中で魔方陣を描き、パティの魔装を解除させる。


「しまった⁉︎」


 飛行状態を維持出来ずに地上に落下したパティに駆け寄り、左側頭部に回し蹴りを放つセラ。


「くっ‼︎」


 咄嗟にガードしたパティだったが、それを見たセラが瞬間的に軌道を変えて左脇腹に蹴りを炸裂させる。


「ぐうっ‼︎ このおっ‼︎」


 痛みに顔を歪めながらも、セラの足元を狙い水面蹴りを放つパティだったが、クルッとバク転をしてかわすセラ。


「空中にも結界を張れるとはね……」

「ンフフ〜、反射魔法を使う時に空中に魔方陣を描いてるんだから、気付くべきでしたねー」

「確かにね、いい勉強になったわ……それにしても、強化魔法もかけてない生身の蹴りなのに、とんでもない威力ね」


「私は攻撃魔法が使えませんからね……その分、体術で補ってるんですよ」

「なるほど、でも体術ならあたしだって師匠に仕込まれてるのよ!」


 セラに向かって走って行き、前転からのかかと落としを放つパティ。

 それをサッとかわし、再びパティの脇腹を狙いミドルキックを放つセラ。

 更に体勢を低くして蹴りをかわし、起き上がる勢いを利用してセラの顔面にパンチを撃つパティ。

 身体を回転させてパンチをかわすと同時に、パティの後頭部を狙い水平チョップを放つセラだったが、そのまま前方に回転しつつ回し蹴りを放つパティ。


「ぐっ‼︎」


 パティの蹴りがセラの側頭部を捉える。


「ようやく当てられたか……中々やるわね、セラ!」

「でもいくら当てた所で、ダメージにはなりませんよ⁉︎」


 すぐさま治癒魔法をかけるセラ。


「専門のヒーラーと戦うのは初めてだけど、こんなに厄介だとはね……まあ、そもそもヒーラーは戦わないか?」

「ンフフ〜、どうしますか? 少しぐらいダメージを受けた所で、すぐに回復しますよ? 私の魔力が尽きるまで、消耗戦を仕掛けますか?」


「まさか! これからパラス相手に暴れないといけないのに、あんた1人ごときに時間かけてられないわ!」

「ンフフ〜、挑発のつもりですか? 乗りませんよ!」



「バ〜カ〜、ア〜ホ〜、マ〜ヌ〜ケ〜! お前の母ちゃん三段腹〜‼︎」


「乗らないって言ってるでしょ⁉︎ 子供ですかっ‼︎」


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