第8話 怪獣、介護、解散!
パーティーが行われた翌日、目を覚ましたユーキが広間に行くと、セラ、レノ、バートラーの3人が何か言い争いをしている。
「イヤですぅ‼︎ レノだけ帰ればいいでしょぉ‼︎」
「いい加減にしないか‼︎ 2年も音信不通だったというのに! 父上と母上も心配されているんだぞ‼︎」
「私はちゃんと生きてるって伝えといてくださいぃ!」
「セラ様‼︎ どうか一度お顔を見せてあげてください! そうすればご両親も安心されます!」
「あの〜、お取り込み中だったら出直すけど……」
気まずそうに声をかけるユーキ。
「ああ、これはマナ様! おはようございます! 騒がしくしまして申し訳ありません!」
「ユウちゃん、おはようございますぅ」
「やあ! おはよう、マナ!」
「あ、うん……おはよう……」
昨夜の事もあり、頬を赤くしてレノから顔をそらしながらあいさつするユーキ。
「急な話で済まないんだが、俺とセラは一旦国に帰る事にした」
「え⁉︎ そう、なの?」
「ちょっ‼︎ 私はまだ帰るなんて……」
「セラ様‼︎」
「……ブゥー! ちょっと顔を見せるだけですからねぇ!」
「そういう訳ですのでマナ様! わたくし達は一旦失礼いたします……今すぐ出立すれば、ヘルート大陸行きの船に間に合いますからな」
「あ……もう行っちゃうんだ……」
「ユウちゃん‼︎ 必ずすぐ戻って来ますからねぇ‼︎」
「うん、気を付けて!」
出発するセラ達。
「側に居てくれるって言ったくせに……」
ボソッとレノに文句を言うユーキだったが、何気無く言った自分の言葉に恥ずかしくなる。
(な、何を言ってるんだ僕は⁉︎ 乙女か⁉︎ 乙女なのか⁉︎ ああっ! 乙女なんだったあああ‼︎)
1人悶絶するユーキ。
「朝っぱらから何やってんのよ? ユーキ」
「おはようございます、ユーキさん! 何かの体操ですか?」
「おはよう、ユーキ君!」
「お、おはよう」
広間にやって来たパティ、アイバーン、メルクの3人。
「さっきセラ君達とすれ違ったんだが、国に帰るそうだね⁉︎」
「うん、そうらしいね……」
「実はなんだが……私とメルクも一度王都に戻ろうと思うんだ……」
「え⁉︎ アイ君達まで帰っちゃうの?」
「ユーキ君がこういう事情になってしまったのでね、今後の事について一度国王と相談しようと思うんだ」
「今後って、武闘大会の事?」
「え? あ、ああ! まあそれも含めて色々とね」
「色々?」
「大丈夫だ‼︎ 必ずまた戻って来る‼︎」
「アイバーン様‼︎ あまり軽はずみな約束は……」
「む、むう……」
「それでは、僕達もすぐに出発しますので、これで失礼しますね」
「あ、うん……行ってらっしゃい…」
去って行くアイバーンとメルク。
「アイ君とメル君まで……ハッ⁉︎」
まさかという表情でバッとパティを見るユーキ。
「あ、ああ〜……じ、実は〜……」
気まずそうに話し始めるパティ。
「ゴメンなさい‼︎ ユーキ‼︎」
顔の前で両手を合わせて謝るパティ。
「ま、まさか……」
「じ、実はあたしも一旦故郷に帰るつもり、なの……」
「ガアアアアン‼︎ パ、パティまで……」
「あ、あたしもちょっと師匠に聞きたい事があってね……あ、でも! あたし1人なら飛行魔法でひとっ飛びだから、遅くてもあさってまでには帰って来るわ‼︎」
「ホントに?」
「ホントよホント‼︎ それに、ユーキが王宮に居る今ならあたしも安心して離れられるしね……でも絶対に帰って来るから待ってて‼︎」
「う、うん……待ってる……」
「そ、それじゃあひとっ飛び行って来るわねー‼︎」
「うん、早く帰って来てねー‼︎」
後ろ髪を引かれるのを振り払う様に、あっという間に飛び立って行くパティ。
「帰って来てかー……何言ってんだろ? 僕……みんな自分の国に帰っただけなのに……僕と居る事の方が不自然なのに……」
あっという間にみんなが去って行き、言い知れぬ寂しさに襲われるユーキ。
「ユーキ姉様、おはようございます……」
「おはようなのです!」
背後から声をかけられ、ビクッなるユーキ。
イヤな予感が頭をよぎり、恐る恐る振り返るユーキ。
「や、やあ! おはよう、ネム! ロロ!」
「ん? 姉様、何だか寂しそう……」
「ええ〜⁉︎ そ、そんな事無いよ〜?」
「挙動不審なのです!」
辺りを見回すネム。
「他の姉様達は?」
「あ〜、うん……みんなそれぞれ事情があって、一旦国に帰っちゃった……」
「そう……なんだ……」
「寂しいのです」
まさかと思い、ネムを問いただすユーキ。
「ネ、ネムは何か言う事は無い?」
「言う事? おはよう、は言ったよね?」
「い、いや……無いなら別にいいんだけども……ハ、ハハ……」
「ロロ、何かある?」
「はて? 思い付かないのです⁉︎」
「いや、無いならいいんだよ? 無いなら、うん」
「あっ‼︎」
何かを思い出した様に、声を上げるネム。
「来たかっ⁉︎」
「あの〜、ゴメンなさい姉様……実は……」
「あっ! ち、ちょっと待って‼︎」
ネムの言葉を遮り、2度程深呼吸して覚悟を決めるユーキ。
「よし! さあ来い‼︎」
「実はネム……ユーキ姉様がやってたゲームのセーブデータ、うっかり消しちゃったの……」
「いや、どうでもいいわああ!」
「あいや、どうでもよくないよ! 犯人ネムだったのか⁉︎」
「でも今はいいわあああ‼︎」
久々の三段ツッコミを炸裂させるユーキであった。
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