第34話 モテモテ街道爆進中! その2

 5日目 ーー パティと映画観賞 ーー



 とあるアニメ映画を見に来ているユーキとパティ。


「しかし、まさかパティがアニメ好きだったとはねー」

「師匠の影響なのよ……子供の頃から、修行の合間を見ては色んなアニメを見せられて来たからね」

「師匠って、この前の猫さん?」

「そうよ」


「子供の頃からって、小さい時からずっと魔法の修行してたの?」

「まあね……あたしは孤児だったのよ。捨てられていたのを師匠に拾われて……『この世界で生き抜く為には、強い魔法使いになりなさい』って言われ、あっ! 『強い魔法使いになるニャ!』って言われて」

「いや、口調を忠実に再現しなくても分かるから」



「そっか……じゃああの人が師匠でもあり、親代わりでもあるって事か……」

「そうね……もっとも、ユーキも分かったと思うけど、あの人は人を小馬鹿にする事に生き甲斐を感じてる人だから、あたしも何度ケンカしたか分からないわ」



「ハハ……ところでさ?」

「何?」

「あの師匠って、猫って言うのが本名なの?」

「え? ああー! 実はあたしもよく分からないのよ」

「ええ?」


「あの人、コロコロ名前変えるから。『ペルシャ』とか『ミケ』とか『シャム』とか……『スコティッシュフォールド』なんてのもあったわ」

「完全に猫の種類だね」


「そうなのよ、だからあたしは総称して猫師匠って呼んでたのよ」

「そっか……でもこれでやっとあの時の謎が解けたよ」

「謎って?」


「前に僕と闘った時に、パティが怒って猫キャラになってたやつ。師匠がああいう口調だから影響されたんだなーって」

「も、もう! 嫌な事思い出させないでよ!」




 6日目 ーー アイバーンと遊園地 ーー



 リッチの経営する遊園地にやって来たユーキとアイバーン。


「凄い……乗り物は向こうの世界と、ほとんど同じなんだ⁉︎ でも意外だったなー、アイ君が遊園地に行きたいなんて」

「ま、まあな……私だってたまには思いっきり遊びたい時もあるのだよ」

「ハハ、分かる! 時々はしゃぎたくなる事ってあるよね」


(フフフ……前回のイベントで、ユーキ君は暗がりが苦手という事が分かったからな……ここのお化け屋敷に入れば、またユーキ君にしがみついてもらえるという寸法だ!)


 下心ありまくりのアイバーンであった。


「あの娘、めちゃくちゃかわいくないか⁉︎」

「うわっ、ホントだ! かわいいー!」

「隣に居るのはやっぱ彼氏かなー? いいなー、羨ましいなー!」

「やっぱあんなかわいい娘だと、あのぐらいのイケメンじゃないと彼氏にはなれないのかなぁ……」


 周りの客達が、ユーキを見て騒ぎ始める。

 当のユーキは乗り物へのワクワク感が強過ぎて、周りの声が耳に入って来ないようだが、アイバーンにはしっかり聞こえていた。


「キャア! あの人、凄いイケメンよ!」

「うわあっ、カッコイイー!」

「私握手して貰おうかなー⁉︎」

「辞めときなよ! 隣に居る娘、彼女じゃない?」

「あの娘かわいい‼︎ 私あの娘の方が好きかも!」


「む……ユーキ君! ジェットコースターに乗らないかね?」

「お⁉︎ いいねー! 乗ろう乗ろう!」


 周りが騒がしくなって来たので、アトラクションに乗る事にしたアイバーン。




「もうっ! だらしないなー⁉︎ アイ君が乗ろうって言ったんだよ?」

「ユーキ君、悪いが復活するまで少し待ってくれないか?」


 絶叫マシンにやられて、完全にダウンしているアイバーン。


「じゃあ僕、何か飲み物買って来るよ! 待っててね!」

「すまない、ユーキ君……」



「アイ君、何がいいかなー? 一応大人だから、コーヒーとかが良いのかな?」


 ユーキがメニューを考えながら店を目指していると、チャラい感じの男共がユーキに声をかけて来る。


「ねえ彼女! 1人?」

「俺達と一緒に遊ばない?」


 だがユーキはそのまま通り過ぎて行く。


「オイオイ! 無視すんなよ‼︎」

「え? 僕に言ってたの⁉︎ ゴメン!」


 自分がナンパされている事に、ようやく気付いたユーキ。


(男にナンパされる経験なんて無かったから気付かなかったよ……)

