第12話 シリアスな空気を打ち砕く一撃を!
ヴェルン城の玉座の間で、国王と睨み合っているセラ。
「セラ……私達に何か言う事は無いのか?」
「私はこの通り元気に生きてますので、ご心配無くぅ! それでは!」
一礼して出て行こうとするセラ。
「待ちなさい‼︎」
「何ですかぁ? 約束通り顔は見せたんだから、文句無いでしょぉ⁉︎」
「リーゼルのマナ王女が見つかったそうだな? ならばもう、お前の目的は達せられたのではないのか?」
一瞬目を開き動きを止めるセラだったが、またすぐに糸目になり。
「勘違いしてもらっては困りますぅ、私の目的はマナちゃんを見つける事では無くてぇ、マナちゃんを守る事ですぅ! なので一生終わる事はありません! では!」
再び行こうとするセラの背後から、国王が意味深な事を言う。
「ならば尚更行かせる訳にはいかん‼︎」
そう言って国王が手で何か合図をすると、城の兵達がセラを取り囲む。
振り返り、キッと国王睨むセラ。
「どういう、事ですか?」
「父上‼︎ どういうおつもりですか‼︎ セラに会いたくて連れ戻すよう仰られたのではないのですか⁉︎」
何も聞かされていないのであろうレノが、只ならぬ雰囲気に国王を問い詰める。
「いつ、とは言えぬが、近い内にパラス軍がリーゼルに攻め込む予定らしい……」
「なっ⁉︎ なんですって……」
「もう既に隣国のシェーレに……いや、元シェーレ国のあった場所に続々と軍を集結させているそうだ……」
「そ、そんな……せっかくマナが帰って来た、めでたい時だというのに……」
目を見開き、更に険しい表情になり国王を問い詰めるセラ。
「それであなたはまた、友好国であるリーゼルを見捨てるおつもりですか⁉︎ かつてシェーレを見捨てたように……」
「うぐっ……」
言葉に詰まる国王を擁護するように、隣に居た王妃が口を挟む。
「セラ! 我が国にもリーゼルへ進軍するよう、パラスから要請が来たのです……でも国王はそれを断固拒否しました。一歩間違えばこの国に矛先が向くかもしれないというのに……」
「つまり、リーゼルに手は出さないし助けもしない、と……そういう事ですか……」
「……それが、我々のせめてもの情けだ!」
「ただ見てるだけなんて、1番卑怯な選択です‼︎ 何故あなたには、友の為に命を張るぐらいの気概が無いのですか‼︎」
「セラ! それは言い過ぎ……」
「私にはこの国の民を守る責任がある‼︎ 他国の為に自国民の命を犠牲にするような選択が出来る訳ないだろう‼︎」
国王の怒号に、辺りが静まり返る。
「はあっ……」
深いため息をつくセラ。
「そもそも負ける事を前提に考えるから、そんな結論しか出ないんですよ……でも私は絶対にマナちゃんを見捨てたりしない‼︎ 必ず守り切って見せます‼︎」
(シェーレの時は私に力が無くて何も出来なかったけど、今はあの時とは違う‼︎)
強い決意を瞳に込めて振り返るセラを、レノが止める。
「待つんだ! セラ!」
「どういうつもりですか? レノ……まさかあなたまでマナちゃんを見捨てるつもりですか?」
「勿論、俺だって今すぐ飛んで行ってマナを助けてやりたい‼︎」
「なら、何故邪魔をするのです⁉︎」
「俺達はこの国の王族なんだ‼︎ 俺達がリーゼルに加勢すれば、ヴェルンがパラスに楯突いた事になる! 一兵士が動くのとは訳が違うんだ‼︎」
「……レノまでそんなくだらない事を言うんですか? レノはマナちゃんの味方だと思ってました……」
「勿論俺はマナの味方だ‼︎ だが立場という物があると言っている‼︎」
「なら私は王族なんて辞めてやります! フレイル家の名だって捨てます! 私はただのマナちゃんの友達のセラとして、マナちゃんを助けに行きます! これで文句は無いでしょ‼︎」
パチーン!
バチーン‼︎
「あ痛あぁぁぁ‼︎」
レノがセラの頬を叩いたが、すぐさまセラがより強いビンタを叩き返す。
「お、俺は頭に血が上ったセラを冷静にさせようと‼︎」
「そんな事は分かってます! でも私は叩かれて喜ぶような性癖は持ち合わせてないんですっ‼︎」
「だ、だからって間髪入れずに返してくるか⁉︎ 普通〜‼︎」
頬を押さえながら立ち上がるレノ。
「ま、まあ叩かれた事は別にいい……いや、むしろ良い‼︎ セラ……お前は計算高くて常に冷静だ……だが昔からマナの事になると、途端に我を忘れて後先考えない行動に出る……2年前、マナが行方不明になった時にすぐ飛び出して行ったようにな……」
「何が、言いたいんですか?」
「建前では国の為だ民の為だと言って大人しくパラスに従っているが、父上も母上も、勿論俺だってパラスのやり方には頭に来てるし、リーゼルを、マナを助けたいと思っている‼︎」
「思ってても行動しなければ何も変わりません‼︎」
「だからだ‼︎ セラ! お前の行動理由は常にマナの為だった……お前が拾って来た小鳥が病気で死んだ時、マナが酷く悲しんでいるのを見てお前は、あらゆる攻撃魔法を使える素質がありながら、あえてヒーラーになる事を決意したな」
「あの時、私が治癒魔法を使えていたなら、マナちゃんを悲しませる事は無かったんです」
「マナが人を傷つけるのは嫌いだと言えば、それなら自分が代わりに戦うと言って格闘技を習い始めたな」
「相手を殺さずに制するには、攻撃魔法よりも体術を使う方が確実だったからです」
「そして2年前、マナが行方不明になったと知った時、お前は何の手掛かりも無いのにすぐ旅に出たな」
「何もしないでただ待ってるなんて、耐えられなかったんです」
「旅に出る前はまだレベル5だったのに、わずか2年の間に最高峰のレベル7まで上り詰めた……」
「マナちゃんと出会った時に、例えマナちゃんがどんな状態だろうと治療する為に、旅を続けながら必死に修行したんです」
「全てマナの為だと言うのなら……マナを守りたいと言うのなら、俺達を利用すればいい! この国を、この国の戦力を利用すればいい! 使えそうな物は全て利用すればいい! そしてマナを、リーゼルを守れる策を……パラスの連中にひと泡吹かせられるような策を……お前が考えて見せろ、セラ‼︎」
黙ってコクリと頷く、国王と王妃。
「っ⁉︎ なるほど……そういう事ですか……でも、随分偉そうな物言いですね? 私より弱いくせに……」
「例え弱くとも……俺はお前の兄だからな!」
「……言うじゃないですか……レノのくせに生意気です!」
「ス◯夫かっ‼︎」
いつもの糸目に戻り、ニヤリと笑うセラ。
「ンフフ〜! いいでしょぉ! そういう事ならばぁ、このセラにお任せあれぇ‼︎」
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