第15話 さて、どういう意味でしょう?
リーゼル軍1万に対し、ヴェルン軍1万5千。
そして沖合に控えるパラス軍本隊の兵数は3万。
リーゼルにとって、圧倒的に不利な戦いであった。
そして遂に、リーゼル軍とヴェルン軍の戦いの火蓋が切られる。
「何としても我がリーゼルを! 姫様を守り抜けー‼︎」
「パラスの好きにさせてたまるかー‼︎」
「ウオオオオオ‼︎」
「始まった……ついに始まった……みんな、死なないで……」
リーゼル城に居るユーキが兵達の身を案ずる。
一進一退の攻防が続く中、セラの率いる一団がリーゼル軍の前線を崩しつつあった。
あらゆる攻撃を受け流すセラに怯むリーゼル軍。
「くっ! 我らの攻撃が通用しない⁉︎ さ、さすがはセラ様だ!」
「ならばこそ、ここで止める‼︎」
「ンフフ〜! あなた方に止められますかぁ?」
「ファイアー‼︎」
「ウインドカッター‼︎」
「無駄ですよぉ! リフレクション‼︎」
リーゼル兵が放った魔法攻撃は、セラの反射魔法により全て跳ね返され、魔装具による近接攻撃はマジックイレーズの結界により、魔装を解除されてしまう。
「ダ、ダメだ‼︎ 通じない⁉︎」
「ンフフ〜! では行かせてもらいますねぇ」
「ミーティアストリーム‼︎」
セラがリーゼル軍の前線を突破しようとした時、上空から無数の岩がヴェルン軍目掛けて降ってくる。
「そ、空から岩がー‼︎」
「ぐうっ‼︎」
「ぐわぁ‼︎」
「くっ! マテリアルシールド‼︎」
上空に向けて、巨大な魔力の盾を張るセラ。
「王女様自ら最前線に来るなんて……ユーキに知られたら嫌味言われそうだわ」
「パティちゃん……」
「まさか、あんたと戦う羽目になるなんてね……セラ!」
地上に降り立つパティ。
「何だ貴様は⁉︎ セラ様に仇なすと言うなら、我らが相手になるぞ‼︎」
「へえ、あたしとやろうっての? いいわよ、かかって来なさい!」
「ぐっ……」
ニヤリと笑うパティに怯むヴェルン兵。
「あなた達のかなう相手じゃ無いですぅ、ここは私に任せてあなた達は先に行ってくださいぃ」
「し、しかしセラ様‼︎」
「忘れたんですか? 私達の真の目的を……」
「そ、そうでした……申し訳ありません……では、我々は先に行かせていただきます! ご武運を!」
パティの横を抜けて行くヴェルン兵。
「任せて、か……いくらレベル7とはいえ、ヒーラーが魔道士であるあたしに勝てると思ってるの?」
「戦いには相性という物がありますぅ、まあ私の一番の天敵は力押しで来るロロちゃんですけどねぇ」
「ロロならユーキの護衛に付いてるわ……並の兵士じゃ歯が立たないわよ」
「なるほどぉ……じゃあパティちゃんだけなら何とかなりそうですぅ」
「言ってくれるじゃないの! 何を根拠に言ってるのか知らないけどね」
「忘れたんですかぁ? 私の属性は光! 闇属性のパティちゃんの、一番の天敵ですぅ!」
「え⁉︎ 闇属性……? だ、誰が闇属性よ‼︎ あたしは風属性よ‼︎」
「ええ〜‼︎ そうだったんですかぁ⁉︎ パティちゃんって怒ったら真っ黒いオーラを出すから、てっきり闇属性だと思ってましたぁ‼︎」
「あれはギャグパートの演出よ演出‼︎ 大体あたしが闇魔法使ったとこなんて、見た事無いでしょ?」
「やっぱり強力な魔法だからぁ、奥の手として隠してるんだろうなーって……」
「隠して無いわよ! そもそもあたしは闇魔法は使えないんだから!」
(って言うより、何故か師匠は闇魔法だけは教えてくれなかったし……)
「そうなんですかぁ? パティちゃんは絶対闇属性にジョブチェンジするべきですぅ。風属性って言う割に、滅多に風魔法使わないしぃ」
「そ、それは色々混ぜて使ってるから……ってそんな事はどうでもいいからかかって来なさっ⁉︎」
(ハッ⁉︎ いけないいけない! 相手を怒らせて冷静さを失わせるのは、セラの得意な戦法じゃないの! 落ち着けー! 落ち着けー!)
フゥッと深呼吸するパティ。
「身内に魔族でも居るんですかぁ?」
「うるさいわねーっ‼︎」
その頃リーゼル城には、負傷した兵士が続々と担ぎ込まれていた。
「ぐううっ! 痛え! 痛えよー‼︎」
「すぐに治療するから! もう少し我慢してね!」
「ぐうっ……うう……ふうっ……ああ、痛みが楽になったよ、ありが……ああああっ! ひ、姫様⁉︎」
治癒魔法をかけられた兵士が、自分を治療してくれたのがマナ王女だと分かり驚愕する。
「うん、もう大丈夫! よく我慢したね……偉いぞ! 男の子!」
「そ、そんな! 姫様に治療していただいたなんて、なんと勿体無い‼︎」
城専属の看護長がユーキを見つけて慌てる。
「ひ、姫様⁉︎ な、何をなさってるんですか⁉︎ 兵の治療は私達に任せて、お休みになっていてください‼︎」
「いや、休めって言われても、僕何にもしてないし……戦場にも出ちゃダメって言われてるし……」
「姫様はそんな事しなくても……いえ、マナ様は昔からそういう方でしたね……分かりました! では兵の治療、手伝っていただけますか?」
「うん‼︎ 専門のヒーラーじゃないけど、頑張るよ‼︎」
それを聞いた負傷兵達が、ユーキに治療してもらおうと騒ぎ出す。
「姫様! 俺の怪我も治してください‼︎」
「ぼ、僕もお願いします!」
「私も怪我しました!」
「うん! すぐ行くから待っててねー‼︎」
「ユーキさん、大人気なのです!」
「あんたら! 調子に乗るなー! て言うか、そんなに大声出せる元気があるなら、帰ってくんなー‼︎」
「看護長酷ぇ‼︎」
調子に乗った兵達を怒鳴りつける看護長。
そして、セラと対峙していたパティは。
「このペテン師!」
「同性愛推進委員会ぃ‼︎」
「大飯食らい!」
「非論理的筋力実行者ぁ‼︎」
「計算女!」
「現実逃避二次元愛好者ぁ‼︎」
「あんたの言い回し、独特過ぎるのよ‼︎」
何だか奇妙な悪口合戦に発展していた。
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