第6話 例え火の中水樹奈々
「あっ! という訳なんで、失礼しま〜す」
ユーキが恥ずかしそうにペコペコとお辞儀をしながら下がろうとすると、国民達が割れんばかりの歓声を上げる。
「姫様ー‼︎」
「マナ王女最高ー‼︎」
「ギャグは寒かったけどなー‼︎」
「それもマナちゃんらしくていいぞー‼︎」
「今度またウチの店に来てくださいねー‼︎ 新作のスイーツが沢山出来ましたからー‼︎」
「ウチのゲーセンにも来てくださーい‼︎」
「ウチにもー‼︎」
「マナ姉ちゃん、また遊んでねー‼︎」
「姫ー‼︎」
「マナー‼︎」
「マーナ‼︎ マーナ‼︎ マーナ‼︎ マーナ‼︎」
歓声はやがて、大マナコールへと変わって行く。
「え⁉︎ あ……ど、ども……どもです」
手を振りながら下がるユーキ。
「大人気ね⁉︎ ユーキ!」
「昔からマナちゃんは国民に愛されてましたからぁ」
「これで別人だったら殺されそうだけどな」
「まだそんな事いってるぅ、ホント往生際が悪い娘ですねぇ」
「そりゃあ、今はかなりの割合で王女様だったんだろうなーとは思ってるけど、どうしてもおっさんの記憶が邪魔するからなぁ」
「そうだ、マナよ! それなら城下町を見て来たらどうだ? かつてのマナはよく城下町を散歩していたからな……何か思い出すかもしれん」
国王が城下町に行く事を促す。
「うん……そだね……僕も色々見て回りたい」
「護衛代わりに君達にも共に行ってもらいたいのだが、どうだろう?」
パティ達にユーキの護衛を頼む国王。
「あたし達?」
「ゾロゾロと城の兵士を連れて行くよりも、慣れている君達と行く方がマナも気が楽だろうし」
「あたしは勿論いいわよ⁉︎ ユーキの為なら例え火の中、水○奈々! どこにだって付いて行くわ!」
「何故水○奈々が出て来る⁉︎」
「私達も行かせてもらいたい」
「ハイ!」
「私もいきますぅ」
「未来の妻の為ならば、俺も行くぞ!」
「ネムも行きたい……」
「ネムが行くなら当然ロロも行くのです」
「結局いつものメンバーなのですぅ、もっとも1人余計なのが居ますけどねぇ」
「だ、誰が余計だー!」
「あらぁ⁉︎ 誰もレノの事だなんて言ってませんけどぉ? 反応したって事はぁ、自覚あるんですねぇ」
「くっ! そういう所は昔と変わらないな! セラ!」
「お褒めに預かり光栄ですぅ」
「褒めとらんわっ‼︎」
ユーキ達が出掛けてしばらくした後、国王の元に兵士が駆け寄って来て耳打ちをする。
「何っ‼︎ パラス軍が⁉︎ この2年間全く動きが無かったというのに、何故今になって?」
「どうされましたかな⁉︎ 国王!」
居残ったバートラーが国王に尋ねる。
「パラス軍が何やら、活発に軍を動かしているらしいのだ」
「なんと⁉︎ せっかくマナ王女がお戻りになられた、めでたい時だというのに……」
(これは偶然なのか? まさか、マナが戻って来た事と何か関係があるのか?)
街を歩いていると、皆が引っ切り無しにユーキに声をかけて来る。
「あっ‼︎ 姫様だ!‼︎」
「姫様‼︎ お帰りなさい‼︎」
「マナお姉ちゃーん‼︎」
「マナ様ー‼︎ 寄って行ってくださいよー‼︎」
「おおお! こうしてまたマナちゃんを見る事が出来るとは!」
「何と懐かしい……マナはあの頃もよくこうやって街を歩いていたもんじゃ」
ユーキが街の人達と触れ合っていると、前方から怪しい雰囲気の男が現れる。
「ユーキ君! 下がって‼︎」
「え⁉︎ アイ君?」
男から妙な気配を感じたアイバーンとパティがスッとユーキの前に出て警戒する。
「あなたが、マナ王女様……ですね?」
「え⁉︎ う、うん、そうらしいけど……君誰?」
「いくら自国の領土内とはいえ、一国の王女ともあろうお方が何と無防備な」
「ユーキにはあたし達がついてるのよ! これ以上の盾は他に無いわ‼︎」
「ほう……あなた方に守りきれますかな?」
「何っ⁉︎ 試してみるか?」
魔装具に手をかけるアイバーン達。
「おおっとぉ‼︎ 誤解されませんように。別にあなた方とやり合うつもりはありませんよ!」
両の手の平を前に出し、無抵抗のポーズを取る男。
「それでは、失礼いたします」
何もせずにユーキ達の横を通り過ぎて行く男。
「……今は……ね……」
男が離れたのを確認して、ようやく警戒を解くアイバーン達。
「怪しさ爆発ですぅ」
「あいつ、一体何だったの?」
「どこかの国の間者、である可能性は高い……」
「患者? お医者さんを探してるの?」
「ヒーラーさんならここに居るのです」
「間者ってのはスパイの事よ」
「スパイ? 酸っぱい? 梅干し?」
「白飯が欲しくなってきたのです」
「あんた達、ワザとやってるでしょ⁉︎」
「ま、まあいいじゃない! 別に何事も無かったんだしさ!」
「でもどうする? あんな怪しい奴が入り込んでるなら今日は帰る? ユーキにもしもの事があったら……」
「ええーっ‼︎ まだほとんど見てないのにー‼︎」
「だが危険ではないかね?」
「大丈夫だよ‼︎ だってこんな最強のメンツが揃ってるんだ、なんにも不安なんて無いよ‼︎ 守ってくれるんでしょ?」
ユーキの笑顔を見て、フッと笑みを漏らすパティ達。
「ま、まあそれもそうね! あたし達が居る限り、ユーキは必ず守ってみせるわ‼︎」
「それじゃあ行こー‼︎」
街歩きを再開したユーキ達。
「姫様‼︎ ウチのケーキ屋、よく来られてたんですよ! 覚えてませんか⁉︎」
「え⁉︎ そうなの⁉︎ 確かに僕、甘い物好きだからなー、あり得るなー」
「マナちゃーん‼︎ クレーンゲームの景品、みんな新しくなってるよー! 全種類コンプするんだって何度も通ってたよね!」
「そうなんだよ、やり出すとどうしても全種類集めたくなるんだよねー」
「姫ー! 新作ゲーム発売されてますよー!」
「え⁉︎ 何の機種? 3GSとPSAntaなら持ってるんだけど⁉︎」
「PSよんですー!」
「え⁉︎ もしかしてプレイス○ーションフォー⁉︎」
「いやいや、PSよんって言ったらプレイしましょうよんじゃないですかー!」
「だから、ネーミングセンスっ‼︎」
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