第13話 国王、揃い踏み
セラがヴェルンに帰国してから2日経った日、ヴェルンよりパラスへ使者が送られた。
「国王、ヴェルンよりの使者が参っております……いかがいたしましょうか?」
「何⁉︎ ヴェルンからだと? いいぜ! 通しな!」
「ハッ‼︎」
使者より話を聞くパラス国王。
「へえ、それじゃあお前らヴェルンもリーゼル侵攻作戦に参加するってのか⁉︎」
「ハイ!」
「でもよー、お前らヴェルンはリーゼルと友好関係にあったんじゃ無かったのか? だから心優しい俺様が作戦参加を免除してやったってのによぉ……それをわざわざ自分達から参加したいって言うのは変じゃねえか?」
「確かに疑われても仕方ありません……しかし我が国王も色々悩まれた結果、同じ滅ぼされるのならば、友である自分達の手で、という結論に達したようでございます」
「ふーん、そうかい……」
「国王様! 騙されてはなりません! こやつら、何か企んでいるに違いありません! ハッ! もしやリーゼルと共謀して我らをだまし討ちにするつもりでは⁉︎」
側近が口を挟んでくる。
「うっせー! 黙ってろっ‼︎」
「ハ、ハイ! 申し訳ありません……」
「いいぜ、お前らヴェルンの参加を認めてやる!」
「こ、国王様‼︎」
「ただし‼︎ お前らヴェルンが先陣を切れ! 後ろからノコノコついて来て、土壇場で裏切って挟み撃ちなんかにされたらたまんねえからな‼︎」
「ハイ! 了解しました! その旨を国王に伝えさせていただきます!」
「作戦決行は5日後の夜明けだ‼︎ お前らヴェルンが侵攻を開始した後に、俺達パラス軍が後ろからついて行く、いいな‼︎」
「5日後の夜明けですね? 了解しました! では失礼いたします!」
部屋を出て行く使者。
「奴らを信用してよろしいのですか?」
「確かに胡散臭い所はあるがな……まあいいじゃねえか! ヴェルンの奴らがそのままリーゼルを攻め落とせば良し! もし裏切ってリーゼルに付いたとしても、たかがしれている……そん時は二国まとめてぶっ潰すだけだ‼︎」
「なるほど……それもそうですね」
「それに、いざとなれば俺が出れば済む話だしな」
「そ、それは……どうかご遠慮いただきたい……」
(フフフ……待ってろよ、もうすぐ会いに行くぜ……)
翌日、パラスより戻った使者がヴェルン国王達に報告をする。
「おのれカオスめ‼︎ 我らにリーゼル侵攻の先陣を切れと言うか‼︎」
「まあ、1番確率の高い結果ですぅ、私達に先に行かせればぁ、自軍の兵力を温存できる上に、私達の真意を探る事も出来ますからねぇ」
「決行は5日後……いや、すでに1日経っているから4日後か……」
セラが何やら書状を書いている。
「はい、出来ましたぁ! じゃあこっちをリーゼルに、こっちをトゥマール国王に届けてくださいぃ」
2人の使者に、セラが書き記した書状がそれぞれ渡される。
「ハッ! 了解しました‼︎」
「ここからは時間との勝負ですからぁ、慌てず急いで正確にお願いしますねぇ」
「ヤ◯トかっ‼︎」
リーゼルへはその日の内に、トゥマールには翌日に書状が届けられた。
ヴェルンよりの書状を読むリーゼルのマルス国王。
「何っ⁉︎ 4日後だと⁉︎ そうか……ついに来るのか……分かった! ヴェルン国王に了解したと伝えてくれ!」
「ハッ‼︎ では失礼いたします‼︎」
「マナ達を呼んでくれ!」
「ハイ!」
国王に呼ばれてやってきた、ユーキ、パティ、ネム、ロロの4人が、国王より事情を聞く。
「とうとうパラス軍が攻めて来るのね」
「猫師匠の言った通りになったね」
「パラス……今度は負けない……」
「ネム……」
「どうやら戦いは避けられそうにない! 皆、覚悟を決めてくれ!」