「なあ、俺達と回ろうぜ⁉︎ いいだろ?」

「いや、ゴメン……連れが居るから」

「連れって男?」

「まあ、一応……」

「いいじゃねえか! 彼女1人を放っておくような男、やめちまえよ!」

「む……アイ君はそんな人じゃ無いから‼︎ てか彼女じゃ無いから‼︎ ……あ!」


 しまったという表情のユーキ。


「何だ! 付き合ってないなら、尚更いいじゃねえか!」

「だから! 彼氏が居ないからって君達と付き合う理由も無い訳で……」

「いいから来いよ‼︎ 絶対退屈はさせねえからよ‼︎」


 1人の男が、強引にユーキの腕を引っ張る。


(このお……楽しい場所だから大人しくしてたのにー!)


 魔装具を具現化させようとユーキがペンダントに手をかけた時、向こうの方からアイバーンが凄まじい勢いで走って来る。


「ユーキ君をおおお! 離せえええ‼︎」


 素手で、瞬く間に男達を叩き伏せるアイバーン。


「ヒイッ! こ、こいつヤベェ‼︎ 逃げろー‼︎」


 恐怖に顔を歪めながら逃げて行く男達。


「ケガは無いかね? ユーキ君……」

「アイ君……ありがとう……何だかこの前から助けられてばかりだね……でも……」



「いちいち脱ぐなあああっ‼︎」


 ユーキのトラースキックが、アイバーンの顔面に炸裂する。


「ぐはああああ‼︎」


 大の字に倒れる、海パン一枚のアイバーン。



「普通に助けてくれたら……ちょっとはカッコイイな、なんて思ったのに……バカ……」


 頬を赤らめるユーキ。





 出発前日、道中必要な物資とセラの暴走対策に大量の食料を買い込んだユーキ達。

 勿論費用は全てリッチ持ちで。



 そして出発の日。



「ユーキさん、道中お気をつけて」

「うん、ありがと! ゴメンね⁉︎ 一杯お金使わせちゃって」

「いえいえ、これぐらい全然大丈夫ですよ! 何しろ皆さんは僕の命の恩人ですからね……必要な物があれば、もっと言ってくださっていいんですよ?」


「いや、もう充分だよ! ありがと、ねっ‼︎」

「ギクッ!」


 再びユーキの口を塞ごうと、背後に迫って来ていたセラとパティを睨んで牽制するユーキ。



「もし働き口に困ったなら、王都に来るといい……おまえ達程の実力者なら、充分王国騎士団の即戦力になる」


 ザウス達四天王を騎士団に勧誘しているアイバーン。


「俺達が王国騎士団……だけど俺達はユーキちゃんをさらって、あんた達を殺そうとまでしたんだぞ?」

「過去の事など関係無い! 騎士団は実力主義だからな。それに入団させるかどうかの判断は、全て私に一任されている……おまえ達は文句なく合格だ!」


「そうか……そう言ってもらえると嬉しいよ。まだ色々後片付けもあるし、みんなとも相談しないといけないから、話がまとまったら行かせてもらうよ」

「そうか……うむ、待っているぞ!」





 そして馬車は動き出す。



「ところでユーキさん、出発前に凄く大きな荷物が積み込まれてましたけど、あれは何なんですか?」

「ああ、あれ? あれは服だよ! この前メル君と行った店の」

「ああ、あの店の! 随分多いですね?」

「うん、だってこのパーティー女子率が高いから……6人分だもん!」


「あらユーキ⁉︎ 6人分って事は、とうとう自分が女の子だって自覚したのね」

「いや、そうじゃ無いけど! 見た目はこんなだから、やっぱり女物じゃないと変じゃないか!」


「あれ? 6人? 1人多くないですか?」

「いいえぇ、6人で合ってますよぉ」

「え? だってユーキさん、パティさん、セラさん、ネムさん、ロロさん……5人ですよ? あと1人は? ……ま、まさか……」


「メルちゃんの分ですぅ」

「いや、着ないって言ってるでしょー‼︎」

「無駄よメル君! この面子を前に、逃げられないわ‼︎」

「小さい子も増えたんですから、そういう危ない遊びはやめましょうよー‼︎」


「メル姉様、かわいいと思う……」

「お似合いなのです!」

「お二人まで⁉︎」



(許せメルク……ウチの女子達には、恐ろしくて逆らえないのだ)


「このパーティーの女子! タチ悪過ぎますー‼︎」




 ユーキ達を乗せた馬車は、次の街フルトを目指す。


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