第9話 リアルで登場、猫師匠

 故郷であるノインツ大陸の王都、グレールに帰って来たパティ。


「師匠ー‼︎ 師匠ー‼︎ 猫師匠ー‼︎」


 王都の外れにある一軒の小屋で、師匠を探すパティ。


「居ないのかしら? ……この化け猫ー‼︎」

「師匠に向かって化け猫とは何事ニャー‼︎」


 白い髪に猫耳カチューシャを付けた、20代前半ぐらいの女性が現れる。


「何よ! 居るんじゃないの!」

「今放送中のアニメを見てて、手が離せなかったニャ!」

「どうせ録画してるんでしょ⁉︎ 後で見ればいいじゃない!」

「リアルタイムで見ないと、どこでネタバレするか分からないニャ! まだ見てないのに思わぬ所でネタバレした時のあの悔しさったらないニャ‼︎」

「何のこだわりよ」


「ところでパティ! お前は何で帰って来たニャ?」

「ああ、それなんだけど……ユーキがリーゼルの王女様だったのよ!」

「知ってるニャ、だから?」

「だからって……どうするのよ⁉︎」


「お前の使命はユーキを鍛えつつ、ここまで連れて来る事って言ったはずニャ‼︎ それを、ユーキを置き去りにしてノコノコ帰って来るとは、何事ニャ‼︎」


「だ、だってしょうがないじゃない! ユーキは王女様なんだし……まさか師匠、初めから知ってた?」

「当然知ってたニャ! だからパティにユーキを迎えに行かせたニャ!」


「師匠……一体どこまでユーキの事、知ってるの?」

「勿論全部ニャ」

「全部って……も、もしかしてユーキが行方不明になってた2年の間に何があったのかも?」

「知ってるニャ」


「お、お、お……」

「お? オオサンショウウオかニャ?」

「教えてください師匠‼︎」

「今更あたしのスリーサイズを聞いてどうするニャ?」

「そんな物知りたく無いわよっ‼︎ ユーキの事を教えてくださいって言ってるの‼︎」


「ネタバレになる事は、簡単には教えられないニャ」

「何でよ⁉︎ 記憶が無い事でユーキがどれだけ辛い思いしてるか……お・し・え・な・さ・いぃぃぃ‼︎」


 猫師匠の両頬を思いっきり引っ張るパティ。


「痛たたたた‼︎ い、痛いニャ‼︎ 師匠に対して無礼ニャアアア‼︎」

「教えろおおおお‼︎」

「いいいい、ほ、ほっぺが取れるニャア‼︎ わ、分かった! 教える、教えるニャアアア‼︎」


 ようやく解放され、涙目で頬を押さえる猫師匠。


「まったく、何て弟子ニャ……まあ、昔からだけどニャ……」

「さあ、教えて頂戴! ユーキが行方不明の間に、何があったの?」


「まず……ユーキがマナ王女なのは間違いないニャ」

「やっぱりそうなのね」

「そして行方不明になって何故2年もの間、誰にも発見されなかったのか……当たり前ニャ! その間、ユーキはこの魔法世界には居なかったんだからニャ!」


「え⁉︎ この世界に居なかった⁉︎ それってどういう事?」

「再びユーキがこの世界に戻って来た時、ユーキはおっさんの記憶を持っていたニャ! それが答えニャ‼︎」

「じ、じゃあその間ユーキは本当に異世界に行ってたって事? でも、だとしたら、一体誰がユーキの魔力と記憶を封印して異世界に飛ばしたって言うの? ハッ⁉︎ ま、まさか師匠……」


「イヤイヤイヤ‼︎ あたしじゃ無いニャ‼︎ それは全ての猫に誓って言えるニャ‼︎」

「じゃあ誰が何の為に?」


「それは……」

「それは?」

「ユーキを連れて来たら教えるニャ‼︎」

「ぐっ! このおっ‼︎」


「それよりも、こんな事してる場合じゃ無いニャ‼︎ 早く戻ってユーキを助けるニャ‼︎」

「え⁉︎ どういう事よ? ユーキがどうかしたの?」

「パラスの連中が今にもリーゼルに攻め込みそうな気配ニャ‼︎ 早く戻ってユーキの力になってやるニャ‼︎」

「まさかそんな⁉︎ わ、分かったわ! すぐに戻るわ!」


「ああ! ちょっと待つニャ‼︎」

「な、何よ⁉︎」

「今のまま行ってまた暴走でもされたら面倒ニャ……だから封印を一つ解くニャ……」

「封印? ええ⁉︎ 封印って何よ? あ、あたしの? 何よそれ! ユーキじゃあるまいし、何であたしまで封印を⁉︎」

「気が散るニャ‼︎ ちょっと黙るニャ‼︎」

「むぐっ……」


 パティの頭に手をかざし、何やらブツブツ言っている猫師匠。

 パティの足元に魔方陣が現れ、パティが光を放つ。


「よし! これでお前はレベル6になったニャ! これならおそらく、暴走する心配も無いニャ!」

「……昔から普通じゃ無いとは思ってたけど、師匠って一体何者?」

「あたしは全世界の猫を愛する、お茶目な魔道士ニャ!」

「フッ……まあいいわ! ユーキを連れて戻って来たら、締め上げて全部吐かせてやるんだから、覚悟してなさいよね‼︎」


 捨てゼリフを吐きながら飛び立って行くパティ。


「あたし、一応師匠なんだけどニャ……パティは本当にやるから怖いニャ……」

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