「戦い……か……」
「大丈夫よ、ユーキ‼︎ あなたは必ずあたしが守ってあげるわ‼︎」
「パティ……」
「ネム君! 召喚獣の方はどうなっている?」
「もう随分数は揃った……でもまだまだいける!」
「そうか……とても心強いよ、ありがとう!」
ヴェルンより届けられた書状を見ている、トゥマール国王。
「ほう! ヴェルンにもワシと同じような事を考える者が居るか、面白い……アイバーンよ!」
近くで控えていたアイバーンを呼ぶ国王。
「ハイ! 何でしょうか?」
「この書状には、お前を名指しで指定されてるんじゃが、このセラという者はお前の知り合いか?」
「セラ君⁉︎ あ、ハイ! 確かにセラ君は、先日まで私達と旅をしていました。彼女は信用出来ます!」
「そうか……お前が言うなら間違い無いな……よし、みな準備を急がせよ‼︎」
「ハッ‼︎」
「あっ! ところでアイバーンよ!」
「ハイ! 国王様!」
「その、セラという娘はかわいいのかの?」
「ハイ‼︎ マナ王女に負けず劣らずの美少女でございます‼︎」
「そ、そうか……その娘にも是非一度会ってみたいものだな……」
「ハイ! 今回の件が落ち着けば、必ずや‼︎」
「ムフッ! ムフフフフフ!」
「ムフッ! ムフフフフフ!」
「ハアッ……まったく、このお二人は……」
似た者同士の変態コンビに呆れているメルクであった。
翌日、再びヴェルン国にて。
「リーゼルとトゥマールから了解したとの返答が来た! これで根回しは上手くいったな……ん? どうした? セラ……全て順調に行っているというのに、そんな浮かない顔をして……」
「確かに順調に行ってますぅ、でも一つだけ不確定要素がありますぅ」
「不確定要素? 何だ、それは?」
「グレール王国ですぅ……あの国とは国交が無いから、どう動くか分からないんですぅ……大人しく見ていてくれればいいんですけどぉ……」
「グレールか……俺も会った事は無いが、何でもとても気まぐれな女王が治める国らしいぞ……」
「ノインツって言ったら確かパティちゃんの出身国でしたねぇ……もしかして、王族に知り合いとか居ませんかねぇ?」
グレール王国の城下町にある小屋で、座って目をつぶり、何やら瞑想のような事をしている猫師匠。
「ふ〜ん……あのセラっていう娘、中々面白い事考えるニャ……さて、どうしたものかニャ?」
「陛下ー! 陛下ー! いらっしゃいませんかー! 陛下ー!」
「うるさいニャ! ここに居るニャ!」
「やはりこちらでしたか、陛下」
「ここに来る時は、その呼び方はやめろと言った筈ニャ!」
「ハッ! 失礼いたしました、シャル様!」
「それで、何の様ニャ?」
「いえ、用はございません!」
「な、無いのかニャ⁉︎」
「用はございませんが、シャル様はこの国の女王陛下なのですから、ちゃんと王宮に居てくださらないと困ります!」
「あ、あたしは広い場所は苦手ニャ! 猫は狭い場所が好きニャ!」
「いや猫って……あんた人間でしょうが⁉︎」
「女王に向かってあんたとは何事ニャ〜‼︎」
「ハイハイ! では女王様らしく、ちゃんと玉座に座っていてくださいね〜」
シャルと呼ばれた猫師匠を引きずって行く臣下。
「ああっ! ま、待つニャ! 今からアニメの放送があるニャ! 玉座の間にはテレビが無いから嫌ニャー‼︎」
「ちゃんと録画しといてあげますよ!」
「ライブで見ないとダメニャー‼︎ ネタバレするニャー‼︎」
「何も言いませんって!」
ユーキを巡って、それぞれの国がそれぞれの思惑を胸に動き出す。
ーーリーゼル侵攻開始まで、あと1日ーー
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